第49話 腐った鉱石から出たのは?

 今日もヴァイスと一緒に錬金部屋に向かう。錬金部屋へ着くといつもアルちゃんが挨拶してくれて可愛い。


「アルちゃん、おはよう」


「きゅきゅっ!」


 相変わらず可愛いです。ご機嫌で片手(?)をあげて挨拶をしてくれる。


「お湯を少し貰っても良い?」


「きゅっ!」


 嬉しそうにお返事をしてくれた。やっぱり使って貰えるのが嬉しいみたいだね。少しお湯を貰ってから新しいお湯と栄養剤を足してあげる。


「きゅ~」


 お湯と栄養剤を足してあげると、蕩けそうなほど気持ちよさそうにお湯に浸かっている。あまりの可愛さに思わず頭の部分をなでなでしちゃう。


 アルちゃんのお湯を貰ったので、まずは岩喰魚イワナから出た腐った鉱石を錬金してみよう。

 錬金釜にアルちゃんのお湯と腐った鉱石を入れて蓋を閉めて、魔石に手を置いて魔力を流していく。数分でチーン! と完了を知らせてくれる。


 蓋を開けて鑑定してみると、鉄と書いてあった。


「腐った鉱石が鉄になったよ! アルちゃん凄いね~」


「きゅきゅ~!」


『ほう、それは凄いな。使い道がないと思っていたのだがな』


「よし、次もやってみよう~!」


 また錬金釜に腐った鉱石を入れて……ぽふん!


「あっ」


『またか』


「きゅ!? きゅぅ~……」


 アルちゃんのお湯を使う前に出来てしまったので、またアルちゃんがしょんぼりしてしまった。


「アルちゃんのお陰で省略出来るようになったんだよ。いつもありがとうね」


「きゅきゅ~」


 ご機嫌になってくれたので、錬金釜の中の鉱石を見てみる。


「ヴァイス。さっきと質感とか違うんだけど?」


『何かの鉱石になると書いてあったからな』


「んっ! ミスリルだよ!?」


『ミスリルにもなるのか』


 次々に腐った鉱石を入れてみると、鉄、ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンになった。多いのは鉄だったけれど、他の鉱石もたまに出てくるのでこれは素敵なのです!


「ねぇ、ヴァイス?」


『ん、どうした?』


「3個省略出来るよね?」


『そうだな』


「腐った鉱石いらなくない?」


『……やってみたらどうだ?』


「だよね。試してみなきゃだよね!」


 ヴァイスが珍しくやってみたらと言ってくれたので、何も入れずに錬金釜の蓋をして腐った鉱石を思い浮かべながら魔力を流す。


 チーン!


「出来た!?」


 蓋を開けて鑑定してみると、オリハルコンと書いてあった。


「オリハルコンできたー!」


『出来るのか……相変わらずおかしいな』


「だから私がおかしい人みたいに言わないでー」


『おかしいだろっ!』


「えぇぇっ!」


 また腐った鉱石を取りに行かなきゃと思ったけれど、省略スキルで出来ちゃったから取りに行かなくていいね。そして、この鉱石類はどうしたら良いかなぁ。今度、冒険者ギルドのギルマスに聞いてみようかな。



 さて、次は錬金マドラーに取り掛かろう。ガラスのマドラーは綺麗で好きなのだけど、壊れたら悲しいからミスリルで作ろうかな。錬金釜にミスリルをぽいっと入れて、蓋を閉めて魔力を流す。


 チーン!


 入れたミスリルが多かったからか7本も出来ている。多すぎた……まあ、要らなかったらまた他の物にすればいいよね。

 今日は青、赤、黄の魔石(大)を貼り付けよう。最近魔石(大)でも貼り付けるのが楽になったんだよね。錬金レベルが上がったからかな。

 鑑定してみたら、錬金術(省略)スキルが17まで上がっていた。色々作れるようになったから、楽しくてついつい色々作っちゃうからね。


 1時間くらいで3個とも貼り付ける事が出来た。このまま全部付ける事も出来そうだけど、他の物も作るから明日にしておこうかな。


『カノン、錬金術が上達したな』


「えへへ、嬉しいな。錬金術が楽しくて、作りたい物沢山なんだよね!」


『楽しそうで何よりだ』



 今度は建国祭の準備をしなきゃだね。今週の定休日が建国祭だからもう少しだもんね。

 錬金釜にミスリルを入れてアイスディッシャーを作ろう。鉄だと鉄臭さが付いたら嫌だからね~。贅沢だけどミスリルにしちゃうんだ!


