第62話 孤児院へ行こう

 今日もヴァイスと朝ごはんを一緒に食べたらお店番をしながら錬金しよう。お店を開けてしばらくすると、先日の第一騎士団の団長さんのテオドール様ともう1人騎士様が一緒に来た。もう1人の青髪に青目で黒い犬耳がとっても素敵な騎士様はフランツ様というらしいです。

 あの犬耳もふもふしたいです。きりっとした騎士様の表情とのギャップが素敵すぎます。


 ヴァイスにジト目で見つめられたので、後で思いっきりもふってするんだからっ!


 騎士団への納品分はすでに準備していたので、すぐにお渡しする事が出来た。また来週も取りに来てくれるみたいだ。


「カノン様、ありがとうございます」


「こちらこそありがとうございました」


「携帯食の改良も今やってくださっているみたいです」


「そうなのですね。良かったです」


「それと、あのヒーリング包帯。とても素晴らしかったです! ポーションがなくても包帯を巻いておくとすぐに綺麗に治ったんですよ!」


「お役に立てて良かったです」


「ええ。ポーションを使う程でない傷はそのままにすることが多かったので、とても助かりました。それでは来週もよろしくお願い致します」


「はい、また準備しておきますね」


 テオドール様は荷物を受け取ると帰って行った。無事に1回目の納品が終わって良かった。また早めに準備しておこう。



 お昼が近くなりお客様がいなくなったので、お店を一度閉めて孤児院へ向かおう。お店の戸締りをしてヴァイスを肩に乗せて歩いて行く。


「あっ、カノンおねぇちゃんだー!」


「アデリナ、こんにちは」


「カノンおねぇちゃん! あのねっ、芽がでたんだよー!」


「わぁ、もう芽が出たんだね。それは嬉しかったね~」


「うんっ!」


 まさかそんな数日で芽が出ると思わなかったけれど、楽しそうで良かった。


「あっ、カノンおねぇちゃん!」


「ラルス、こんにちは。院長先生いるかな?」


「うんっ! こっちだよー」


 ラルスが院長先生の所まで連れて行ってくれると、キッチンにいたのでご挨拶をしてから食材を出した。米俵も沢山あるので、それも出しておいた。炊き方とパンの代わりになると教えたらとても喜んでくれた。


「カノンさん、今日もありがとうございます。お蔭でみんなに沢山食べさせてあげる事が出来ます」


「ご飯を食べたら、少しご相談があるのですが良いですか?」


「ええ、構いませんよ」


「ありがとうございます」


 私も一緒にみんなとご飯を食べてから、院長先生のお部屋に向かう。


「今日はどうなさったのですか?」


「子供達に屋台を任せて収入を増やすのはどうかと思うんですけど、どうでしょう?」


「屋台、ですか? しかも子供達にですか」


「はい。出来たら、うちのお店の前に屋台を出したら安全かと思うんです。それと屋台に出す物も火を使わずに安全に出来る物を考えてます」


 院長先生にもかき氷を見せて、子供達でも作れる事。フォルトゥーナのお店の前で屋台を出すから安全な事など説明をしてみた。なんとか院長先生の許可が下りたので、屋台をやりたい子がいるかを聞いてみてみる事になった。


 食堂へみんなを集めて院長先生が話し始めると、みんなは黙って聞き始めた。こんなにちゃんとお話しを聞ける子達ばかりなの凄いね。小さい子もいるのにきちんとお話を聞いている。

