第7話 シーン22

シーン22


朝焼けの公園。

朝日を背にして武道の型を練習しているリュウがいる。


坂上が背中からそっと近づいて来る。


リュウ 「フンッ!」


坂上の眼前で蹴りを止めるリュウ。


坂上 「相変わらず素早いじゃねぇか、リュウ」

リュウ 「自分の影を敵に見せるとは、お前も随分ナマったな?」


お互いに武道の型で責め合いながら会話する坂上とリュウ。


坂上 「お前は敵じゃないだろ?」

リュウ 「どうかな?」

坂上 「それで、情報は?」

リュウ 「やっかいな相手だ。俺がお前なら、日本を去る」

坂上 「それも考えたさ。だが、尻尾を巻くのは俺の性分じゃない」

リュウ 「そんなに価値のある女なのか?」

坂上 「野暮な事、聞くなよな」

リュウ 「貝藤は相当のクセ者だぞ」

坂上 「こっちにも手はある。それに他に仲間も呼んだ」

リュウ 「まさか! またアイツじゃ?」

坂上 「まあ、今回も我慢して付き合ってくれ」


朝日に向かって合掌と礼をする二人。


その二人の頭にエアガンの弾が当たる。


坂上、リュウ 「イテっ!」


玩具のエアガンを持った玲子が草影から現れる。


玲子 「アタシの噂、してたでしょ?」

坂上 「玲子! 何するんだよ!」

玲子 「二人とも不用心ね。ナマってんじゃないの?」

リュウ 「神聖な武道の作法中に不意を付くとはけしからん奴だ!」

玲子 「不意を付くのがアタシのシ・ゴ・ト。そうでしょ?

坂上 「それ、なんだよ? オモチャじゃねぇか?」

玲子 「大丈夫。ちゃあんとホンモノも用意して来たから。それより本当にやりがいのある仕事なんでしょうね?」

坂上 「それはお前達の働きぶり次第だな」

玲子 「公私混同はゴメンよ」

リュウ 「今回は公私混同も同然だがな」

坂上 「何を言う! これはレッキとした大義の為だ!」

玲子 「だといいけど?」


そこに恵子が現れる。


恵子 「あのぅ~~、お早うございます」

坂上 「あ、恵子ちゃん、紹介するよ。こっちがリュウでこっちが玲子。二人とも頼りになる俺の戦友だよ」

恵子 「戦友、ですか?」

玲子 「あ~ら、可愛いコじゃない? このコが大義?」

坂上 「事情は後で説明する! 早速作戦会議にかかろう」

玲子 「・・・どうやらその時間は無さそうね。私は配置に着くわよ」

坂上 「何だって⁉」


玲子がバイクで走り去ると同時に貝藤弁護士のキャデラックが現れ、貝藤弁護士が降りて近づいて来る。


車の側には砥賀と江藤もいる。


貝藤弁護士 「いやぁ、はじめまして。昨日電話でお話しした貝藤弁護士です」

坂上 「会うと言う約束はしていないぞ。何故ここがわかった?」

貝藤弁護士 「申し訳ない。実は会社側からどうしてもと依頼がありまして。我が社独自のルートでそちらの居場所を調べさせていただきました」

坂上 「お前ら、スマホ会社にまで手を回しているのか?」

貝藤弁護士 「それはご想像にお任せします。そちらが鈴木恵子さんですね」

恵子 「・・・」

貝藤弁護士 「昨日のこちらの申し出、ご検討いただけましたかな?」

坂上 「カネで解決しろと言う話か?」

貝藤弁護士 「はい。お二人に一億円ずつ用意しました」

恵子 「一億円!」

貝藤弁護士 「恵子さん、これはあなたにとっても決して悪い話じゃない筈だ。あなただって、ご自分の事が世間に知られるのは困るでしょう?」

恵子 「でも、私は会社が私にした事が許せない!」

貝藤弁護士 「深大寺課長も深くお詫びをとおっしゃっていましたし、今井係長だってクビになりましたよ。どうかこれで丸く納めていただけませんか? おい、アレを」


江藤に合図してジュラルミンのケースを持って来させる貝藤弁護士。


貝藤弁護士 「さあ、どうぞお確かめ下さい」

坂上 「待て、お前が開けろ」


ジュラルミンのケースを用心深く確認しに行く坂上とリュウ。


ケースを地面に置いて開ける江藤。


貝藤弁護士 「もちろん本物ですよ・・・」


と言いながらジリジリと後に下がる江藤と貝藤弁護士。


リュウ 「クレイモア(対人指向性爆薬)だ! 伏せろ!!」


リュウは素早くケースを投げる。


恵子をかばって地面に伏せる坂上。


寸差で他方向に爆発するジュラルミンケース。


「ドォ~~~~ン‼」


空中にニセ札が舞い漂う。


坂上 「汚いマネを!」


砥賀と江藤がスーツの下に隠し吊るしていたイングラム MAC10を素早く抜き、腰だめのフルオートで銃撃してくる。


「ジャキジャキジャキッ‼」


即座に腰からハイキャパのガバメントを抜き、応戦するリュウ。


「ドンドンッ! ドドン!」


坂上も恵子をかばいながら、リュウと共に公園側のジープまで後退しつつ、グロック17で反撃する。


「ドンドンッ! ドドン!」


砥賀と江藤がイングラムのストックを伸ばし、坂上らに狙いを定めた瞬間、好条件の高台から玲子のH&K SGー1スナイパーライフルの援護射撃が加わる。


砥賀、江藤 「うわっ!」


ピンポイント狙撃でイングラムを弾き飛ばされ、車の影に隠れる砥賀と江藤。


貝藤弁護士はとっくに車の中に隠れている。


玲子はキャデラックのタイヤを狙い、パンクさせる。


坂上 「今だ! 行くぞ!」


ジープを急発進させる坂上。

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