海へ行こう

第88話


 ──昨日、先生への想いにも完璧に諦めのついた私。


 自分でも思ったより平気だったみたいで、いつもの二人とお弁当を食べている時に何気なく昨日の出来事を話していた。神永君のところは省いたけど。


 今までの経緯を全て知っている陸と愛子はぽかんとしていた。


「それで──。マヤは大丈夫……みたいだけど」

 愛子は少し不安そうに私を見る。多分心配してくれてるんだろう。


 いつもは私の扱いなんて酷いものなのに「先生」に関連することになると、人一倍私を気遣ってくれる親友。


「……意外だな。もっと落ち込んでると思った」

 陸も箸を止めて不思議そうに私の顔を覗きこんだ。


「そう?そう見えるなら──神永君に感謝だよ」


 ポロっと二人が嫌いな彼の名前を出してしまって、後悔したけど後の祭り。


「神永……?」

「マヤ……あんた……」


 二人とも予想通り怪訝そうな顔。愛子はちらっと陸を見てため息をついていた。


「え?なに」

 陸は陸で泣きそうな表情になっているからビビる。


 ……捨てられた子犬みたいな顔、ヤメなさい。


「……いや、随分仲良くなったんだなと思って」


 その子犬は私から目を逸らしてそう呟き、お弁当を食べるのを再開させた。


「んー、訳わかんないくらいアホだけど──いい子だよ、彼」


 どうして二人がそんなに彼を嫌うのかは分からないけど、ちょっとくらいフォローしてあげてもいいかなと思う。


「……そっか」


 だけど陸は私の言葉にあんまり共感してくれそうにないし愛子は興味なさそうで……。



 何だか気まずい雰囲気が流れた時──。

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