彼女がくれるなら何でも受け入れちゃいます
「あーん」
彼女である芽衣が差し出すおはしには、海老の天ぷらが挟まっていた。僕はありのままに口で受け入れる。
「とってもおいしい」
「すごいでしょ、私の手作りなのよ」
芽衣は屈託のない笑みを浮かべていた。
「芽衣ちゃん、いつも料理作ってくれてありがとう」
「だって私は両親が離婚して、一緒に暮らしていた母も単身赴任中。そして達也も両親が揃ってマレーシアに単身赴任中でしょ。私たち恋人同士だから、お互い助け合うのは合理的なわけよ」
「それにしても芽衣ちゃんの料理って本当においしいね。スパゲッティにカレーうどん、カツ丼、ハンバーグ、卵焼き、カレーライス、そしてある日はデザートのミルフィーユとか」
「ありがとう。これからもこの調子で、達也くんには何でもあげちゃうわ」
感謝を述べる芽衣の瞳は、どこかの恒星のようにきらめいていた。
「芽衣ちゃんがプレゼントするものなら、何でもいただくよ」
僕はそう誓った。
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「これ見て、フィットネスボール。毎日使ってみたら、体が元気になるよ」
彼女がある日差し出したのは、ひとつの箱だった。
「膨らませて使ってみて」
「わかった。これって楽しそうだね」
芽衣ちゃんが差し出すものは何でも受け入れてしまう僕は、その日からことあるごとにフィットネスボールに乗り続けた。宿題をするときも、テレビを見ているときも、ごはんを食べているときもだ。
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「ねえねえ、これ面白くない?」
ある日彼女がプレゼントしてくれたのは、トレーニングチューブである。箱から商品を取り出すと、早速先を輪っかにし、そこを踏んで引っ張ってみる。凄まじい引力を感じた。
「うわあ、何かいい運動になるね」
「いいでしょ」
芽衣は相変わらずの屈託のない笑みだ。
「うれしいな。フィットネスボールから始まって、ランニング用のスニーカー、エクササイズ棒、水を入れるダンベルなどがあって、最後はこのトレーニングチューブだろ」
「達也くんが運動好きになったら、将来ずっと元気でいられると思って」
「ありがとう。いくつになっても、芽衣ちゃんからもらうものはありがたくいただくよ」
僕は芽衣ちゃんに永久的な忠誠を誓うように語った。すると芽衣ちゃんは自分が何か功績を上げたかのように、誇らしい笑みを浮かべる。
「私が作った料理で95kgまで増えたのが、今では25kg減ったもんね」
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