第83話 貰った土地は?
やっと今日は定休日だ。朝からユリウス様が来てくれると聞いているので、急いで朝ごはんを食べてしまおう。
今日はパンとベーコンエッグを作ってヴァイスともぐもぐ食べる。今日も美味しいごはんで幸せです。
『今日はやっと土地を貰えるな』
「そうだね。今日はとっても楽しみだったんだよね!」
『ここ数日、ずっとソワソワしていたからな』
「バレてたっ!」
『当たり前であろう』
「今日はアルちゃんはどうする?」
「きゅきゅー」
「行かないの?」
「きゅっ!」
アルちゃんは行かないみたいだけど、何か伝えたい事があるみたいだ。ドアを指さしているので、防犯ボタンの様子を見てくれるみたいだ。
「アルちゃん、ありがとう。防犯ボタンの検証お願いね。まあ、いきなり悪い人が来ないとは思うけどね」
「きゅっ!」
ご飯を食べ終えて、お片付けを終えた頃にお店のドアがノックされた。開けてみると、ユリウス様とテオドール様が来ていた。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「「カノン様、ヴァイス様。おはようございます」」
外に出ると、お店の前に豪華な馬車が止まっている。ユリウス様に手を出されて、ちょっとドキドキしながらエスコートされ馬車に乗った。
外を見ていると、どうも王城へ向かっているみたいだ。
「ユリウス様。王城へ向かっているのですか?」
「ええ。土地が王城の一部ですからね」
「えっ!?」
『はっ!?』
まさかの王城の土地と聞いてびっくりした。思わず挙動不審になってしまったけど、仕方ないと思うんだ。
「ユリウス様。王城の土地って、大丈夫なのですか?」
「ええ。陛下が王城の一画にある使われていない土地を使えば良いと仰ったので、そちらに休憩できる小屋も準備してあります」
「えと、ありがとうございます」
「他にも何か必要な物があれば、準備しますので遠慮なく仰ってください」
「はい、ありがとうございます」
王城の門を潜ると、すぐに馬車から降りて門から右の方へユリウス様達に着いて歩いて行く。王城の敷地内はどこも綺麗に整備されていて、どこを見てもとても素敵だ。
こんな所に畑を作って良いのだろうかとちょっとドキドキする。
「ユリウス様。あの、こんな素敵な所に本当に畑の種なんて植えて良いのですか?」
「ええ、もちろん構いませんよ。その為の土地ですから、気にせずお使いください」
「あ、ありがとうございます」
迷路のような目隠しの木々を超えた先に開けた場所があった。開けた土地の端っこに可愛らしいレンガ造りのお家と倉庫みたいな建物が見える。
「あの、もしかして……あのお家ですか?」
「ええ、あそこが小屋ですね」
(いやいや、明らかに家ですよね!? 2階建ての家なんですけど!?)
「……そう、なのですね。どこら辺まで使っても良いのですか?」
「隣にあるのが倉庫ですね。ここから見える範囲全て使って頂いて構いませんよ」
「えっ、全部ですか!?」
「狭いですか?」
「逆ですっ! こんなに広い土地をお借りして良いのですか?」
「いえ、ここはカノン様の土地になりますので、お好きにお使いください」
(なぜ王城に土地を持つことになったの、おかしくないっ!?)
「あ……ありがとうございます」
とりあえず、ここで収穫出来た物を少し王城へ買い取らせて欲しいと言われたので、出来てからでお願いした。
なんといってもここの畑には、ワイン畑の種とライスワイン畑の種、ビール畑の種を植えるつもりだもんね。どんな物が生るのかも全然わかってないのだよね。
「カノン様。小屋にもある程度生活に必要な物は揃っているので、もしよろしければこちらに泊る事も出来ます」
「そうなのですね、ありがとうございます」
小屋というか2階建てのお家を見せて貰うと、中もとても可愛らしかった。
1階にはお風呂やキッチン、ダイニングテーブルもあり、すぐに生活出来そうだ。2階の部屋にはベッドまで完備されていた。
隣にある倉庫へ行くと、こちらにも畑仕事で使う道具が全て揃っている。何から何まで準備して貰って、とてもありがたいけれど、ちょっと申し訳ない気持ちにもなる。
美味しいお酒を造ってお城にも納品出来るように頑張ろう!
