変な光の正体 1
「大丈夫?落ち着いた?」
「……はい」
ここは、雪ちゃんのマンション。
私のアパートは危険と判断され、連れて来られた。
広いリビングに置かれている皮張りのソファーに座り、雪ちゃんが背中をポンポンと優しくさすってくれている。
「まさか、本当に盗撮してるだなんて……」
雪ちゃんの言葉に、ビクッと体が震えた。
私も、本気でこんな事をしているなんて、思わなかった。
ギュッと抱えた腕を握る。
「暫くはウチに居なさい。一人は危険だし、何かあった時にすぐに助けられるし」
「でも……」
確かに、雪ちゃんがそばにいてくれれば心強い。
けど、それ以上に雪ちゃんに迷惑をかけたくなかった。
「でもじゃないわ。決定事項よ」
真剣な眼差しを向けられる。
本当に心配してくれている事が、分かる。
「……お世話になります」
正直、あのままあの部屋に一人ではいたくなかった。なので、私はまた雪ちゃんに甘えさせてもらう事にした。
「よしっ!」
雪ちゃんが、大きくうなずく。
「とりあえず、対策は明日考えるとして、今日はもう休みなさい。部屋へ案内するわ」
スッと立ち上がり、手を差し出してくれる。
その手を掴み、私も立ち上がった。
「バスルームはここね。部屋は、このゲストルームを使って頂戴」
案内されたバスルームやゲストルームは広く綺麗で、私のアパートとは大違い。
これが格差か……。
なんて思いながら見ていた。
「キッチンは好きに使ってもらって構わないから。冷蔵庫の中身も、好きにして」
「ありがとうございます」
キッチンも流石、綺麗で広かった。
こんなキッチンで料理をしたら、楽しいんだろうな。
(あれ?)
最新のシステムキッチンに見惚れていたら、雪ちゃんがいない。
「雪ちゃーん……?」
キョロキョロと姿を探していると、雪ちゃんが何かを持ってリビングへと戻って来た。
「はいコレ、タオルと着替え。アタシの趣味で悪いけど」
そう言って手渡されたのは、ピンクのひらひらネグリジェ。
一瞬、「え?マジか」と固まってしまったけど、借りる身でそんな事は口が裂けても言えず、そのまま受け取る。
「あり、がとうございます……」
「どういたしまして。もう遅いし、お風呂に入ってサッパリして来なさい」
「あ、はい。じゃあ、お風呂お借りします」
ペコッと頭を下げ、さっき案内されたバスルームへと向かった。
バスルーム。
多分、平均よりも広い気がする。
湯船もゆったり浸かれる位の大きさで、洗い場に至っては、寝転がっても悠々余る位、広々空間。
「凄いなぁ……」
服を脱いで、シャワーで汚れをサッと洗い流し、チャポン……と湯船に浸かる。
「はぁ……」
丁度の温度で気持ちが良い。
ボーッと天井を眺める。
思い出したくないけど、嫌でも思い出してしまうあの写真。
パジャマ姿の私。
洗濯物を干している私。
友達とお茶をしている私。
出社前・帰宅時の私。
それはもう、色んな場面の私の写真。
ギュッと膝を抱える。
「なんで私がこんな目に……」
泣きそうになる。
でも、必死で堪えた。
泣いたら負けの様な気がして……。
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