第128話あんた、やっぱり俺からは逃げられなかっただろう(なんでこんなことになったんですか)
冗談じゃない。
冗談じゃない。
冗談じゃない。
あんな怪物の相手をするなんてまったくもって冗談じゃない。
わたしは夕暮れ色にそまった街中を、魔法少女の姿で逃げていた。
とてつもなく目立つえけど、こればっかりはしょうがない。
あとで親が死んだせいで頭のネジがはずれたコスプレ少女になった子としいて、ご近所のウワサになるかもしれない。
でもホントはもっと非道いことを、いまさっきしてきたばっかりだ。
壊した数と殺した人数、いったいどのくらいになるんだろう。
わたしはそれが、
そうだったら、少しでも時間をかせげる。
そのために他人の生命と生活をつかったことに、躊躇なんて全然なかった。
あの怪物さんの足を、少しでも止められる。
そのためにひとを殺してものを壊したことに、罪悪感はちっとも感じなかった。
それは、あのひとに後片付けを押しつけたこととは関係ない。
あのひとなら、
わたしは自分が選んで決めたことに、負い目なんておぼえない。
わたしのしたことを知っているのは、わたしたちと怪物さんたちだけというのも知ったことじゃない。
けどもしもこれがみんなにバレたら、またウワサがひとつ増えるのかもしれない。
これで母親が死んだおかげで団らんクラッシャーかつご家庭ジェノサイダーになってしまった子として、世間様のウワサになるのかもしれない。
けれど、そんなことはいまささだ。
だけど、いまはそんなこと言っていられない。
いまさらわたしについてのウワサのひとつやふたつ、増えたからったなんでもない。
いまはただ世間体よりなによりも、わたし自身の生命がおしい。
そんなことをつらつらと思いながら、わたしはただいま大絶賛逃走中だ。
勿論こんな悪目立ちする格好で、ひと目につく通りを走って逃げたりしない。
細い路地や家と家のすきま、はたまた小さな森のなかなど極力ひと目につかないよう努力した。
でもホントはひとの目が気になるんじゃなく、あの怪物さんがこわいからだった。
真っ直ぐ逃げてふりむいたら、いつでもそこにいるような気がしてならなかったから。
だから曲がってわたってくぐってはいずって、後ろをみないように逃げたんだ。
そうしてあっちこっち行ったり来たりしているうちに、ようやく不安が消えてきた。
そして前を向くと丁度、視線の先に街の大通りの光が見えた。
これでホッとひと安心。
ここでわたしは魔法少女の変身をといた。
ここからは、ひとにまぎれて家に帰ろう。
ひとと一緒にいることが嫌いなくせに、ひとを利用することをためらわない。
とことんずるいわたしの思いだけど、それこそホントにいまさだ。
とにかくいまは、温かなわたしの家に帰ろう。
今日の反省は、そのときにしよう。
ちなみに後悔はまったくしない。
そう思いながら、希望の光に一歩踏み出したところで――。
「久しぶりだなあ。鬼ごっこは楽しかったかい?」
わたしの見える希望の先に、黒い絶望が待っていた。
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