第100話 スノウドラゴン
今日も大雪だ。あれから1週間以上雪が降り続いて、お店の窓も雪で埋まって2階の窓まで埋まりそうなくらいだ。この世界ではいつもこんなに降るんだろうか?
「ヴァイス。この世界ってこんなに雪が降るの?」
『いや、これはスノウドラゴンだな。ずっと念話で話しかけているのだが、全然返事が返って来ないのだ』
「えぇっ!? それは心配だね。近くまで行ってみる?」
『うむ、それが良いかもしれんな。あやつが居なくならないと、この雪が止まんのだ』
「わわっ、それは大変っ!」
出掛ける準備をする。外気を遮断するアクセサリーをしっかりと身につけて、ヴァイスと一緒に外に……出られない。
「ヴァイス、この大雪でどうやって出たら良いの!?」
『ふむ。今だったら外に人がいないだろうから、移動ボードで2階の窓から飛べば良かろう』
「おぉ、さすがヴァイス。それで行こう! アルちゃんはお家で少し待っていてね」
「きゅきゅっ!」
まだ雪も降り続いているから、何かあったら心配だからね。ヴァイスにはそのスノウドラゴンがどこにいるか分かっているみたいだから、移動ボードで飛んで行こう。
「行ってくるね」
『行ってくる』
「きゅきゅ~」
2階の窓から出て、移動ボードで飛んで移動を始める。ヴァイスも今日は飛んで先導してくれている。上から見ると、街のほとんどが雪で埋まっているみたいだ。これは大分深刻な状況だね。
王城も大分雪に埋まっているね。大丈夫だろうか? お城の上に大きな白いドラゴンがいるのが見えた。
「ヴァイス。あのお城の上にいるのがそうなの?」
『うむ、そうだな』
まさか王城の上に居るなんて思わなかった。あそこに行くには許可を取らないとダメかもしれない? 申し訳ないけれど、王城の上の方に窓から失礼しちゃおうかな。
「ヴァイス。王城で許可貰わないとダメかな?」
『ふむ。だが、そうも言っていられないみたいだぞ!』
「えっ?」
良く見ると、スノウドラゴンがこちらに向かってきている。だけど、なんだか怖い感じがする。
「ヴァイス? あれはこっちを襲って来てる……とか?」
『うむ。そうみたいだな』
「えぇぇぇっ!? どうするの!?」
『カノン。我が誰だか忘れたのか。世界最強のドラゴンだぞ、あやつに負けるわけなかろう』
「そうだけど、あのドラゴンちょっと怖いよ?」
『あやつは話が出来るはずなのだが、なぜ我を襲うのか分からんな』
ヴァイスでも分からないみたいだ。とりあえず、スノウドラゴンが近くまで来るのを待つみたいだ。あの怖い感じがするスノウドラゴンのどこかおかしい所があるのか、ちょっと怖いけれど良く見て見なきゃ。
じゃないと、あのドラゴンが街を襲ったら大変な事になる。それだけは避けなくてはいけない。あのスノウドラゴンの真っ白い身体を見ていると、首の所に何かが光ってみえた。
「ん?」
『どうした?』
「首の所、何か光っている気がするんだけど?」
『ふむ、あれだな! カノンはここで待っていろ!』
「うん、気を付けてね!」
『ああ、任せておけ!』
ヴァイスが凄い勢いでスノウドラゴンに突っ込んで行った。ヴァイスはスノウドラゴンとすれ違う時に何か攻撃をしたみたいで、スノウドラゴンが苦しそうな声をあげた。
そのままスノウドラゴンは王城の広場に落ちて行った。
「ヴァイス、スノウドラゴンがっ!」
『うむ、任せろっ!』
ヴァイスの身体が大きくなり、落ちていくスノウドラゴンを追いかけていく。スノウドラゴンの下に回り込むと2人とも雪の上にドサっと落ちた。
「ヴァイスっ!!!」
私も急いで追いかける。雪の上に落ちたヴァイスとスノウドラゴンの様子を見ていると、スノウドラゴンがぐらッと動いた。それからスノウドラゴンが持ち上がり、横にコロンと転がった。
「ヴァイス、大丈夫!?」
『うむ、下が雪だったから大丈夫だ。こやつも大丈夫であろう』
「良かったぁ」
安心した所で上から声が掛かった。お城の窓に国王様の顔が見えた。
「ヴァイス様、カノン様っ!?」
「国王様、お騒がせしてすみません」
「その白いドラゴンは一体?」
『こやつはスノウドラゴンだ。何者かに操られていたみたいだな』
「なんとっ!?」
ヴァイスが小さくなって上に飛んで行って、国王様とお話をしている。私はスノウドラゴンの所に行くと、怪我などしていないか様子をみてみる。
「このさっき光っていた首の傷だけかな」
『カノン、そやつにエリクサーを飲ませてやってくれるか?』
「うん、分かったよ。任せて!」
『それで正気に戻るはずだ』
「うんっ!」
アイテムボックスからエリクサーを取り出して、スノウドラゴンの口に流し込む。1本で足りるのか良く分からないけれど、スノウドラゴンの身体にエリクサーが入ると、ぱあっと身体が光った。
光が収まった時には、首の怪我も治っていた。少し待つと、スノウドラゴンの目が開いた。
『大丈夫か?』
「白龍様、申し訳ございません」
『良い。何があった?』
「魔族に動けなくされて操られました。意識はあった物の、身体が思うように動かなくてこのような事に……申し訳ございません」
『魔族だったか。うむ、気にするな』
スノウドラゴンは動こうとするのだけど、なかなか動けないみたいだ。どうしたのかと思ったら、お腹が空きすぎて動けないのだって。
「スノウドラゴンさんは、ヴァイスみたいに小さくなれるのですか?」
そういうと、ヴァイスくらいの大きさにみるみる縮んでいった。国王様に許可を貰い、王城の中に入れて貰った。スノウドラゴンさんは私が抱っこして連れて行く。
今日はここの厨房でお料理をさせて貰う事になった。ヴァイスが言うには雪を降らせすぎて体力がなくなったのだろうって言っていた。
この大雪はこのスノウドラゴンが降らせたみたいだからね。確かに、これだけ降らせたら力も出ないだろう。
温かい物が食べたいらしい。スノウドラゴンなのに、寒いのがちょっと苦手とか可愛すぎる。ヴァイスと同じ白いドラゴンだけど、スノウドラゴンはすべすべの鱗がキラキラと綺麗なドラゴンなんだよね。
あの綺麗な鱗を撫でてみたいな~とスノウドラゴンを眺めていたら、ヴァイスにしっぽ攻撃を食らった。
「いたたっ」
『カノン、何かよからぬ事を考えてないか?』
「か、考えてないよ? スノウドラゴンさんが綺麗だな~なんて思ってないったら」
『カーノーンー!』
「あはは。だって、ヴァイスのもふもふと違って、スノウドラゴンさんは鱗がキラキラなんだもん」
『ふんっ』
ちょっと不貞腐れたヴァイスが可愛い。これはヴァイスの好きな物を沢山作ってあげないとだね。これはワイバーンの唐揚げかな。
スノウドラゴンさんに温かい物だと何が良いかなぁ。熱々のグラタンにしようかなぁ。それとヴァイスと2人で沢山食べられるように、色々な物を作ろうかな。
王城内の調理場を借りて、次々にご飯を準備していく。この大雪で王城内の人達もおいしい物があんまり食べられていないみたいなので、大量に作ってみんなで食べよう。材料は私のアイテムボックスに大量に入っているし、足りなかったら種もあるし錬金棒で材料を省略して作っちゃえばいいだけだしね。
王城の人達には前に作った豚汁を沢山作って置いた。温かい物を食べてホッとして欲しいからね。さすがに今回はエリクサー入りではないよ?
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