第76話 【番外編】アルちゃんのお留守番

 今日からご主人様とヴァイスはダンジョンへ向かった。


「アルちゃん。行ってくるね」


「アル、頼んだぞ!」


「きゅっ!」


(分かった。お留守番は任せて!)


 ぼくも一緒に行きたかったけど、お店にご主人様がいないとお客さんじゃない人が入ってくるんだよ。だからいつもぼくが追い払っているんだ!


 うちのご主人様は、いつもにこにこでとっても素敵なんだ。いつもぼくに優しくしてくれて、お湯を入れてくれたり、栄養剤を入れてくれるんだ。そんなご主人様がぼくは大好きなんだ! でもヴァイスはたまに意地悪言うから、そういう時はお湯を掛けちゃうんだよ!



 ご主人様達が出掛けてすぐに裏口の扉がガチャガチャ音がして、その後にガチャっと開いた。ちらっと見ると、知らない2人組だ。これはきっと悪い人だ。


 ぼくは移動温泉ポットでふわっと浮くと、その人達の耳元へ上からそっと下りていく。


「きゅっきゅっきゅっ!」


「な、なんだっ!?」


「えっ!?」


「きゅぅぅぅぅーーーー!!!!!!!!!」


「「!!!!!!」」



 ぼくはご主人様から名前を貰ったから、色々出来る事が増えたんだ。周りに居る人達全員を気絶させる事なく、狙った人にだけぼくの声で気絶させることが出来るようになったんだ!


 一瞬で気絶した人達を蔦でぐるぐる巻きにして、ドアを開けて外にぽいっ! と放り出した。


 いつもぼくが外にぽいっと出して少しすると、警備に来た騎士さん達が連行してくれてるみたいなんだよね。一応ご主人様とヴァイスを守ってくれようとしてくれているみたいで、ちょこちょこ巡回してくれているみたい。


 そんなことをしていたら、ちょっとお湯が冷めちゃった。今日はやってくれるご主人様がいないからぼくがやらなきゃね。

 ポットから出ると、錬金マドラーを持ってくる。移動温泉ポットに錬金マドラーを入れてくるくるっと混ぜると、湯気が立ってきた。

 錬金マドラーを戻して、ぼくはポットに入る。


「きゅぅ~」


 毎日入っているけど、飽きないよね。お湯はやっぱり気持ちが良い。

 なぜかご主人様にはぼくが言いたい事が通じるんだよね。だからいつも甘えちゃうんだ~。だって大好きなご主人様が入れてくれたお湯の方が気持ちがいいんだよ!


 ご主人様が移動温泉ポットを作ってくれる前は、ご主人様が夜にしか錬金部屋に来なくなって、ちょっと寂しかったんだ。

 でも、ご主人様がぼくが移動出来るようにしてくれたから、寂しくなくなったんだ。それにお家を守る事も簡単になったんだよ。


 お湯に浸かってのんびりして過ごしていたら、午後になった。ぼくは植物だからいくらでものんびりしている事が出来るんだ~。


 そう思っていたら、お店の裏のドアががちゃがちゃ音がした。これは悪い人だ!

 すぅっと移動して裏口に向かうと、やっぱり知らない3人組が入ってきた。ぼくが目の前で飛んでいると、驚いている。


「うわっ、なんだこれはっ!」


「うわぁっ、マンドラゴンっ!?」


「うわぁぁぁ!」


 ニヤッと笑ってやると、さらに恐怖でがくがくしている。


「うわぁっ!」


「た、たすけてくれぇー」


 いつもみたいに蔦でぐるぐる巻きにして、動けなくする。


「うわっ!」


「なんだこれっ!」


「た、たすけてー!」


 裏口のドアを開けて、ぽいぽいぽいっ! と外に放り出した。きっとまた誰かが連れて行ってくれるだろう。

 お店の鍵を閉めたら、またのんびりお湯に浸かっていよう。


 ご主人様達はいつ帰ってくるかなぁ。ぼくが守っているから安心していいけど、寂しいから早く帰ってきてね。


 少しすると、今度はお店のドアがガチャっと開いた。そっと見に行くと、ご主人様とヴァイスが帰ってきた。


「アルちゃん、ただいま!」 


『アル、戻ったぞ』


「きゅきゅ~!」


 ご主人様とヴァイスが帰ってきて嬉しい。おかえりなさいの気持ちを込めて返事をした。嬉しくて、ご主人様の周りをくるくる飛んでしまう。

 やっぱりご主人様がいるのが嬉しいっ! ぼくがくるくる回っていても嫌がらずに撫でてくれるんだ。


 ご主人様、大好きっ!

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