第86話わたし、魔法少女になりました そのよんじゅうさん(わたしの意志ある言葉はカラッポです)

「うんうん、そうだよね。そうだったよね。たしかに間違いなく

 わたしはこくこくうなずきながら言葉を返す。

 見せつけるように、わざとらしく。

 ミドリのだしたに、満ち足りた気持ちを覚えながら。

 苦しむミドリの様子を愉しく感じる。

 痛々しいミドリの格好に悦びを感じる。

 まるでわたしの言葉に圧しつぶされてるみたいだったから。

 その有り様が、わたしのなかのが脈うつ速度をあげていく。

 こんなになっているミドリを見ていると、こころがとってもザワザワする。

「だったら、別にいいよね?」

 そんなミドリに、わたしは言葉を重ねていく。

「なら、構わないよね?」 

 ひとつひとつ、丁寧に載せていく。

「それじゃあ、何も言わないよね?」

 子どもが積み木で遊ぶみたいに、崩れないように積んでいく。

「それだったら、?」

 わたしの言葉でゆっくりと、圧し潰していくみたいに。

「それは……、いや。。それはキミが何を言いたいのか、何を言おうとしているかによる」

 ああ、やっぱりそうなんだ。

 そんふうになんかしちゃうんだ。 

 わたしのことを、したりしちゃうんだ。

 けどいいよ。あんたの好きにしちゃっても。

 あんたの想うにしていいよ。

 だって、わたしはそれこそが。

「それによっては、ボクにも

 そんなあんたのだからこそ、そうやって懸命にもがいているあんたこそ、姿

 そうしてになってくれるなんて。

 わたしの思ったとおりに、姿を見せてくれるなんて。

 さすが、わたしのパートナー相棒

 あんたがわたしのパートナーで、わたしはホントによかったよ。

 わたしと一緒にいてくれて、わたしはホントに嬉しいよ。

 でもダーメ。それはダメ。

 、その言葉は聞かないよ。

 だって、わたしはそんなあんたのことを。

「そんなのないよ」

 ミドリの言葉を、ただのひと言で叩きおとす。

 わたしのために言ってくれた言葉を、虫でもはらうみたいに地べたに向かって叩きつける。

 そしてそのまままたひとつ、ミドリに言葉を重ねていく。

「そんなのあるわけないじゃない」

 わたしの言葉はカラッポで、中身なんてはいってない。

 脆くてフワフワしてるだけだから、どれだけ積んで載せて重ねても、ホントは重くもなんともない。

 これが他のひとだったなら、そもそも受けとってすらもらえない。

 こんなわたしの言葉なんかに、感じることなんて何もない。

 でもミドリは違う。

 ミドリだけは他とは違う。

 この世界でミドリだけが、わたしの言葉を受けとめてくれる。

 わたしの言葉で

 それはカラッポの言葉のなかに、中身を入れるから。

 ミドリには関係のない事実と、感じなくていい罪悪感を込めるから。

 ミドリはなにも悪くないのに。

 それがカラッポの言葉の重さとなって、ミドリのことを押しつぶそうとする。

 だけど、ミドリは潰れない。

 わたしはそれをわかってる。

 最後まで自分の仕事を全うしようとする責任感と、わたしに最後までつきあうという覚悟があるから。

 そのふたつが柱となって、ミドリのこころを支えてる。

 、ミドリは潰れない。

 わたしはそれを、わかってる。

 、わたしは言葉重さを重ねる。

 決して潰れないことがわかっているから、言葉を重ねて圧し潰す。

 どれだけミドリが辛くても、踏みとどまれることはわかってる。

 どんなに重ねられた言葉が重くても、ミドリは耐え忍ぶことをわかってる。

 そんなことをしている限り、ただただあんたのことを。

 そんなあんたをこころから、わたしは愛しく想っているから。

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