急展開ーそして事件は起こったー 4

「『激写!海外事業部部長、津田雪哉は女装が趣味のオネエだった!!』……?

って、何これ?」


呆けている私を他所に、咲希子がどんどん画面をスクロールして行く。


「あ、なんか写真が添付されてない?」


咲希子が指さす方を見ると、確かに『写真』の文字。


「イタズラか?」


「待っ……!」


嫌な予感がして、咲希子を止めようとするもクリックの速度の方が早く、写真がパソコンに大きく映し出された。


合計5枚の写真。


そこに写っているのは、ハナちゃんにスコーンの作り方を教わって帰宅した時の、雪ちゃんと私。


アングル的に、紛れもなく盗撮された写真だった。


ハッとする。


あの時のあの光。やっぱり見間違いなんかじゃなかった。


(やっぱり、笹木がまた盗撮していたんだ……!)


どうしてあの時、もう少し注意しなかったんだろう!?あり得ることだって、分かってたじゃない!!


怒りと悔しい気持ちが入り混じって、私は唇を噛んだ。


「あれ?」


不意に、隣で画像を見ていた咲希子が呟く。


「4枚目のこの写真。江奈と一緒に写ってるこの女の人……」


咲希子が写真を指差す。


私はそれを見て、愕然とした。


1・2・3・5枚目の写真だけ見れば、「知り合いのお姉さん」と誤魔化せたかもしれない。


でも、咲希子が指摘した4枚目の写真。


それは、私が雪ちゃんの髪の毛を掻き上げて、痣をあらわにしている物だった。


「もしかして、この写真のロングヘアーの女性、本当に津田部長……?こんな珍しい痣持ってる人なかなか居ないし、よくよく見てみれば、顔が立ちが津田部長よ」


咲希子が、画像を食い入る様に見ている。


今は後悔をしている場合ではなかった。


どうやってこの場を乗り切るか、そればかりが頭をグルグルする。


むやみやたら揶揄からかう、なんてするヤツじゃない事は分かってる。ここまで来たら勘の良い咲希子に誤魔化しは通用しないだろう。だったら下手に弁解するよりも、素直に打ち明けた方が良い。


「咲希子、あのね……」


そう思い直し顔を上げると、咲希子は自分が使っているパソコンをなぜか操作している。


「咲希子?」


「やっぱり……」


「え?」


「メール通知音をオフにしていたから気付かなかったけど、そのメール、アタシの所にも送られて来てる。と言う事はこれ、社内一括送信よ」


「……ウソ……」


咲希子の言葉を聞いた私は、愕然とする。


(そんな……そんな事をしたら雪ちゃんは……!)


私は、ガバッ!と立ち上がり、「咲希子、ごめん」と呟いて、秘書課を飛び出した。


後ろで「江奈!」と呼び止める声が聞こえたけど、私は止まらなかった。


エレベーターなんて待っていられないから階段を猛ダッシュで駆け降りる。廊下に出ると、社員達がパニック状態。どうやら社内一括送信は本当みたいだ。


「なんでこんな……」


なぜ、笹木はこんな事をしたんだろう?


もしかして、雪ちゃんが私と付き合っていると宣言してしまったから、雪ちゃんも標的になってしまったんだろうか。


途中『美園さん!』と何回も呼び止められたけど、咲希子同様、私は振り向きもせず走った。

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