第五十二話

俺は死んだ…1度目はトラックで、2度目は魔族に殺された。考えてみると2週目は中々壮絶な人生だったな…


前世の孤児だった俺に家族ができて、皆いい人達で…適性の儀で光適性が授かった時は驚いたなぁ…でも家族やカレン、セバスチャンが喜んでくれて嬉しかったっけ…


城に住むことになってレディッサ先生やロディ先生、ルシュやエリスにも出会えた。レディッサ先生は先生だけど話しやすくて優しくて…ロディ先生は訓練の時は怖いけど、でも優しいのは変わりなかった


ああ…ルシュには申し訳ないな、勇者の仲間の枠どころか勇者自体の枠空けちゃって…エリスも花を一緒に母にプレゼントしようと言ってたけど約束、果たせなかったな…


でも勇者の訓練はキツかった、最初の手合わせの時ロディ先生に心折られたっけか…でもそのおかげで精神的に強くなれた気がする


そしてマリン姉ちゃんやイリスに出会って冒険して…いつも一緒のベットで寝るからドキドキしてあまり寝れなかったんだよな〜…


そこにアリアも混ざって楽しかった、アリアはこんな俺を好きだと言ってくれたし。俺には勿体ない人だったよ


はは…いい思い出ばかりだな…家族も居て、友人と仲間も出来て、好きだと言ってくれる人も居る…俺には勿体無い人生だったな



本当に…俺…ダメダメだった…



「人生の振り返りは終わったか?」


「うえい?!誰だ!い、今の聞いてたのか!」


恥ずかし!1人かと思ってめちゃくちゃ思い出語ってた!というかまずここ何処だよ、普通にスルーしてたけどさ


青空が広がるとても美しい草原に俺はいた


「確かに俺はあの魔族に殺されたはずだ…」


皆を失い体力も限界を超えてた俺はあの時心が壊れて死を受け入れたと思ったんだけどな…?


「はぁ…俺のせいで皆を死なせてしまったんだ…」


「また落ち込んでるのか、お前本当すぐ落ち込むよな。こっちまで気が滅入ってくる」


「だから誰だよ!姿を表せい!」


声しか聞こえない…結構近くから聞こえるのに、不思議だ…でもこの声はいつも俺を助けてくれる声の方だ


「悪いけど姿はまだ表せないんだ、お前が今より強くなって勇者として魔王を倒す頃には出てきてやるよ」


「…俺は勇者にはならない」


「はぁ…めんどくさ」


「あぁん?喧嘩売ってるのか!姿見せたらぶん殴ってやっからな!やーい卑怯者ー!」


「その威勢を何故あの魔族にぶつけなかった?」


「っ…!それは…」


「お前が失敗をした理由、分かるか?」


「俺が弱いせいだから…」


「それだよ、お前は自分を弱いと思い込んでる」


「だけど実際に俺はアイツに手も足も出せなかった!アリアを見捨てて、目の前でイリスとマリン姉ちゃんを殺されたんだぞ!」


「…手も足も出せなかった?やろうとしなかっただけだろ、お前は魔族というだけでビビって、自分が弱いからと逃げただけだ」


「お前に何が分かるんだ…!」


「お前の事は嫌という程知ってるよ、別に知りたくもないけどな」


「なんだよそれ…意味わかんねぇ…」


「お前は臆病者なんだよ、自分が弱いからと理由をつけてさ、守れなかったのは自分が弱いから。負けたのは自分が弱いから、逃げてるだけじゃねぇか」


「…」


クソっ…言い返したいのに言葉が出ない…図星なのか…?俺は逃げてたのか?


「現に最初から戦おうともせず逃げようとしてたじゃないか」


「それは…!」


「大切な人を守れなかったのを弱さのせいにするな、それは本当に弱い者にしか許されない考え方だ」


「じゃあ俺はアイツを倒せるほど強いってか?無理に決まってんだろ…」


「はぁ…本当めんどくさい奴だなぁ…最初の訓練の時にも言っただろ、お前は天才だって」


「天才だからどうにかなるってのか?あんなの天才ってだけで勝てるわけ…」


「でもお前は実際自分を天才だと理解したらロディ先生にもあのボスにも勝てただろ?」


「それは…そうだけど…」


「今回お前は自分に自信を持って戦ってたか?俺なら魔族に勝てると思って戦ったか?どうなんだよ」


「俺は…」


あの時俺は勝てる訳が無いと決めつけていた…俺如きでは到底叶わないと


「少しは自信をもて、イリスを励ましておいてお前がお前を信じなくてどうすんだよ」


「…俺はどうすれば…」


「信じろ、お前はこの世で1番強いんだ。これから先世界を守る戦いをするんだし、それぐらい思って十分だ」


「俺がこの世で1番強い…」


「俺TUEEEEしたいんだろ?ならすればいいじゃないか、やってやれリュート。あの3人どころか敵すらも救う勢いでな」


「…分かった、まだ気持ちの整理はつかないけどやってみる」


「それでこそリュート・レギオスだ」


「でも…もう3人は死んで俺も…」


「本当はここで使いたくなかったが…お前にもう一度だけチャンスをやる、ただしこれが正真正銘ラストチャンスだ。これから先絶対に失敗は出来ない」


「一体どうするんだ…?」


「お前が魔族と出会う前まで時間を戻す」


「えっ…そんな事が出来るのか?」


「1回だけだけどな、これで使うからもう使えない」


「あんたは…なんで俺にそこまでしてくれるんだ…?それに…なんで俺を転生なんてさせたんだよ」


「俺の罪滅ぼしさ…取り返しのつかない…絶対に許されない罪へのな」


「それって…」


「それはいつか話すよ、それじゃあ3度目は無いからな!頑張れよ!」


「うぇちょっと待って!3度目?じゃあこれ2度目のチャンスなの?!なら1度目のチャンスは?」


「それはもう1人の声の方に聞け!あいつ、あんな口調の癖にめちゃくちゃ繊細だからな。笑えるぜ」


「それはどういう…」


「まぁ今は気にすんな、それより魔族を倒す方法を考えるんだな!じゃあな〜!」


「まだ聞きたい事沢山あったのにーー……」


「行ったか…いずれ全部知れるさ…その時は…選択を間違えるなよ」



こうして俺は2度目の人生を終えたと思ったら2度目のチャンスを貰うこととなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る