第6話 6月10日

 会社に到着して、まず佐々木部長に頭を下げた。


「遅れてしまって、申し訳ありません」

「仕方ないわよ。この雨だからね。渋滞に捕まることだってあるわ。とにかく、無事に着いたんだから仕事頑張ってよね。秀治君」

「はい! 頑張ります!」


 俺は自分のデスクについてパソコンを立ち上げた。

 遅れた分を取り戻さないとな。結局、俺は部長に言った通り十分遅れで会社に到着した。

 俺が働いているのはゲーム会社だ。小さな頃からゲームが大好きで、将来は自分でゲームを開発したいと思っていた。その夢はもうしばらく叶いそうにないが、ゲームに携わる仕事をできているのは嬉しく思う。

 ちなみに、俺が現在、携わっているのはあるゲームのイベントの企画と立案だった。

 そのイベントの企画出しで、毎日頭を抱えている。なにしろ、そのゲームっていうのが恋愛シュミレーシヨンゲームなのだ。

 恋愛なんて、からっきしの俺なんかに良い案が思いつけるとは思えなかった。だが、佐々木部長からの直々の指示だからできないとは言えなかった。

 どうすればいいんだよー!

 俺は何も思いつかないまま真っ白な画面と睨めっこしていた。


「・・・・・・君。・・・・・・秀治君」


 誰かに呼ばれたような気がして振り返ると佐々木部長が立っていた。

 何が用だろうか?


「お昼、一緒に食べない?」

「え、もうそんな時間ですか」


 腕時計を見ると午後一時を回っていた。


「行きます!」

「よかった。じゃあ、行きましょう」


 雨はまだ降っていたので、近場で食べようということになった。

 佐々木部長に連れてこられたのは小洒落たカフェだった。佐々木部長と何度か来たことがある場所だった。

 テーブル席に向かい合うようにして座ってメニュー表を見た。


「俺はこれにします」

「また、それ食べるの?」

「はい。無難が一番ですから」

「無難なだけじゃダメよ。冒険もしないと」


 そう言った佐々木部長は新商品を注文した。

 何でも新しいものに挑戦。がモットーの佐々木部長は次々とヒット企画を産み出して、三十代といううちの会社では若くで部長になった。

 俺に足りないのは、そういった心かもな。いつも無難な方に逃げて、冒険することが怖くなっているのかもしれない。


「だからですかね。良い案が思いつかないのは・・・・・・」

「例の件ね」

「はい。未だに良い案は思いついてません。すみません」

「まだ、納期までもう少しあるし、そんなに焦らなくても大丈夫よ。ちゃんと私もサポートするから、ね」

「ありがとうございます」


 料理がテーブルに運ばれて来た。

 俺のはいつものハンバーグ定食。

 佐々木部長は新商品の四種のチーズinハンバーグ。

 

「さ、食べましょうか」

「はい」


 いつものハンバーグ定食は普通に美味しかった。

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