第12話わたし、魔法少女の仕事をします(やり方は自己流です)

 さあ、それじゃあ始めよう。

 終わらせるために始めよう。

 もうこんなの最後にしよう。

 あいつらを、これ以上見てたくない。

 あいつらが、まだ生きてることに耐えられない。

 だから、あいつら全員ひとり残さず、わたしがこの手で殺すんだ。

 それを最後に、終わらせよう。

 脳は冷静、こころは沈着。

 なんだかんだであの緑の目と話していると、わたしは平穏を取り戻す。

 あの緑の目の揺るがない落ち着きが、わたしに伝染っているんだろうか。

 だとしたら、ありがたいけど正直なんかちょっとやだ。

 でもそのおかげで、いまのわたしは揺るがない。

 覚悟も決意も揺るがない。

 わたしの気持ちも思いも全部、エグイアスに装填めてある。

 あの子の分まで、なんてそんなつもりはないけれど。

 それでも、全部彼女が、受け止めてくれている。

 おまえたちに、その全部を叩き込んであげるから、ちゃんと持っていくといい。

 これでわたしの準備は万端、いつでもいける。

 いつでも、いくらでも、どんなことでも、やれるしやってやる。

 で、おまえたちはいいのかな?

 準備のほうはできたかな?

 殺す決意はできたかな? 殺される覚悟はできたかな?

 でも、そんなのいまさら、訊くまでもないことだよね。

 訊くだけ無駄なことだよね。

 だって見るだけでわかるから。ここに立ってるだけでわかるから。

 わたしが、どういうことかわかるから。

 おまえたちは待っている。わたしが動くのを待っている。

 自分からは動かずに、人が動くのをまっている。

 これが先に動いたほうが負けるとか、相手の後の先をとるだとかいうのならまだ格好がつくけれど。

 そんなこと、あるわけないのはもうとっくにわかってる。

 おまえたちに、そんのものがないあるはずないのはわかってる。

 おまえたちは。

 何も選ばないから動かないだけ。何も決められないから動けないだけ。

 いまになっても。いつになっても。

 を殺されたって、結局変わらず何もしない。

 だけど、少し学習したね。

 さっきまでおしくらまんじゅうみたいに群れてたのに、いまは離れてバラけてる。

 固まって群れてたら、まとめて殺されるって、いいかげんにきづいたね。

 そうしてが殺されているすきに、わたしを殺すつもりだね。

 便利だね、そのフレキシブルな都合のいいは。

 そして、ホントに徹底しているね。

 どうしたって弱いものしか襲わない、何がなんでも弱いところしか狙わない。

 そのなもの、もう軽蔑もなければ、嫌悪感も不快感も感じない。

 ただ、そういうものだと思うだけ。

 ただ、そう思って殺すだけ。

 そういうモノに、わたしの思いと気持ちを込めて殺すだけ。

 だから、おまえたちのことなど知るもんか。

 合図も何も必要ない。

 わたしの覚悟で初めて、わたしの決意で終わらせる。

 じゃあ、まずひとり目。

 最後を始める終わりの最初。

 適当に目についたあいつから。

 わたしはホップ、ステップ、ジャンプのリズムで、距離を一気に近づける。

 わたしの手が届くまで。思いと気持ちが届くまで。

 そうしてわたしは、思いっきり、そいつのお腹に、エグイアスを叩きつける。

 それでも吹っ飛んでいこうとするそいつの首を、右手で掴んで地面に叩きつけてやる。

 そのとき初めて、このバケモノが、恐怖以外の感情をその目と顔に浮かべるのを見た。

 苦痛に歪んだ顔のなかに、、理不尽を訴える表情が。

 苦悶に翳る目のなかに、、不条理に嘆く瞳の色が。

 その目と顔が、真正面からわたしを捉え、凍りつくように震えだす。

 よしよし、いいぞ。

 中身がお粥みたいになってるんだろう。わたしはお腹を押さえるそいつの両腕を、足で払って踏んで折る。

 ホント、態度も行動もそうだけど、仕草まで女々しいね。

 そうして、がら空きになったお腹の真ん中に、エグイアスを突っ込んだ。

 そのとき初めて、このバケモノの苦しみに満ちた悲鳴を聞いた。

 それはわたしの予想通り、こいつらの中身と同じで、汚く卑しい鳴き声だった。

 うんうん、そうだ。

 やっぱりこれが、正解か。

 おまえたちは必ず殺す。わたしが一発で殺してあげる。だけど

 そうやって、殺されるってどういうことか、死ぬっていうのがどういうものか、たっぷり好きなだけ味わうといい。

 そうして最後の最後まで、味がなくなるまで噛み締めたら、わたしがサクッと終わらせてあげる。

 でないと殺す意味がない。じゃないと

 お腹に穴が開いてから、汚い声で悶えるバケモノが、ここにきて初めてわたしをその目で

 ここまでやって、やっと見た。

 こんなことになった原因の、理不尽と不条理を。

 ようやくわたしが、おまえたちの何なのか、少しはわかってきたのかな。

 そしてその目を見れば何を、考えてるのかすぐわかる。

 どうして選ばれたのか。どうして決まったのか。という身勝手な思い。

 別におまえだけじゃないけどね。

 ただそれの答えはとっても簡単。たった一言で済む話。

 ホントは自分自身で思い知るのが一番だけど、手っ取り早く教えてあげる。

 わたしは首を絞って鳴くのをとめる。このままじゃうるさいからね。

 おまえが選ばれてのも、おまえに決まったのも、おまえをこんな目にあわせてるのも、理由は全部。

「近くにいた、

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