誰もいない場所

勝利だギューちゃん

第1話

ここは、海。

誰もいない。

浜風が心地いい。


辺りを見回す。

誰もいないことを確認する。


ここでいいか・・・


僕はイーゼルを立てて、絵を描き始めた。


でも、見たままは描かない。

でも、ピカソではない。


眼を閉じる。

眼を閉じれば、そこには眼には見えない物がみえる。


眼を閉じたまま、僕は筆を走らせる。


「相変わらず下手だね」

女の子の声がする。


「また来たのか・・・」

「暇だもん。」

「友達は?」

「いない」

「彼氏は?」

「君」


物好きだな・・・


「ねえ、私を描いてよ」

「断る」

「一枚だけでいいから、大先生」

「嫌味か?」

「違うよ。純粋に・・・お願い」


仕方ない・・・


「わかったよ」

「ありがとう。じゃあ、おしゃれしてくる」

「そのままでいい」

「お兄さん、JK制服フェチ?」

「違う。手短にすませたい」


僕は、スケッチブックを用意した。

ポーズをとっている彼女を見る。


僕は眼を閉じて、筆を走らせる。


「できたよ・・・」

「ありがとう・・・見せて」


僕は、彼女に見せる。


「これ・・・私?」

「うん」

「私、こんなに可愛くないよ」

「僕の眼にはそうみえる」

「お兄さん、乱視?」

「視力は、2.0だ」


嘘だ。

本当は、極度の乱視。


でも、スケッチブックに描いた彼女は事実。

僕は、彼女の心を描いた。


眼を閉じれば、その人の内面が見えるのだ。


「お兄さん。ありがとう。大事にするね」

「捨てていいよ」

「捨てないよ」

「じゃあ、またね」

「うん」


嘘だ。

もう彼女とは会うことはない。


さてと・・・

場所変えるか・・・


今度はどこにしよう?

また、新しい一時の出会いがあるのか


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誰もいない場所 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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