『今度は何を作るのだ?』


「アイスディッシャーだよ」


『ん? それは何なのだ?』


「アイスをぽこっと丸く入れられるようになるんだよ。クッキーカップに入れやすくて良いかなと思ってね」


『なるほどな。出来たら試すのであろう? 我が食べてやるぞ!』


「ヴァイスが食べたいだけでしょう」


『うむ!』


「素直だね。じゃあ、味見をお願いね」


『任せておけ!』


 食べたいだけなのに、そんなに胸を張られても? 可愛いから良いけどね。ヴァイスをなでなでもふもふしてから錬金釜に蓋をして、アイスディッシャーを良く思い浮かべて魔力を流す。


 チーン!


 錬金釜を開けると、日本にいる時に良く見たアイスディッシャーが出来ている。アイテムボックスからクッキーカップとアイスを取り出して、水に濡らしたアイスディッシャーでぽこっと丸くしてみる。


『ほう、これは良いな』


「見た目も可愛くて良いでしょ!」


『うむ。味も旨いしな!』


「それはもう何度も味見してますー」


 ヴァイスがしっぽをふりふりしながらご機嫌でアイスを食べているので、私はその間にクッキーカップを沢山作ろう。

 今回は一気に沢山作ろうかな。錬金棒で混ぜる工程も抜かしてしまおう。材料を錬金釜に入れるとぽふん! とお皿に乗ったクッキーカップが沢山出来た。

 そういえば、材料を減らしてなかったな。だけど、これなら簡単だからこのまま作っちゃおう。何回も材料を入れてクッキーカップを作っていく。その都度お皿に乗ったクッキーカップをお皿ごとアイテムボックスに仕舞っていく。


 暑い日にはお店で出しても良いからと、多めに作って200個のクッキーカップを作り終えた。さすがにちょっと疲れたし、材料が大分減ってしまった。材料も買い足さないと他の物が作れなくなってしまうね。


「大量に作ったものの、よくこんなに材料持ってたな~」


『まったくだな』


「やっぱり買い溜めは必須だよね!」


『そ、そうだな』


 明日は朝に買い出しに行ってから錬金しようかな。今日はもうお昼ごはんを食べて師匠と交代しよう。

 ヴァイスと一緒にキッチンへ行き、今日は簡単に親子丼を作っちゃおう。色々なお料理を作っていると、省略して作れるようになるから毎日お料理をしていても楽しいんだよね。


「今日も良い香りだねぇ」


「今日は親子丼ですよ~」


『親子丼?』


「コッコ肉を卵でとじてるんだよ~」


『うまそうだ!』


 今日も師匠はお店を閉めてご飯を美味しそうに食べてます。結構師匠は自由だよね、憧れます。私も師匠みたいに自由に色々出来るように頑張ろう!



 午後にお店番をしていると、冒険者のゲルトさんが来た。


「おう、カノン」


「ゲルトさん、いらっしゃいませ」


「カノン、この前の食べ物の種も携帯食も凄く良いな! これで遠征先でも助かる」


「良かったです。他にもバリエーションを増やしていくので、楽しみにしていてくださいね~」


「そいつは良いな。頼りにしてるぞ! あのおにぎりっていう三角のも旨かった」


「あれは中身が色々変えられるので楽しいですよ~」


「ははっ、カノンの作る物はどれも旨いし斬新だよな」


 喜んで貰えるのは本当に嬉しいね。色々な意見も聞けるし、お店はやっぱり大事なんだよね。また頑張ろうって頑張る力になるもんね。また喜んで貰える物を考えよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る