第101話


「なんか最近、このパターン多いんだよね。まやちゃんの可愛さをみんなに力説してたら告白も減ってきたし。やっぱり自分の気持ち隠さずに言ったほうが面倒臭くなくていいね」


 「ねっ!」ってにこやかに同意を求めてくるけど、本当にいらっとした。


 ……役に立って何よりですよ……。


「今まではただ謝ってただけで理由なんて言わなかったからさあ……。しつこい子とかもいて困っちゃうよね~!」


 ……いやいやいやいやいやいやいや。

 「しつこい子」だと!!?


 神永君が言うしつこい子って、どんだけなの?



 ──「困っちゃう」って!!!?


 こちとら、お前のせいで四六時中困っちゃってるわ!!!!



 大きくため息をついて彼の寝転ぶベッドに腰掛ける。


 ……彼にはなにを言っても無駄だから、何も言わないよ。体力の無駄遣いはよくない。




「──で、まやちゃん」


 ちらっと彼を見ると、横になりながら頬杖をついて私を見る神永君。


「最近、呼び出しが多いみたいけど何なの!?」


 ……おい、目、血走ってるぞ。


 彼を見下ろすと、怒った表情をしているのが分かる。

 だけど、上目遣いだからその表情も可愛いものでしかない。


「んー、なんかお友だちになりましょうって」


 やましいことがあるわけじゃないから簡潔に伝える。

 別に、面と向かって告白されたことはないもん。


「男?女!?それとも男!?」


 がばっと起きあがる神永君。

 ……なぜ男を強調した?


「……両方」

 彼は、私と目線を同じにして近づいてきた。


「どっちが多い!!?」

 ぐっと顔を近づける神永君に身体が固まる。

 嘘ついてもしょうがないし……。


「8割、男子」

「マジで!!!!???」


 ──ち、近い近い!!!


 どんどん身を乗り出してくるから、私たちの顔の距離もその分縮まってくる。私も後ろにのけ反っているけど──それも限界。


「……俺の、まやちゃんなのに……」


 目を伏せて呟く彼の息がかかってしまいそうで、いつも上手くかわす言葉にも……緊張してなにも言い返せない。


「否定、してよ……」

 瞳を潤ませながら私を見つめる神永君。


 ……余計に、何も言えなくなる。


「俺、馬鹿だから……期待、しちゃうじゃん……」


 そう言われても、彼から目を離せない。

 

 もう、神永君の顔が視界いっぱいに映って、いよいよ本当に鼻と鼻がくっつきそうになるからぎゅっと目を瞑った。




「──かわい……」


 その彼の言葉とともに頬にやわらかな感触。


 ちゅ、という効果音。



 全身が熱くなって思わず──





 ──彼に頭突きしていた。


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