俺の異世界生活が短すぎる

 アニメで見たことあるような場所に僕がいた。

 周囲を見渡すと、人混みから突き出した建物の数々がある。どれも中世ヨーロッパ風な見た目。やはりここは剣か魔法が得意なキャラクターがいっぱいいそうな異世界か。


「すっげえ、本当に来ちゃった」

 ファンタジーもののライトノベルやアニメにすっかりハマっていた僕は、舞い上がった気分で街を歩き回った。


 もっとも僕が歩いている街は、大勢の人が行き交っている。週末の渋谷スクランブル交差点みたいな感じ。人混みをさばくのが大変で、なおかつ騒がしい。


「ちょっと」

 突然僕は呼び止められた。振り返ると、黒いローブに身にまとった若い女性だった。帽子の真ん中には六芒星の白いマークがある。


「チェックするわね」

 女性はいきなり白いスティックのようなものを僕にかざした。スティックから警告音のようなものが鳴る。


「あなたを異世界侵入罪で逮捕するわ」

「はっ!?」

 突然の宣告に僕はうろたえた。しかし女性は容赦なく「バインド!」と叫ぶ。気がついたら両手は後ろに回され、ロープで縛られている。足首もロープで縛られているのに気づくと、僕は思わずもがこうとして転んでしまった。


「別の世界からここ転生してくる人が多すぎるから、昨日から住民票に登録していない侵入者を捕まえることにしたの。さっきの白いスティックをかざせば、一発で侵入者とわかるわ」

「で、そんな侵入者の俺はどうなるの?」

「この場で死刑」


「ええええええええっ!」

「騒がないで、いくよ!」

 僕の修羅場に気を取られたおびただしい数の人々が集結する中、警察だった女性が懐から魔剣のようなものを出した。

 刃の部分が、黒い稲妻を帯びている。


「ソレッ!」

 女性は何のためらいもなく、うつ伏せの僕に魔剣を振り下ろした。



---



「はい、異世界VR体験終了です」

「えっ?」

 女性店員の声で我に返った僕は、戸惑いながらVRを外す。東京都内のゲームセンターにいることを再認識したのはいいが、あまりにもアッサリと殺されるという異世界体験に、ドン引くしかなかった。僕の後ろに並ぶ6人のお客さんが、不思議そうにこちらを見ている。


「……これだけですか?」

「はい、後ろに5人以上待っているときは、すぐにやられちゃう内容にするので」

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