第百七話

「ゴオオ…」


「はぁ…はぁ…全然…効かねぇ…」


「くそ…!聖剣斬撃でも傷1つつかないなんて!」


デスギガントゴブリンはピンピンしている、これじゃ俺達の体力が先に尽きてしまう


「どうにかして傷をつける方法があるはずだ…」


じゃないと20階でこの強さなんて馬鹿げてる


「…あんた達に気づけるかな…ふふ」


ラミダは静かに笑みを浮かべる


「ああ!物理も魔法も効かないならどうすりゃいいんだよ!どっかに弱点でもあるのか?!」


大剣で攻撃を繰り返すルシュ、その顔には焦りの表情を浮かべていた


「弱点…ゴブリンの弱点なんてあったか…?」


『ヒントでも差し上げましょうか?』


ステさんは知ってるの?


『そりゃ補助精霊ですし?大体の事は知ってますよ』


…じゃあそれは最終手段に取っておく


『今じゃなくて宜しいので?』


これは訓練だ、ズルはできない…何とかして自分達で見つけないと成長なんてできない


『本当にそういう所は頑固ですよねぇ…』


ステさんには負けるよ


『むむ…』


レアの時はズルなんてした日には説教が3日続くぐらい怒ってたのに、人って変わるもんだなぁ…


『…あれは長の補佐としての責任とか育ての親としての責任もありましたから』


なるほど…だから今は甘々なんだね


『だからって私以外でズルしたら許しませんからね』


横暴すぎません?まぁそういう所もステさんらしくて好きだよ


『…そういう事言うから女たらしと言われるんですよ、女たらしさん』


せめて名前はちゃんと呼んでくれよ…


「はぁあ!迅鈴刃流:一式:刹那切り:5連!」


「ゴオオ…ブウウ!」


「うおっ…危な!?」


くそ…動きは遅いくせに攻撃は的確に当ててくるな


「…どうするよリュート!このままじゃ負けちまうぜ!」


「やっぱり弱点を探すしかないな!」


魔力感知でデスギガントゴブリンを集中して見渡す


「魔力の流れを見ろ…何かないか…!」


こうなるならもっとボスについて調べとくんだった


「…魔力は普通の流れだ、いや…普通過ぎるか?」


こんだけデカいとなると魔力の流れも少しは早くなるものだ、神父の時やデスオークの時も魔力の流れは他の魔物と比べると早かった


「なんでこんなに流れが静かなんだ?」


見た目相応の流れをしていない、この流れじゃ普通のゴブリンと同じくらいの見た目じゃないとおかしい


「…ハリボテか?こいつ…」


よく見れば魔力の量も少なすぎる、こんな量じゃ生きることすら難しいだろ


「…うーん、ならどうやって動いてるんだ?」


「おらぁ!俺の炎でもくらいやがれ!」


炎魔法をゴブリンに浴びせる


「…ゴブブ…」


「くそっ!傷1つつかないのは何なんだよ!」


「…?あ…なるほど…!」


「どうしたリュート!何か分かったか?」


「ああ…!ルシュのおかげで分かったよ!」


「おお!マジか!こいつ倒せそうか?」


「試してみないと分かんないけど、やってみる価値ありだ」


「よっしゃ!リュートを信じるぜ!でどうするんだ?」


「…それは…」




「なぁ…あれからどんくらい経った?」


「うーん…1時間くらい?」


「こんなので本当に倒せるのか…?」


「まあまあ見てなって」


俺たちはボス部屋の端っこでくつろいでいた、ボスはここまでなら追ってこないようだ


「今外は夜かな〜…」


「ふぁ…なんか気が抜けるな…」


「あんた達何やってんのさ…」


「何って待ってるだけですよ」


「そうかい…」


「そろそろかな」


魔力感知でゴブリンを見る、うん…やっぱり予想は当たってるみたいだ


「で?なんでずっと待ってたんだよ」


「俺達が入学したての頃にテストしたの覚えてる?」


「ああもちろん、あんな地獄忘れるわけない…」


「あの的の説明も授業で習ったでしょ?」


「確か魔力を吸収して強度を高めるませ…き…まさか…」


「コイツも一緒だ、魔法を使うほど強度を増すんだ」


ルシュが魔法を使った瞬間、ルシュの魔法の一部分を取り込むのが見えた


「だから俺達から取り込んだ魔力が無くなるまで待ってたのさ」


荒業だけど


「なら今なら…」


「物理が効くはず…!」


「そういう事なら、物理でゴリ押してやる!」


「いくぞ!」


「ゴオオ…?!」


「…っらぁ!」


ルシュが思い切り大剣を振り下ろす


「ゴオオ!ブウウ!」


「よし!効いたぞ!やった!」


「一気に攻めるぞ!せや!」


俺達は全力でゴブリンに切りかかる、そして…


「ゴオオ…ブゥ…ゥ…」


「「よっしゃあ!」」


ボスは倒れ、下へ降りる階段が現れる


「ふおお!長かった!めちゃくちゃ疲れた…!」


「ああ…早く帰りたい…」


「よくやったね、あんた達」


ずっと静観していたラミダさんがこちらにやってくる


「アイツの別名は魔術師殺し、あんた達の読み通り魔法を吸収して自分の強度を増す魔物さね」


「…そんなのが20階のボスとか上級ダンジョン恐ろしいな…」


「はっはっはっ、まぁ本当なら下調べして行くからね。そんなに苦労する相手でもないさ」


「…今度旅する時はちゃんと下調べしような…リュート」


「ああ…そうだね…」


「さて、これで学園の課題は終わり…と言いたい所だけど…」


ラミダさんは腰に付けていた2つの短剣を手に持つ


「…ラミダさん?」


「…ここからが本番さ…!」


いきなり襲いかかってきた


「うお…!ちょ何するんだよ!殺す気か!」


ルシュの服の一部が切れていた、避け無かったら服ではなく肌がそうなっていただろう


「…よく分かってるじゃないか、今から私はあんた達を殺す気でやらせてもらうよ」


「…どうして…」


「さっきまでは魔物との戦闘で生き残れるかのテスト、ここから人との戦闘を仮定してのテストさね」


「…マジかよ」


ラミダさんの目は殺意で溢れてる、本気の本気らしい


「…私が現役でA級だった時、なんて呼ばれてるか知ってるかい?」



人を殺す専門の冒険者、共食いのラミダって呼ばれていたのさ



「久しぶりに血が騒ぐよ…!ふふ」



濃厚な死の気配が迫ってくるのが分かった

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