第26話わたし、魔法少女になって何をやったかわかりました(ここまでやる気はなかったんですよ)
「それで、わたしはどうすればいいの?」
わたしは、足もとに転がるあの子の体を見下ろしながら、緑の目にそう訊いた。
それにしても、こうして改めてじっくり観察すると、ホントにひどいことになっている。
あいつらに、食べらた部分が欠けたままなのは当然だけど、それ以外のところもボロボロだった。
汚れた地面の上を散々転がったせいだろう。
全身ホコリまみれの土まみれ、さらには体のあちこちに、小さな擦り傷や切り傷が数え切れないくらいついている。
まだ体につながって残っている頭や体の部分にも、泥がべったりこびりつき、石やコンクリートの破片が刺さってそこら中に刺さってる。
着ている服も、擦り切れ破れ、もう服を着ている、というより布が絡まってる、と言ったほうがいいようなありさまだった
そのズタズタになって汚れた布切れに、
血がでてるってことは、まだちゃんと
死んでてたら、もう血はでてくるわけないし。
母は、わたしに「おやすみ」と言った格好のまま、朝になったら死んでいたいたのに。
昨日、わたしが最後に見た姿のまま、明日を迎えることができなかったのに。
まあ、いいや。
とりあえず、友だちが生きていてくれさえすれば。
それでいいや。
でも、こんなにボロボロになって汚れちゃったのは、もしかしなくても確実に、全部わたしのせい、だよね。
これって、ホントにちゃんと、もとに戻るんだろうか。
どこかの傷が治らなかったり、脳や体に障害が残ったりしないだろうか。
だけど、そのときはそのときで、別にいっか。
もしそうなったときのための、土下座の準備と覚悟はできている。
だから大丈夫ってわけじゃ、全然ないけど。
そうならないようにするために。
この子がそんなことにならないように。
わたしがそんなことしないですむように。
わたしは
「そうだね。まずはどこでもいいから、その子の体に触れてみて」
「うん、わかった」
この緑の目のいいところは、訊かれたことには必ず答えてくれることだよね。
他にいいところがあるかどうかは、まだわからないけど。
わたしは言われたとおり、この子の体に手で触れる。
まともに残ってる部分が頭ぐらいしかなかったから、おでこのところに手を当てる。
なんだか、熱を計ってるみたいな格好で。
「触ったよ、これでいいの?」
「問題ないよ。ありがとう。じゃあ具体的な作業事態はボクがやるから、キミは何があっても絶対に、その手を離しちゃ駄目だよ」
「手を離すと、どうなるの?」
「キミがその手を離さない限り、
……この緑の目の悪いところは、言ってもいないことを当然のように話すことだよね。
他に悪いところがあるかどうかは、探せばいくらでもあるだろうけど。
「それじゃあ世界を
え、世界を戻す? その言葉を聞いて、わたしはぐるりと周りを見回す。
最初は、
あー世界ね。うん、なるほどよくわかった。
そうしてみると、これ以上ないほど納得できる。
そこにあるのは、わたしが
わたしが自由に、やりたいことをやりたいようにやって、壊して殺した、世界だもん。
でも、だったら。
「わたしは世界を戻すために、何もしなくて大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。キミが何もしなくても、世界は自分自身を取り戻そうとするからね。そのときに、世界が
「へー、そうなんだ」
何のことだか、何を言われているのか、わからないというふうに。
そんなことに、
わたしには、関係ないみたいな答えを返す。
それはわたしはそのときに、別のことを思っていたから。
あいつらが傷つけた生命が、この世界の生命とつながらないともとには戻らないというのなら。
わたしが
これだけのことをやらかしたんだから、あいつら以外の、人間以外の生命のひとつやふたつ、間違いなく殺しているはずだ。
もしかしたら、わたしが知らないだけで、わたしが見ていないだけで、この子以外の人間を、巻き込んだかもしれない。
殺してしまった、かもしれない。
その生命は、もとに戻るんだろうか。
そんなことを、思ってた。
そしてそんなこと、
どっちでもいいと、思ってた。
だから、あんな気のない答えになちゃった。
「そうなんだよ。で、そういうわけだから、キミはその子ことだけに集中しててね」
「任せといて。ひとつのことに集中するのは、わたし、結構得意なんだから」
それは、他のことが目に入らなくなるとも言うけれど。
「それは頼もしいね。じゃあ、世界を元に戻そうか」
「うん。早くこの子をもとに戻してあげなくちゃね」
「素晴らしい心掛けだよ。じゃあ、始めるね。そうそう、世界が元に戻る前に、
え、いまなんて言ったの?
ていうか、なんでそれをいま言うの?
そのせいでわたしの集中、切れちゃったんだけど。
結構わりとあっさりと。
これでもし
これはどうでもよくないし、どっちでもいいことじゃない。
だってこれは、わたしに関わることだから。
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