第159話


「私、神永先輩が好きです。神永先輩と近づきたくてこのバイトを選びました。入学した時から好きで、大好きで。……だけど神永先輩はいつも麻井先輩を追いかけてて。ときどき辛そうな顔もして。麻井先輩は、ほんとうに神永先輩のこと好きなんですか?」


「先輩の行動から神永先輩への愛なんて少しも感じられないです。私……神永先輩を振り回す、麻井先輩のことが嫌いです」


 ……おいおい。女って怖いな(二回目)


 凛がいないだけでこんなにも態度が豹変するのか。


「私は、麻井先輩が神永先輩と付き合うこと、認めませんから」


 ものすんごい腹立ってきたけど年上だし、ここでキレたら大人げない。


 なるべく穏便にすまそうとする。


「はは……。まあ、そう見えても、仕方ないのかもね……」


 なんて言って口角を上げてみるけど、頬が引きつるのが自分でもわかった。



「……そうやって、余裕ぶるのやめてもらえませんか。どうせ、神永先輩に愛されてるからって優越感たっぷりなんでしょうけど」



 ──何この子。


 凛と付き合うのにあんたの許可がいるわけ!!?


 あんたが認めなくても、凛が私でいいって言うからそれでいいんだよ!!


 ──ていうかまず、凛がいないこの状況で私に文句言うって陰険だな!!!!

 性格悪いぞ!!!!


 いい子とか思った私、考え直しなさい。見る目ないから!!




「私……、麻井先輩になんて負けません。絶対、神永先輩を奪ってみせます」


 ……どんだけ自信に満ちてんの。


 だけど、彼女のこの自信満々な表情が、「絶対」っていう言葉が──すごく脅威に感じた。




 ……大丈夫、だよね?凛。


 なんだか、無性に凛に会いたくなった。

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