第47話わたし、魔法少女になりました そのよん(わたしの意志はわたしだけのものなんです)

「素敵なこと、か。を聞いても、キミは変わらずキミのままなんだね。嘘も偽りも何もなく、本当に思ったことを言えてしまう。それとも思ったことが本当だから言えるのかな。まあそれはどちらでもいいことか。キミの想いが本物なのは、間違いのないことだから。そしてそれが、一番大事なことだろうから」

 緑の目はわたしの言葉を聞くと、最初からそう言うのがわかってみたいにそう応えた。

 それは呆れながらも理解してくれたようで、でもどこか諦めたような言い方だった。

 なんだかおっきなため息が聞こえてきそう。

 見た目からは全然わからないけど、もしかたら苦笑いとかしてるかもしれない。

 そんな自分だけ納得されても困るんだけど。

 あんな話もなにも、をしたのはあんたじゃない。

 それを聞いてどう思うと、それはわたしの自由でしょ。

 そんなことを思っていたらつい、余計なことを聞いてしまう。

「なに? 何か文句でもあるの?」

「真逆。そんなものあるわけないよ」

 さっきと違っていつも通りの口調で答える。

「それじゃあなにか不満でもあるわけ?」

「勿論。そんなこともあるわけないよ」

 これにも緑の目は落ち着いた調子で答えた。

「だったら他に言いたいことがあるとか?」

「それはあるかな」

 そこはあるのか。

「で、それってなに?」

「キミは強い子だって。いや、だねとは言いたいかな。今迄の話を素敵の一言で呑み込んでしまうんだから。ああ、勘違いしなでね。当然だけど良い意味でだよ」

 強か、ね。なんかさっきもどこかで聞いたことがあるような言葉だ。

 それも、あんまりいい印象のない相手に使ってたような気がする。

 まあでもそんなのとわたしが、関係ないか。

 だから勘違いも思い違いもするわけない。

 良い意味だと言うんなら、これは字面どおりの文字どおりに受け取ったほうがいい。

 きっと、そのほうが

 だって、わたしの勘がといっている。

「それはどうも、褒めてくれてありがと。だけどそんなに。だって、使それはとっても素敵なことだと思うよ。それにわたしがだっていうんならなおさらね。だって、それはとっても。こころの底から、ホントにね」

 誰にだってなりたいものがある。

 でも誰でもなりたいものになれるわけじゃない。

 みんなにもやりたいことがある。

 だけどみんながやりたいことができるわけじゃない。

 運とか才能とか環境とか、とにかくいろいろなものがなかったり足りなかったりするせいで。

 わたしにはそのうちの何もない。

 わたしにあったのは、そんなすごいものじゃない。 

 それでもがあったから、わたしは憧れに踏み出して、星に手を伸ばすことができた。

 わたしは魔法少女になることができて、魔法少女をやることができる。

 これを恵まれていると言わなかっったらバチが当たる。

 ホント、

 だって。

「けれど、キミはそのために自身の存在と可能性の全てを奪われた。そのせいでキミは自分の人生を歩めなくなった。それでもキミは?」

 ほら、またそんなする。

 そんなこと、あんたが気にすることじゃないのにさ。

 だって。そんなものは。

「全然いいよ。だって、

 が他人にとってどんな価値があろうと、どこに使いみちを見つけようと、そこにいくらの値段を書き込もうと、わたしにとってはどうでもいいことだ。

 いままで、そんなものがひとつでも役に立ったことはない。

 必要になったことすら一度もない。

 きっと、これからもないだろう。

 だから、わたしにとってそんなものは全部、どうでもいいものだった。

 それがわたしの持っていた、全部だったとしても。

 役に立たないものはいらないものだ。

 必要ないものはどうでもいいものだ。

 それを他人が必要としていて、役に立てることができるっていうのなら、

 大事なのは成果で、大切なのは結果なんだから。

 わたしが魔法少女になった結果と、魔法少女でやった成果があればいいんだから。

 わたしがいらないものを、他人が役立てて。

 わたしのどうでもいいものを、他人が必要とする。

 そうして回り回って、わたしはなりたいものになることができて、やりたいことができるようになる。

 これもリサイクルのひとつって言ってもいいんだろうか。

 何にしてもホント、

 上げ膳据え膳で全部用意されてたのはたしかだし。

 用意されたものを全部食べなきゃいけないのもたしかだけど。

 それを食べると決めたのはわたしなんだから。

 だから、わたしはずっと食べづつけるんだ。

 何回でもおかわりをして、いくらでも食べるんだ。

 もしお茶碗やお皿の上に何もなくなっったとしても、そのときは

 わたしの体は小さいけれど、これでも結構よく食べて。

 これでも結構、貪欲で強欲なんだ。

「そんなことは、言うものじゃないよ」

 まるで小さな子どもに言い聞かせるように、緑の目は言葉を絞りだす。

「なんで? いまはもう違うけど、全部わたしのものだったんでしょ。でもそれを遣われたことをどう思うかは、その意志はまだ?」 

「確かにキミの言う通りだ。それでもボクは、キミにそんなことを言って欲しくはないんだ。今更なんて、キミをボクたちが決して言ってはいけないことなのは解っていても」

 ん? はて、この緑の目は何を言ってるんだろう。

 自分を一番大事にするなんて、そんなの

 、そんなの決まってることじゃない。

 それより一番何を言ってるかわからないことは。

「わたし、?」

 今度は緑の目が何を言われたのかわからないみたいに一瞬黙ったあと、らしくもなく慌てたように。

「それは違う……」

 と、いうのを遮ってわたしは続ける。

 これ以上、あんたに何かを言わせたくなかったから。

「だって、わたしは誰からもそんな話はされてないし、誰もわたしにそんな話はしなかった。。だけどそんなの当たり前だよね。その仕組みで取引したのはわたしのお母さんとわたしの知らない彼女なんだから。わたしはふたりにとってただのモノだったんだから。だからあんたはわたしを騙してないし、わたしはだまされてないんだよ。もしかして、他の誰かはそんな?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る