第166話
「はー、ほんと、まやちゃん勘弁して……」
首を振ってやれやれ……とでも言うようにため息をつく。
「は?」
やれやれはこっちだっつうの!!
「髪の毛、濡れてるのも可愛すぎだし……Tシャツも予想外の破壊力だし……。……もー、反則」
優しい顔で見つめられたら何も言えず、固まってしまう。
それをいいことに、まだ乾いていない私の髪を指で梳いて一房手に取ると、そっと唇を落とした。
その行動に今度は私が顔を真っ赤にする。
──キザすぎるわ!!
「……どんだけ、好きにさせたら気が済むの……」
凛の腕が首に回って抱き寄せられた。
トントン、と背中を一定のリズムで優しく叩かれてなんだか安心する。
しばらくはされるがままになっていたけど、はっと我に返って凛の胸を押し返した。
「は、はやく寝なよ、病人なんだから」
恥ずかしくてこんなキザ男の顔なんて見れずに俯いて言う。
すると凛はふっと笑って
「──ん、おいで」
私の手を引いて彼の部屋へ入った。
さっき来た時とは比べ物にならないくらいの緊張感。
真っ暗な部屋の中、ベッドの上に座った凛に手招きされてそばへ行くけど、同じように上がる勇気なんてない。
そんな私を見てまた微笑んだかと思ったら
「まやちゃん、……来て」
ぐっと腕を引かれて身体が前のめりになる。
──その瞬間もう片方の腕が背中に回って引き寄せられた。
「う、わ……」
どさっという音とともにふんわりとした布団の感触と、凛の温もり。
気がつくと凛に抱きしめられたままベッドに横になっていた。
掛け布団も被せられて寝る準備は万端。
……もう、逃げられない。
目の前には凛の整った顔。ドキドキして、心臓の音が凛に聞こえていないかが心配だ。
「あー、やばい。心臓うるさい」
まるで私の心の声が聞こえていたかのようなタイミングでそう言われて、さらにドキッとする。
……え、やっぱ音聞こえてるの!?
「俺の心臓、ドキドキうるさい……。速く動きすぎてこのまま止まっちゃいそう……」
……ああ、そっちね。
「でも……まやちゃんを抱きしめたまま死ねるんなら、俺幸せかも……」
また大げさなことを言うもんだから笑ってしまった。
凛は不思議そうに私を見た後、微笑み返してくれる。
そしてちゅっちゅっ、と何度も啄ばむように私のおでこにキスをすると、瞼、鼻、耳、頬……と順番に口付けていく。
「……まやちゃん、すきだよ」
最後は、両頬を手のひらで包まれて唇に口付けた。
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