第46話


 四つ葉のクローバーに願いを込めるような純粋な少女じゃないし、これを持っているから幸せになれるなんて言い伝えを信じるほど幼くもない。


「よ、四つ葉のクローバーって見つけたら幸せになるんだよね!?っていうかこれをまやちゃんから貰った時点で俺、幸せになっちゃってる!!四つ葉ってすごい!!」


 ……うん、こいつはものすごい純粋だし幼いわけね。


「し、幸せだあああ」


 私のあげた四つ葉を大事そうにそっと触れる神永君。こいつの幸せの定義ってなんだ?


「大げさだね」

「だって俺がまやちゃんに喜んでもらいたくて花冠作ったのに……なんか俺のほうが嬉しいもの貰っちゃって……」


 ……彼の目が潤んできたのは気のせいか?


「……なんでよ、私もじゅーぶん、嬉しいけど?」


 彼と同じようにそっと花冠に触れる。


 派手な花束よりも高級なプレゼントよりも、取ってつけたような甘いセリフよりも。神永君の大きな手で一生懸命作ってくれた、すこし歪なシロツメクサの花冠のほうが何倍も嬉しかった。


「──ありがとう」


 珍しく素直に言うと


「へへっ……俺も、ありがとう!」


 夕日を背に二人で笑いあった。

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