第307話 連合軍の情報2
忠弥が何か計画しているのは確実だった。
しかし、ベルケの手元の情報だけでは少なすぎる。
「他に何か動きはあるか?」
何とか忠弥が考えている作戦を探り出そうと、ベルケは他の情報はないか尋ねた。
パズルで周囲のピースを埋めていくように、周辺情報から忠弥の作戦を探ろうとしていた。
「飛行艇部隊が王国本土の大陸側沿岸に移動しています。大洋へ哨戒に出す飛行船部隊の代わりに封鎖線の監視に使うということですが」
「おかしくはないが」
大型飛行艇の開発は航空都市時代、忠弥が進めていたのを知っている。
現用航空機の低性能、特に故障率と海上への不時着を考え、万が一の時着水できるよう大型飛行艇を使い、大洋横断定期飛行を実現しようと考えていた。
試作機は出来ており、試してみたが、波の荒い大洋では着水が難しく、多少不時着がマシになる程度で実用的ではない。
せいぜい、滑走路が整備されていない沿岸部や島々へ静水面――波が穏やかな水面を確保して定期便を飛行させる程度しか運用できない、と聞いていた。
「ですが配備された場所の殆どが大陸側、しかも例のブンカーの近くです」
「怪しいな。他にも何か動きは? 飛行船は?」
「多くは大洋の戦いに投入しています。船団を守る為に潜水艦狩りと支援の飛行船狩りに投入しています。ただ」
「何だ?」
「新しく、飛行船を作り上げたようです。龍飛と名付けられており雄飛型クラスと思われますが」
皇国空軍の命名規則では雄飛型は、最後に「飛」が付く名前を、飛天型は「天」が付く名前を付けることにしている。
大鳳型の二番艦が祥鳳と名付けられたのも、その規則に則った物だ。
「雄飛型なら問題ないだろう」
雄飛型は哨戒用の飛行船で索敵用に五機前後の艦載機を搭載しているだけだ。
それでも十分に恐ろしいが二〇機以上搭載可能な飛天型や四〇機も搭載できる化け物のような大鳳型空中空母に比べればマシな相手だ。
「ですが、行動がおかしいです」
「どうしてだ?」
「ずっと海の上を飛んでいます。陸上を通っていません。しかも空軍所属ではなく海軍、それも艦隊に配備されているようです」
「新しいタイプの飛行船、空中空母か」
更に大型の空中空母を作ったのか?
あまりに大きすぎて陸地を飛べないため低い高度で運用せざるを得ないのか。
ベルケは判断しようとしたが、情報があまりにも少なすぎて判断できない。
「この龍飛の情報を集めてくれ」
「はい、できる限り集めます」
「それで、このブルッヘ周辺に集まった我が方の機体はどれくらいだ? 今何機いる?」
敵の航空攻撃に対抗するためには保有している機体を把握する必要があった。
「機種転換と再編成中の部隊が殆どですので、前線へ戻る部隊もありますから、機数は毎日に変わります。ですが専属の防空戦闘機隊を含めて一〇〇機以上が待機するように調整しています。内、七割が出撃可能です。大洋から戻ってきたカルタゴニア級も三隻ほどおり、彼らも最低一隻は上空で待機しています。空中迎撃隊は別にいます。即時出撃できるのは三割程度ですが、残り四割も二時間以内に空に上げられます」
「よろしい」
大鳳の能力はおよそ四〇機、二隻現れたとしても八〇機。
飛天型の支援もあるだろうが皇国空軍の攻撃は一〇〇機前後でやってくるはず。
だが、此方は陸上機。
飛行船に乗せるために重量制限のある艦載機ではなく、性能第一に作られている。しかも大半は新型戦闘機プラッツⅣが大多数を占める。
疾鷹を上回る性能を持ち、空戦では決して負ける事はない。
駐留部隊の多くはこのプラッツⅣへの機種転換の為にやってきているため、機体は十分にある。
皇国空軍の飛行船部隊が来ても返り討ちにする自信があった。
「忠弥さん、決して好きなようにはさせませんよ」
ベルケは自信を持って呟いた。
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