第百十話

次の日、俺は広場でミナとシノンを待っていた


「早く着いちゃったかな…」


「にゃ…」


楽しみすぎてついつい早く来てしまった様だ


「あれ、随分早かったね」


「おおシノン、いやー楽しみすぎてね…え…?」


「はは、気づいた?」


シノンの着ている服は制服ではなく普通の服だったが、何故…何故女性用の服を来ていらっしゃるので?


「…まさか…そういう趣味があったなんて…」


見た目女の子だもんね、きっと色々あるのだろう


「俺はどんなシノンでも応援するよ…」


「勘違いしてるよね絶対、いや僕が悪いんだけどね」


「おまたせ〜って、何変な顔してんのよこいつ」


「…いや〜何か勘違いしちゃったみたいで」


「…ああ、なるほど」


「女装男子がいたっていいと思うようん、似合ってるし…」


「何言ってんのよ、シノンは女よ」


「うん…は?」


「…今まで黙っててごめんね?」


「…えぇ…!ぇぇぇぇっ?!」


「うるさいわよ」


「本当に…?どうりで女の子みたいな見た目だと思ったら…」


「まぁ、隠せてなかったわよね」


「あはは…努力はしてたんだけどね…」


「どうして性別を偽って…」


「前までは…ずっと自分が弱虫でなよなよしてるのが嫌だったんだ…それで虐められたりしてたから…」


「…ああ」


「だから少しでも強く見せるために…男として気持ちを変えようとしたんだけど…結果は知ってるよね」


「シノン…」


「でもリュート君に僕は凄いって言われたから自分と向き合って見ようと思うんだ、今回はそのお試し」


「…そっか、まぁさっきも言った通りどんなシノンでも応援するからさ」


「うん、ありがとうリュート君。やっぱり君は優しいね…凄く」


顔を赤くしながら笑うシノン、女性と分かったらめちゃくちゃ可愛く思える…これはしばらく慣れそうにないな


『顔、貴方も赤くなってますよ』


仕方ない、これは仕方ないと思う


「さ、話も済んだのなら武器を取りに行きましょ」


「そうだね」


「ああ」


「にゃー!」


「てかなんで猫がいんのよ」


「ああ…前言ってた飼ってる猫だよ、どうしても着いてきたいらしくてね…」


「そう、まぁ、別にいいけど」


「可愛いね〜よしよし」


「にゃふ…」


「…別にいいけど…」


ミナが撫でたそうにこちらをチラチラ見ている


「ミナも撫でる?」


「は、はぁ?な、撫でなくてもいいわよ」


「本当に?」


「…ちょっとだけ」


「にゃー…」


クロスケはやれやれと言った感じでミナの元へ近づく


「クロスケに気を使われてるな…ミナ…」


そんなこんなで鍛冶屋へと向かう


「…」


気づいたけど今両手に花状態では?


『女たら…』


違います


「…誰にも会いませんように…」


そう願いながら俺達は鍛冶屋へと向かった


「…おう、来たか」


「こんにちは、武器出来てますか?」


「…もちろんだ、そこにある。俺の自信作だ、最高の逸品になってるぞ」


台に置かれていたのは2つの剣、どちらも美しい装飾が施され。見ただけで特別な物と分かる


「…まさかあんな機能を思いつくなんてな…久しぶりに楽しませてもらった」


「いえいえ…僕はそんな大層な事はしてませんよ、無事に作って頂きありがとうございました」


「…ふっ、で、坊主がそれを使うのか?」


「はい!めちゃくちゃ凄いですね…ありがとうございます!」


「なに、お礼ならそこの嬢ちゃんに言ってくれ。俺はただ設計通りに作っただけだ」


「ふふ、リュート君抜いてみなよ」


「うん…」


剣を手に取り、鞘から剣を抜く。刀身は透明感の強い綺麗な白だった


「綺麗だ…」


「素材も純度の高いものだったからな、濁らせないようにするのが大変だったぜ」


「ロミリア先生がいい素材をくれたお陰だね」


「…すごい持ちやすい、手に馴染む…それに軽い」


「君の今持ってる短剣を参考にして持ち主に合わせて微妙に形を変えれるようにしたんだ〜」


「…凄い…凄いよシノン…!最高だ!」


「えへへ…そうかな〜…」


「…機能はそれだけじゃないぜ…本当に凄いのはここからだ」


「まだあるんですか…!」


これだけでも国宝級なんじゃなかろうか


「ああ…その機能はな…」


その時だった、遠くから爆発音が街に鳴り響く


「なんだ…!」


「い、今のなんの音よ!」


「なになに?!」


「俺ちょっと見てくる!」


「あ!リュート君!」


「シノン達はここで待っててくれ!」


クソっ!なんだか嫌な予感がする!


「にゃ…!」


「クロスケ?!着いてきちゃダメだ!」


「にゃっ!」


「くっ、戻るのも惜しい…危険だったら逃げるんだよ?」


「にゃふ!」


俺とクロスケは音のした方へ走る


「…なっ!」


「いやっ…来ないで…!」


「キイイイイ…!」


「化け物…!誰か…!」


そこに居たのは、魔物と呼ぶにはあまりにも不格好な歪な何か…生き物と呼ぶのも怪しいものだった


「聖騎士を呼べ!魔物が街に入ってきてる!!!」


「城壁を破りやがった!逃げろ!」


「魔力瞬進!」


「キイイイイ…!」


「くらえっ!迅鈴刃流:一式:刹那切り!」


「…キアアアア!」


「なっ…効いてない…!」


確かに切ったはず…!だけど傷1つついてない


「シイイイイ…」


魔物が動き出す、身構えるが一瞬で俺の横に移動して爪で攻撃される


「くっ…早い!」


腕を引っかかれたか…傷の部分がやけに痛い、毒か?


「…特癒回復」


「…スウウウウ」


『これは…とても歪な存在です、あらゆる魔物の魂が1つの肉体に無理やり閉じ込められているようです』


「キメラか…?そんな事誰が…」


「リュート…!」


「リュート君!」


「ルシュ!ロディ先生!」


他にも聖騎士達や騒ぎを聞きつけた街の人々がこちらに向かってくる


「無事かい?」


「ええ、何とか」


「…なんだコイツは…気持ち悪い見た目してんな…」


「どうやらキメラらしい」


「キメラ…?」


「色々な魔物が1つになってるんだ」


「マジかよ…そんなの人がする事じゃないな」


「…ああ…こんな狂った事する奴なんて1人しか居ない…」


「ご名答、流石勇者と言った所か、なぁ?」


「…クソったれ邪神…ベル·ブランっ…!」


「この場合は久しぶり、と言うべきか?」


「今度こそお前をぶん殴ってやるよ…!!」


「ふっ…懲りない奴だ…くはははっ!」


コイツだけは…ぶっ飛ばす!





キメラがミラノワを襲うまで残り0日

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る