第96話
「今度、映画でも行きませんか??」
にこやかに誘ってもらってるところ悪いんだけど。
──ごめん、面倒。
……でもそんなこと言えるはずもなくて。
「はは……。よ、予定が合えば……」
こんなときあいつになら、気なんか遣わずに「無理」って言えるのになあ……と思う。
なんだかんだ、素で話せるってことは一緒にいて楽ってことなんだろう。
……調子に乗るから、本人には絶対言わないけど。
「じゃあ、連絡先教えてよ!」
ああ……こいつはなかなか諦めの悪い奴だな。
「あー、ラインでいいなら」
未読スルーするかもしれないけど。
連絡先を交換し終わって思い出すのは、あいつのにやけ顔。
そういえば、連絡先交換した時本当に嬉しそうな顔してたっけ。
「今日は学校終わり、暇??」
ちょっとホントしつこいな……。
これは優しくしたらつけ上がるパターンだな。
このモテ期に身に付けた、男の見分け方。
「……バイトなんで」
こういうのは、頑なに断らないと後々面倒だ。
「え、どこでバイトしてんの??見に行きたい~!」
──なにゆえ。
そろそろ本当にいらつき始めた。
こっちは神永君だけで手いっぱいなの!!
……もし来ても相手はできないと思うよ。
今日もきっと、あいつは来るだろうから。
いつの間にか店長と仲良くなっていて、私のシフトを知り尽くしている彼。
……超怖いよね。
そしてびっくりするくらい暇人だよね。
「まやちゃんがだいすきだからね!!」って一言であれだけ引っ張りだこの部活の助っ人にも行かないんだもん。
何度か文句を言われたことがある。
「麻井さんのせいで最近、神永が助っ人に来るの渋るんだけど」って。
その度に思うよ。
──私のせいじゃねえ!!!
「……麻井さん?」
目の前の男の声ではっと我に帰る。
「……用事が済んだなら、帰ります」
そう言って屋上を出た。
──自分の脳内を占める「彼」の存在にため息が出る。
ああ……私。
さっきから神永君のことしか考えてない。
どうしよ。
──重症かも、しれない。
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