第90話
「──いーから!!行くのーっ!」
そう言って私の腕をぐいぐい引っ張る神永君。駄々っ子みたいに唇を突き出している。
「……じゃあジュース奢りね」
なんだか断っても無駄そうだから、仕方なく彼についていくことに。
すると陸はまた不機嫌そうな顔に戻ってしまう。そんな彼を見て「陸ちゃんどんまい」と愛子が肩を叩いた。
「ジュース一本でまやちゃんとデートできるなら毎日買うよ!」
キラキラと輝く笑顔で言われても、周りで聞き耳を立てている女子が喜ぶだけだよ。
「やっぱり行かない」
なんだかイラッとして可愛げのないことを言うと
「ごめんなさい黙ります」
腰を直角に曲げて頭を下げる神永君。ガッと音がして机の角に頭をぶつけたのを見たらまた笑えた。
「まやちゃん飴あげるーっ!!」
「いや完全にその食べかけだろ。いらない」
打ったおでこを摩りながらニコニコで私に差し出すけどそんなもの食べられるわけない。
……ほら、あんたの後ろでこっちを物欲しそうに見てる女子にでもあげたら?
「俺の舐めかけの飴をまやちゃんが食べるのと、まやちゃんが舐めた飴を俺が食べ切るのとどっちがいい?」
真剣に聞いてくる彼はポケットから新しい棒付きキャンディーを出す。
……それをくれたらいい話だよね!?
「──要らん質問だな!!」
ギャーギャーと騒ぐ私と神永君(主に神永君)を見て、
「……マヤを慰めるのは俺の役目だと思ってたのにな」
陸がそう呟いたのも
「……陸ちゃん、あんたヤバいと思うよ。ちゃんと行動しないと、あの子──神永凛にあんたの居場所掻っ攫っていかれちゃうよ」
愛子が警告していたのも私は知る由もない。
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