第143話
彼は構わず続ける。
「ラインもわかって喜んだし、遠くから見てるだけでも良かった。……だけどさ、バイト先でも帰り道でも休み時間にも……最近神永がべったり。本当に嫉妬するよ。しかも、新しく西川とかいう奴も出てきたし……まじでムカつくんだよ!!」
──どうして。
「バイト先」?「帰り道」?
なんで、神永君といつも一緒にいることを知ってるの……?
そのいかにも「見ていた」ような話しぶり。
「もしかして、最近あとをつけてたのって──」
「気がつかなかった??こんなに見つめてたのに」
──全身に、鳥肌が立った。
神永君のファンじゃなかったんだ……。
私を悩ませていた犯人が目の前にいる人だということが分かり、一刻も早くこの部屋から出ようとする。
だけどドアは彼の背後。ここは三階だから窓からは無理だ。
どうしようかと頭をフル回転させる。
──だけど彼は、そんな私が気に入らなかったみたいだった。
「──何考えてるわけ」
「ちょ……っ!!やめっ」
勢い良く近づいてきたかと思ったら腕を掴まれて、身体を壁に押し付けられる。
「俺は、本気であんたが好きなんだよ……!!」
怖い。怖くてたまらない。
足の力が抜け、ずるずると座り込んでしまう。
それに伴ってこの男もしゃがみこみ、私の耳もとに口を寄せる。
「……俺のことしか考えられなくしてあげる」
「きゃっ」
掴まれていた腕に力が入ったかと思えば、床に押し倒された。
「やめて……!!」
何度も腕を振り払おうともがくけど、その度に力が加わってどんどん抜け出せなくなる。
「心が手に入らないなら身体だけでもいっか……」
そう怪しく笑う彼に震えが止まらない。
やだよ……助けて──
「神永君……!」
――そんな時
「あの、止めた方が身のためだと思いますけど?」
……救世主の声が、した。
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