第2話 6月10日

☆☆☆


 愛菜ちゃんの道案内を頼りに愛菜ちゃんが通っている高校を目指した。


「お兄さんがいてくれてよかった〜。びしょ濡れで行かないといけないとこだったよ〜」

「そうだな。たまたま俺がいてよかったな」


 俺はたまたまの部分を強調して言った。


「本当に今日だけだからな」

「はいはい。分かってるよ。お兄さんって意外とケチだよね」

「ぐっ・・・・・・。そもそも、少しは自分の心配しろよ。俺は男だぞ。このままよからぬところに連れていくかもしれないんだぞ? 愛菜ちゃん美人なんだから」

「え、お兄さん、そんなことするの?」

「いや、しないけど・・・・・・」

「でしょ。だから大丈夫!」


 なにが、大丈夫なのか。

 俺のことを信用してるのか、それとも男として見られてないだけか・・・・・・。おそらく、後者だろうな。


 それからしばらく安全運転で高校へ向かった。その途中、俺は愛菜ちゃんと初めて会った日のことを思い出していた。


 愛菜ちゃんと初めて会ったのは今から数ヶ月前。まだ、雪が降る寒い日だった。

 その日は、残業でいつもより遅い帰宅だった。その頃はまだ車を持っていなかった俺は雪の積もった道を歩いて帰っていた。夜は凍えそうな寒さだった。完全装備(マフラーに手袋にロングコートを身につけていた)じゃないと、とてもじゃないけど、歩けそうになかった。


 途中、夜ご飯を買うためにコンビニに寄ったが、それ以外は寄り道をせずに真っ直ぐに帰った。上司はまだ会社に残って仕事をすると言っていた。自分を犠牲にして部下の俺を帰らせてくれた。本当は残って手伝おうと思ったが、上司は手伝わせてくれなかった。


 家に到着すると階段を使って三階まで上がった。すると、廊下に人がいた。

 見るからに、女子高生だった。この氷点下だというのにスカートを短くして、その下には雪に負けないくらいの白さの生脚が伸びていた。上半身は制服の上に茶色のカーディガンを着ていた。


 寒がりな俺からしたら考えられない服装だった。あれで、よく寒くないよな。てか、何してるんだろうか。

 その女子高生は家に入る気配はなく、スマホをいじっていた。もしかして、鍵でも忘れたのか。

 俺は自分の家の前まで歩いて行った。家の前に到着した。女子高生はこっちを見る気配もなく、家に入る様子もない。


「はぁ〜」


 俺は小さくため息をついた。その息は白かった。


「どうした? 家に入れないのか?」


 俺はその女子高生に声をかけた。

 当然、その女子高生は目を丸くして驚いたように俺のことを見ていた。まさか、声をかけられると思ってなかったのだろう。 

 その女子高生とは顔見知り程度の関係だった。会った時に挨拶をするくらい。名前はもちろん知らない。


 怪しまれても仕方ないよな。でも、ほっとけないだろ。これで、俺が何もしなくても彼女が風邪でも引いたらなんだか罪悪感を感じそうだし。

 女子高生は何も言わなかった。女子高生は、まるで品定めでもするような目つきで俺のことを見つめていた。

 そして、その結果、なんの問題もないと判断したのかこう言った。


「そう。お母さんがもう少しで帰ってくるはずなんだけど、ちょっと仕事で会社に残ってるみたい」

「そうか」


 それなら、心配ないな。俺は着ていたコートを女子高生の肩にかけてやった。


「これで、もう少しくらいなら待てるだろ。じゃ

、風邪ひかないようにな」


 女子高生は何が分かったのか分からないといった表情で俺のことを見ていた。

 そんな様子に気がついてはいたが、俺、気づいてないふりをして家の中へ入った。

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