第147話
「まやちゃん……やだやだやだやだやだ!!──ダメ!!」
首を横に思いっきり振って叫んだかと思えば、私の腕を掴み近くのトイレへと連れて行かれる。
──いや、ここ男子トイレ!!!!
人気のない放課後だとしても男子トイレには変わりないからね!!!!?
こんなところを誰かに見られたら、と慌てる私。
そんなことはお構いなしに手洗い場までくると、蛇口をひねって水を勢いよく出す神永君。
その水を自分の手ですくい私の口を洗い始めた。
「ん~~~~っ」
何度もゴシゴシと擦るもんだから口がヒリヒリする。
苦しくなって神永君の腕を叩くとやっと解放してくれた。
「なんなの、アイツ……。ほんっと、むかつく……」
唇を血が滲みそうなくらい噛みしめる彼。
「俺だって、まだ口になんてしたことないのに……」
口を尖らせて文句を言いながら制服の袖で濡れた私の口元を拭いてくれる。
そして思いついたように言った。
「あ、俺のファーストキスはまやちゃんにあげるからね!!」
……気持ちだけもらっておこう。
「──ていうか、神永君ってファーストキスまだなの!?」
それ、ここ最近で一番の驚きだわ。
「そーだけど……」
口を尖らせて不満そうに言い訳を始める。
「だって、俺中学までいじめられっ子だったし。高校入ってモテ始めたけど、俺の初恋はまやちゃんだし。まやちゃん以外とちゅーする気ないもん!!今までもこれからも」
あー、はいはい。
──ってことは今まで彼女とかもいなかったんだ。こんなイケメンなのに……??
……そう言えば、初めて会ったとき
「──たしかに俺はモテる。それは否定しない。でもね……俺は誰とも付き合ったことないし女の子と話すこともめったにない」
とかなんとか言ってた気がする……。
どこかホッとしてる私がいて、頭を抱えた。
……どーしよ、私。本格的にやばい。
「……まやちゃんって、今まで何人と付き合ったの……?」
違うことで頭がいっぱいだった私だけど、神永君の爆弾発言で一気に意識が彼へと向いた。
「え」
……言う必要性が見出せない。
だけど、うるうるとした瞳で見つめられたら……やっぱり彼には負ける。
「えーと……さ、3人、かな……」
素直に答えるけどものすごい恥ずかしい。
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