 屋台をやったお金でみんなのご飯になること。安全の為お店の前で屋台を出す事など説明していくと、みんなの顔が楽しそうな顔になっていく。


「ぼく、やりたいっ!」


「わたしもやりたいっ!」


 次々にやりたい子達が手を挙げていく。だけど一気にそんなに人数は必要ないので、2人ずつ交代して屋台をやる事になった。他の子達は畑のお世話を頼む事になった。


「カノンおねぇちゃん、ありがとう!」


「レオナも手を挙げてくれてありがとうね」


「屋台でアイスクリームを売るの?」


「ううん、同じ冷たい物だけどまた違うんだよ。今から作るからちょっと待っててね」


 アイテムボックスからかき氷機を取り出して製氷機も取り出す。みんなに説明をしながらまずは製氷機で氷を作ろう。


「氷が出来たらかき氷を作るよ~。かき氷にはこのフルーツのシロップを掛けるので、味を選んで貰ってね」


「カノンおねぇちゃん、何味があるの?」


 シロップを出しながらベリー、オレンジ、レモン、ブドウがある事を教えてあげる。シロップを掛ける時はシロップ用レードルで1杯掛ける事も教える。


「この蓋を開けて氷を入れます。お皿を置いたらかき氷機の横に手を置くとスイッチが入るよ。これくらいになったら手を放して止めるよ~」


「うわぁ、すごいっ!」


「カノンおねぇちゃん、それぜーんぶこおりなの?」


「うん、そうだよ。マルコは何味が良いかな?」


「ぼく? ぼくはブドウっ!」


「じゃぁ、このブドウシロップを掛けるよ」


 シロップを掛けたらスプーンを刺してマルコに渡してあげる。マルコの目はきらっきらだ。


「うわっ、つめたっ! あれ? なくなったっ!」


「ふふっ、ゆっくり食べるんだよ~」


 その後も次々とみんなの分を作って食べて貰う。屋台をやる大きい子達には自分達で作って貰う事にした。


「そうそう、氷を入れてスイッチオン!」


「カノンおねぇちゃん、これ楽しいね」


「さらさらって氷が落ちてくるの楽しいよね」


「うんっ!」


 レオナもかき氷を作ると、オレンジ味のシロップを掛けた。みんなしゅわっと溶けて消えるかき氷に夢中だ。楽しいのと美味しいので目がきらっきらでみんな可愛い。


「レオナ、どうだった?」


「とっても美味しかったっ! カノンおねぇちゃん、ありがとう。私、頑張るね!」


 とっても可愛いうさぎ耳のレオナの頭をなでなでする。ふわふわお耳が素敵です。


「この前と同じでお店の前だから、何かあったらすぐに言うんだよ」


「うんっ」


 みんなも私の周りに来たので、みんなの頭をなでなでする。本当にこの孤児院の子達が良い子達過ぎて思わずむぎゅっとしてしまう。


「カノンおねぇちゃん」


「ラルス、どうしたの?」


 ちょっとしょんぼりしてお耳がへにょんとしたラルスだ。


「ぼくもお手伝いしたかったんだ」


「そっか。10歳からの子達に頼んじゃったもんね」


 そういうとうりゅ~と目がウルウルしてきた。思わずむぎゅっと抱きしめる。


「ラルスも10歳になったら、お手伝いしてくれる?」


「うんっ! でも今できないのくやしい」


「でも、屋台で頑張ってくれるお兄ちゃんお姉ちゃん達の為にラルスが出来る事があるよ?」


「あるのっ?」


「ラルス達が畑で美味しいお野菜を作る事。そうしたら、屋台でお兄ちゃんお姉ちゃん達が働いたお金でお肉とか買えるでしょう? お野菜とお肉があったらとっても美味しい料理になるんじゃないかな?」


「うんっ、ぼくがんばるっ!」


 やっとへにょんとしたお耳がピーン! と元気になった。ちょっと慌てたけれど、納得してくれて良かった。


「お店がお休みの時に畑の様子を見に来るから、一緒に畑のお世話しようか?」


「うん、やるー!」


 畑のお世話する用の道具も作ろう。お店に帰ったら何か考えようかな。屋台は明日から始める事になった。ヴァイスと一緒に帰りながら歩いていたら、バッグを扱っているお店を見つけた。ウエストポーチみたいな腰に付けるバッグとリュックみたいに背負えるバッグを買ってきた。どちらもシンプルだけど、使いやすい感じだ。

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