3話:生き遅れのミーニャはしつこい
……くそぉ。口調はムカつくけど、顔は可愛いし、胸大きいから仲良くなれればと思って、親しくしようとした結果がこれか!
俺はもう、見た目だけで人を判断しないぞ!
やっぱり、人は内面を知ってこそだよね。
だから、今回はノーカン。幸い? 【猫の手も借りたい】の影響下にはあったものの、オトモになっていないみたいだし、ここで別れられればさほど問題にはならないだろう。
だというのに……。
「離しませんよぉ! ハルト様も旦那様の大事な候補者なんですからぁ!」
解体を終えたミーニャは俺にしがみつき、まったく嬉しくないことを言ってきた。
つーか、
「くせぇんだよっ! 服が汚れるだろうが!」
今のミーニャは解体時についてしまった魔物の血でとても汚い。そしてやっぱり臭い。
今すぐにでも離れてもらいたいが、どれだけ足でガシガシ蹴っても、一向に離れてくれない。
くそっ! 結婚を急ぐ女がこうもめんどくさいとは……。しつこすぎるし、返って逆効果な気がするのだが、気のせいか?
もし、ミーニャが男全員にこのようなことをしているのなら、結婚はほど遠い。
それどころか、一生できないかもしれない。というか、できないだろ。俺だったら絶対にしない。
結婚したいならムカつく話し方をやめて、余裕を見せないといけない。結婚したい欲が強すぎて、正直ドン引いてしまう。
せっかく顔はいいんだから、もう少し謙虚にいけばいいのに……。もったいないよな。熟女が好きって人も一定数はいると思うし。
俺は好きじゃないけど。
「臭いのはハルト様のせいですぅ! そこまで言うなら、わたしにだって考えがあるんですからぁ!」
「ほほう……! 言ってみろ、この生き遅れ!」
「ええっ! 言ってやりますぅ! ……ハルト様、今、お金ありませんね」
「ぅぐっ、なぜ、分かる……」
「ハルト様が考えていることは、まるわかりですぅ。魔物を解体してあげたのも、ハルト様が『どうしよう』と悩んでいたからなんですからぁ!」
「なん、だと……」
ミーニャの言っている通りだ。俺にはお金がない。冒険者になったのだって、もとはお金がなかったからだし。
まさかこいつ、俺から解体した魔物を取り上げるつもりか……! それは断じて許せない。ミーニャはあくまでも解体しただけ。魔物を倒したのは俺のオトモたちだ。
だから、所有権は俺にあるはずだ。
「じゃあ……、わたしもそのオトモになれば、分け前はもらえるってことですねぇ……」
「お前、まさか……! やめ、やめろぉーーーーーッッッ!」
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個体名:ミーニャのオトモ化に成功しました。
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は……? え……? それだけ……? 使えねぇなッ! こいつ、マジカルキャット以下かよっ!
くそっ……、あくまでも魔物の固有魔法を扱えるようになるだけで、魔物じゃない生物のスキルは使えるようにならないのかよぉ……。
というか、オトモになる決定権は向こう側にあるのかよっ! 俺が一方的に決定できるわけじゃないのな……。せめて、ランダムにしてくれればよかったものを……。
それに、今はオトモを解任させることもできない。……いつか、解任させられるようになるよな? スキルレベル上げたら、解任できるようになるよな? 【猫の手も借りたい】さんよぉ……。
「ふふんっ、どうですかぁ……。これで、ハルト様はわたしから離れられませんねぇ」
「あぁ、そうみたいだ。だがしかし、これは今だけだ! 俺はいずれ、故郷に帰る。俺の故郷では、猫耳がある人間なんかいないから、さぞ……暮らしづらいだろうなあぁぁ!」
「知ってますよぉ。もしかして、これでわたしの心を手に入れたとでも思ってたんですかぁ? 残念ですねぇ。わたしはそんなに軽い女じゃないんですよぉ」
あ、こいつ。一生かけても結婚できないわ。それが、この一瞬で確信に変わった。
つーか、たとえゲットできたとしても、お前の心はいらねぇよ。
だが、こうも言ってられない。いずれ、オトモを解任できることを信じて、今はミーニャを利用するしかない。
そう、今だけは……。くそぉ、苦渋の決断だ……。
「ならば分かった。ミーニャ、お前はお金を稼ぎたいんだったな。俺もそうだ。ここは共通してる。だから、いっちょ二人で金儲けしてやろうぜ」
「大丈夫なんですかぁ? 返って、負債を抱えてしまうんじゃないですかぁ?」
「いいや、大丈夫だ。プランはすでにできている」
その名もネコカフェ。異世界には絶対にないだろうし、俺には【猫の手も借りたい】というスキルがある。
ただ、懸念事項があるとするなら、この世界に動物のネコが存在しているのか、だな。
マジカルキャットでも代用か利きそうな気もしなくもないが、万が一の可能性がある。
【猫の手も借りたい】のスキルレベルが上がって、マジカルキャットの危険性をなくすことができれば問題ないのだが……。
その点は、追々考えるとして。
「ちなみに、ミーニャは店長な。拒否権ないから、つべこべ言わずに頑張ってくれ」
「酷いですぅ! わたしに仕事全部投げるつもりですかぁ! ハルト様にはしなければならないことがあるかもしれませんけどぉ……」
「ああ、そうだ。だから、お前に頼んでるんだ。期待はしてるぞ、店長・ミーニャ!」
そう、俺は気分を良くさせるためにおだててながら手を差し出す。
すると、ミーニャは「ハルト様ぁ」と言い俺の手を取って立ち上がると、ジトーっとした視線を向けてくるのだった。
「いや、騙されませんから」
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