「それとカノン様、こちらをお持ちください。こちらを門で見せて頂ければ、簡単に門を通る事が出来ます」
「ありがとうございます!」
ユリウス様からギルドカードみたいなカードを貰った。しかもこのカード、すごくキラキラで、裏側には何か紋章まで描かれている。
やっぱり王城だと、こういう物も豪華になるんだね。凄く素敵なカードでちょっとドキドキです。
色々と説明をして貰ったら、ユリウス様達はお仕事があるので帰って行った。私はヴァイスと一緒にどこに何の畑を作るかを相談して大体の場所を決めていく。
種を植えてどれくらいの面積で育つのか分からないので、1個ずつ植えていこう。
「ヴァイス。奥の方に畑の種を植えようか?」
『そうだな。カノンがやらかしても良いように奥の方が良いだろうな』
「ちょっ!? やらかすってなんで!?」
『やらかすであろう。錬金じょうろ持ってきているだろう』
「あっ、確かに! でも、使いたいっ!」
『だから、奥の方から蒔いた方が良いのではないか? 手前には普通に畑にしておけばよかろう』
「おー。さすがヴァイス!」
小屋のさらに奥から畑の種を蒔く事にする。
「どの畑の種から蒔こうか? ワイン、日本酒、ビールどれがいい?」
『どれなら作れそうなのだ?』
「ん-、ワインかな」
『だったら、ワイン畑の種であろうな』
「そうだね。他のは作り方が難しかったり、あんまり分からないからね」
一番奥にワイン畑の種を植える事にした。大体ここの敷地はサッカーコートくらい広い。こんなに広い土地を貰えるなんて思わなかったからびっくりだよね。
おかげで、他にも色々植えられそうだ。まずは一番奥の方にワイン畑の種を植えよう。移動ボードを出して移動しよう。
「まさか貰った土地の中を移動ボードで移動するとは思わなかったね」
『確かにな』
移動ボードで移動して、まずは少しだけヴァイスに土を耕して貰おう。土が固まっていると根が伸びないかもしれないしね。
「ヴァイス。栄養剤を入れて少しだけ耕して貰って良い?」
『うむ。任せろ』
いつ見てもヴァイスの魔法は凄いね。栄養剤を混ぜ込んで土を耕してくれる。準備が出来たら、ワイン畑の種を植えよう。
とは言っても、1粒しかないからすぐ終わるんだけどね。
「ん~。錬金じょうろ使っちゃおう!」
『カノンっ!』
「えー。だって、気になるでしょ?」
『はぁ。まあ、周りには誰もいないから良いが、ばれていいのか?』
「それは良くないけど、どうなるか楽しみだし、やっちゃおうー!」
『自重はどこに行ったんだ?』
「錬金術の前では自重なんて!」
『捨てるなよっ!』
「あはは。いたっ」
心配してくれるヴァイスには申し訳ないけれど、やっぱりどうなるか気になるでしょう? 錬金じょうろ使ってどこまで省略出来るか楽しみだなぁ。
錬金じょうろをアイテムボックスから取り出して、種を蒔いた所にお水を撒くと、ぐんぐんと育っていく。
「わわっ!」
『カノンっ!』
ヴァイスが風魔法で私を避難させてくれた。勢いよく木が育っていって、もうブドウ畑みたいになっている。
「うわぁ、凄いねぇ」
『やりすぎだ!』
「えへっ。省略スキルさんが頑張ってくれてるね~」
避難した先でブドウの木みたいに広がっていく木を眺めていると、木の上に何か実が大きくなっていっている。
ふと地面を見ると、地面でも何かが大きくなっていっている気がする。
「えっ? なんで地面にも?」
『カノンっ、上から降りているツタの先にもだ!』
「うわぁ、凄いっ!」
見ているとどんどん大きくなっていく。だけど、ブドウじゃなくて瓶だ。どう見ても瓶が大きくなっていっている。
「えっと、瓶?」
『瓶、だな』
「まさか、ワイン畑って本当にワインが実るのーっ!?」
『そのようだな。相変わらずカノンはおかしいな』
「私じゃないよっ!? 今回は私のせいではないと思うのよ!?」
『どうであろうな』
どんどん大きくなっていっている。一気に実ってしまったけれど、どうやって収穫したら良いのだろうか。
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