69日目 USBケーブル(TypeA-TypeC)
長細くなっている。
片方の端――主観的には足の側は、何かのへこみにしっかりとはめ込まれていて、そこから俺が意識を保つために必要なパワーが供給されているのがわかる。ま、十中八九電力だろう。2つに分かれている感じとかは特にないから、コンセントではなさそうだけれど。
さて。
俺はどうやら、ベッドの上にいるらしい。パイル地のシーツが敷かれた上には、枕と、ぬいぐるみと、少しぐしゃっとなったタオルケットが並べられている。だいぶ大きく見えるということは、俺はずいぶん小さくなっているらしい。場所的には……うーん……携帯の充電ケーブルかなんかかな。
にしても、ぬいぐるみ。ぬいぐるみ、なあ。
ピンク色のベッドの上に座る、ふわふわのぬいぐるみを見る。
……うーん。これ、どう考えても、女性の部屋だよなあ。こんな形で訪れることになるとは。
ま、なにもできないんだけど。視覚と聴覚以外ないし、動けないし。
神様いつか殴らせろよと思いながら天井のシーリングライトを眺めていると、鍵を回す音がした。
「はー、ただいまー」
ドアが開き、リュックを背負った女性が入ってくる。
「あーもー、つかれた……」
どさっとその辺に置くやいなや、ベッドに倒れ込む。
……俺のいる、ベッドに。
彼女の体の下に、俺の顔――刺さっていない方の端が入り込んでしまう。真っ暗、ではないけれど、彼女の着ていた服が俺を覆う。……嗅覚がないのが残念だよ。
「うう……」
呻き声を上げながら寝返りを打つ彼女。俺が再びシーリングライトで照らされて、その様をぼやっと見つめて、
「充電しよ……」
俺の頭の先を、彼女が手に持っていたスマホに押し込んだ。俺の中を、電気が流れていく。
「だめ……ねちゃう……」
……毎日こんな様子を観察できるのだとしたら、これはこれで楽しいのかもしれないな。
びびびびびと電流の仲立ちをしながら、俺はそんなことを思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます