第158話


「──麻井先輩。ひとつ、聞いてもいいですか?」


 珍しく、凛がいないバイト。


 理由は、風邪をひいたから。

 学校も休んでいて、一日がすごく静かだった。



 私が出勤してきて先に来ていた美琴ちゃんが「神永先輩は?」と尋ねてきたからその理由を答えると、みるみるうちに沈んでいく表情。


 ……もうそろそろ気付くって。私そんな馬鹿じゃないし。



 そんな美琴ちゃんから冒頭の呼びかけ。


「どうしたの?」

 なんだか凛がいないだけで表情ばかりでなく、彼女の声色まで変わっているようで女って怖いな……なんて思った。


「……神永先輩の、どこが好きなんですか??」

「……え」


 ……出た、答えづらいやつ。


 困っている私なんてお構いなしにさらに問い詰める。


「どこを好きになったんですか?」


 真剣な彼女の問いかけに必死で答えを探すけど、美琴ちゃんが望むものがなんなのかわからなくて結局いつものように答えてしまう。


「えーと……いつも一生懸命で、私を守ってくれるところ……?」


 ありきたりな答えに、美琴ちゃんの顔には「不満です」って書いてある。


「……そうですか」

 でもそれを言葉には出さずただ私を睨む。


 そして恐れていた言葉が。

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