第112話あんた、どうやって私を楽しませてくれるかな(そんなの言えるわけないじゃないですか)
「よし、その様子じゃあんたも
いえ、だからそんなことを嬉しそうに言わないでください!
わたしにはそんな気なんて全然ホントにないんですってば!
それに急いだって善いことなんてなにひとつありませんよ!
と、わたしはこころのなかだけで、大きく大いに声をあげる。
だけどそのひとには、わたしの裡なる声に耳を貸す気配は一切ない。
そんなの聞こえるわけないんだから、たしかにそれはそうなんだけど。
それが当たり前なんだけど、わたしの背中には当たり前のようにひとのこころの声に応えてくれる緑色がはりついてるからついそんなことを思ってしまう。
むしろそうじゃなかったら、どうすればいいのかわからない。
ただでさえ面倒なのに、
そのときは、ホントにどうしたらいいかわからない。
そんなわたしの気持ちなんてお構いなしに、そのひとは右腕をタコみたいにグニャグニャ曲げて準備体操に余念がない。
そのキラキラした目をみてるだけでこのひとのウキウキワクワクが、
うわぁ、どうしよう。
速攻で前言撤回。
もうその目だけで、わたしにはどうしようもないのがわかる。
このひとは、本気だ。
本気でわたしとヤる気なんだ。
わたしは信じられない想いでいっぱいだった。
そんなひとがホントにいるなんて、わたしにはとてもじゃないけど
そう思っていると後ろから、
珍しくなにも言ってこないけど、言葉にしなくてもいまはその視線だけでなにを言いたいのか十分伝わる。
はいはい、わかってるよ。
わかってるから、
それよりいまは、この場をどうやって切り抜けるか。
いまわたしの目の前で、
ひとの思い通りになるなんてまっぴらだ。
ヤられっぱなしなんて絶対ごめんだ。
わたしはわたしの好きに生きて勝手に死ぬ。
ひとからみたらそれがどんなに惨めでも。
それがどんなに哀れでも。
わたしにとって充実していて、わたしが満足できればそれでいい。
そのためにも、ここはわたしのやりかたでどうにかしてやる。
覚悟はできてる。
腹もくくった。
手段もある。
だけど、
どれだけ目を皿にしてためつすがめつ観察しても、そんなものはひとかけらもみつからない。
自分はどこまでも自由でいながら、ひとにそれを感じさせることはない。
ホント、どこまでも怪物め。
スキがないならつくればいいじゃないだって?
いま存在しないものを新しく創りだす。
そんな
わたしにあるのは、いまあるものを殺して壊すだけのちから。
そしてちいさな意志と意地だけだ。
果たして、それがこのひとに通用するのか。
わたしのやりたいことができるのか。
なにもできなかったときの恐怖を覚えながら、それと一緒に全然別の想いが泥りとこころに滲みでる。
でも、もしそれが
そのときは、
可能と不可能がこすりあう、ひりつくような熱気にあたまが灼かれてこころはゾクゾクする。
そこに清水のように澄んだ声が、湯だったあたまに思いっきり冷水をぶっかける。
「いいねぇいいねぇ、その目だよ。そんな目でオレを
うわぁ、どうしよう。
このひと、本気でどっかおかしいよ。
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