第7話 6月10日

 佐々木部長と一緒に昼食を食べて、仕事に戻った。のはいいんだけど、結局、良い案は思いつくことなく、その日は終わろうとしていた。

 会社に残ってるのは俺と佐々木部長だけ。外は相変わらずの大雨だ。


「秀治君。そろそろ、帰りなさい」


 いつものように佐々木部長はそう言った。

 佐々木部長はまだ仕事をするようだ。パソコンと睨めっこしていた。


「もう少し残りますよ」

「ダメよ。帰りなさい。残ってても、良い案なんて思いつかないわよ」

「でも・・・・・・」

「ダメったら、ダメ」


 たしかに、佐々木部長の言う通りなんだけどさ。このまま残ってても良い案を思いつく気は全くしないし。


「じゃあ、部長も一緒に帰りましょう。部長、いつも遅くまで残ってるじゃないですか」

「私はいいのよ」

「ダメです。部長もちゃんと帰らないと、ご家族が心配しますよ」

「大丈夫よ。娘はしっかりものだから、私がいなくても」

「娘さんはがいるんですね。おいくつですか?」

「18歳」

「それは、もう大人ですね」

「そうなのよ。最近はしっかり者すぎて私の方がだらしなく思っちゃうくらい」

「そうなんですね」

「だから、いいのよ。私は」

「ダメですよ。娘さん、心配してるかもしれないじゃないですか」


  お互いに譲ることがないまま、この押し問答はしばらく続いた。

 そして、折れたのは佐々木部長の方だった。


「もう、分かったわよ。帰るわよ」

「ちゃんと、送っていくので安心してください」

「そんなこと言って〜。私を変なところに連れ込む気でしょ? 私、既婚者だからね。元だけど」

「な、何言ってるですか!?」

「うふふ。分かってるわよ。冗談よ。慌てすぎ」


 そう言って、佐々木部長は、俺のおでこを人差し指でツンとつついた。


「せっかくだし、送ってもらおうかしらね」

「任せてください」


 二人で車に乗ると佐々木部長の案内で家まで送っていくことになった。

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なぜか隣に住んでいる女子高生に足として使われるようになった!? 夜空 星龍 @kugaryuu

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