第23話


「──まやちゃん!!見つけた!!」

 満面の笑みで私の前に立ちはだかる神永君。周りの視線が痛いんだけど。

 ……特に女子。


 やっぱりこの顔だとモテるんだな、と確信した。


「いや……勝手に見つけないでくれる?」

 ていうか同じ学校だったの。そういえば、金曜日に会ったとき神永君……制服だった気がする……。


 ──気づけよ私!!!気付いてればなにか対策できたのに!!



「まやちゃんが同じ学校って知ってたから!!絶対会いに行こうって決めてたんだ!!会いたかったよ!!」


 ……私は会いたくなかったよ。


 しかも同じ学校って知ってたの!?

 ストーカー説がだんだん濃厚になってきた。



 彼の大きな声のせいで周りには軽く人だかりみたいなのが出来た。彼のテンションも四日目となると、もう慣れたもの。

 でも周りの人たちは何故か騒然としている。マジで勘弁なんだけど……。


 私は三年間、目立たない学生生活を送るんだと信じて疑わなかったのに……。


 一年の冬。それは叶わぬ願いとなった。



「これからはずっと一緒にいられるね!!」

 ……やばい、今本気でぞっとした。


 近くで聞いていた女子たちは顔を赤らめて羨ましそうに見てくるけど、この台詞は両想いのカップルが言うから胸キュンするのであって今私の置かれた状況で言われてもただの変質者だから!!


 そして何度も言うようだけど、神永君がイケメンだから許されてるんだからね!!?


 そこの野次馬の中の男子たち!!君たちが言おうもんなら、通報されるからね!?(失礼)



「──あの、神永君と麻井さんって……どういう関係なの?」


 突然、ずいっと人ごみの中から出てきた美人さん。確か、うちの学年で五本の指に入る美人って噂の子だったかな……?


 いつの間にやら野次馬も静かに成り行きを見守っている。

 ……なんで修羅場の真っただ中みたいな状況に巻き込まれてるの、私。


 彼女は私をキッと一睨みして神永君に向き合うとコロッと表情を変え、上目遣いで見つめる。その瞳はウルウルしていて女の私から見ても可愛い。


 ……どんな切り替えの速さだよ。怖いわ。


 ──この子、きっと神永君が好きなんだ。よく鈍感だと言われる私でさえもわかる。


 当の本人はこんな美人さんに見つめられてデレデレしてるんだろうな……なんて思って背の高い神永君の顔を見上げると。

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