第4話 6月10日

 愛菜の言葉通り、すぐに学校が現れた。

 そこは、この辺りでは有名な進学校だった。


「ここが、私の通ってる高校だよ」

「ここって、この辺じゃ有名な進学校じゃないか。結構偏差値高いって噂だぞ」

「そうみたいだね」

「そうみたいって、自分が通ってる学校だろ」

「だって、私そういうの興味ないんだもん」


 愛菜ちゃん、頭いいんだな。

 たしかに、よく見ると知的な顔をしているように見える。

 チラチラと横目で見ていたら、愛菜ちゃんと目が合った。


「私の顔に何かついてる?」

「いや、愛菜ちゃんは頭いいんだなって」

「そ、そんなことないから!」


 愛菜ちゃんはそう言うと窓の方を向いて、ボソッと呟いた。


「もぅ・・・・・・不意打ちはやめてよね・・・・・・」

「何か言ったか?」

「なんでもない! それより、ここでいいよ」

「了解」


 俺は近くのコンビニに車を止めた。


「お兄さん。送ってくれてありがと」

「どういたしまして」

「じゃあ、またね」

「ああ、気をつけてな」


 愛菜ちゃんは俺に手を振るとピンク色の傘をさして学校へと歩いて行った。


「さて、俺も仕事に行きますか」


 左腕に付けている腕時計で時間を確認した。

 はい。遅刻確定ですね。

 

「はぁ、上司に連絡しておこう」


 スマホを取り出し、上司に電話をかける。

 さて、なんと言い訳をしようか。

 まさか、隣に住んでいる女子高生に捕まって高校まで送り届けてたなんて言えないよな。

 どんな言い訳をしようかと考えていると、電話の向こうの相手がでた。


『はい。佐々木です』

「すみません。森戸です。渋滞に巻き込まれてしまって、十分ほど遅れさそうです」

『分かったわ。秀治君。安全運転でね』

「はい。ありがとうございます」


 佐々木部長は怒ることはせず、心配の言葉をかけてくれた。

 部長すみません。嘘をついて・・・・・・。

 俺は心が痛かった。

 佐々木部長は仕事では厳しいが、基本的には優しい人だ。そんな佐々木部長のことを俺は尊敬していた。この人のためなら残業くらいどうってことなかった。それに、仕事は好きだし、やりがいもある。だから、多少の残業くらいならやるんだけど、何故かいつも部長に「帰りなさい」と帰されてしまうのだ。

 俺は頼りにされてないのだろうか。たまに、そう思うことがある。


「もっと頑張って、佐々木部長ち認めてもらおう」


 俺は声に出して気合を入れた。

 そして、安全運転で会社へと車を走らせた。

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