変な光に付き纏われてます 5

今日の夕食だってイレギュラーな事だったから、急にどこかなんて、思い付かない。


(うーん……)


あっ、そうだ!


「じゃあ、ウチに来ませんか?昨日、クッキー焼いたんです。良かったら食べに来ませんか?」


高級なお肉には全く敵わないけど、少しでもお礼になれば、と思って提案する。


「いいの?」


「はいっ!雪ちゃんさえ良ければ是非!」


「じゃあ、お邪魔しようかな」


「はい!」


良かった。これでチャラにしようなんて思っていないけど、少しでもおもてなし出来れば……。


――ハッ!!


言った後で、気が付く。


(部屋、綺麗だったかな……)


今朝の部屋の状況を思い浮かべる。


(うん。大丈夫……のハズ!)


「車はどこへ停めれば良い?」


「え?」


突然話し掛けられ、ハッと顔を上げる。


見られてマズイ物は無かったよね?なんて考えている内に、いつの間にかアパートの前に到着していた。


「あ、えっと……」


大家さんから、『来客の場合はここへ停める様にして下さい』と言われていた場所を確認する。


幸いな事に空いていた。


「あの、ここの端へ停めて頂ければ……」


その場所を指差す。


「オーケー」


雪ちゃんは素早いハンドル捌きで、一発で駐車した。


(格好いいなぁ)


ちょっと見惚れる。今日は外見が「津田部長」だから、尚更。


「江奈?降りないの?」


「へ?……あ、す、すみません!」


雪ちゃんはとっくに降りていて、身を屈めながらまだ中にいる私に言った。


急いで降りて、部屋へと案内する。


「2階の端なんです」


階段を登りながら、あれ?と気が付く。


いつもならこの階段を登っている最中にあの光が見えるんだけど、今日はそれがない。


(う~ん……)


やっぱり、ただの勘違いだったんだろうか。


「どうぞ――」


とりあえずその事は置いておいて、雪ちゃんを中へ招き入れた。


「へぇ。綺麗にしてるのね」


「あんまり見ないで下さい」


雪ちゃんが、もの珍しそうに部屋をグルグルと見渡す。


「女の子の部屋って感じね」


「そうですか?」


特にそうは思ってなかったけど、そうなのかな?


置いてる物と言っても、ベッドとドレッサー位。ソファーとカーテンはピンクだけど。


「適当に座って下さい。今、お茶入れますね」


「ありがとう」


雪ちゃんは、そのピンクのソファーに腰を下ろした。


私は、クッキーとコーヒーを用意しにキッチンへ向かう。


(確か、来客用の良いコーヒーがあったハズ)


ガサゴソとキッチンの棚を探したけど、見付からない。


「あれ?おかしいな……」


廊下の納戸にしまったかな?


そう思って納戸へ向かう。



(――ん?)



不意に見た玄関の新聞受け。


何かが入っている様だった。


「なんだ?」


下にあったポストにはなんにも入っていなかったし、ウチは新聞を取っていない。


不思議に思い、新聞受けを開けてみる。


中には、茶封筒が入っていた。しかも、結構な厚み。


差出人は書いていない。


不審に思いながらソーッと中を覗くと、すごい枚数の何かが入っている。


「なんだ?」


取り出し、見てみると――。


「ひっ!」


衝撃の余り、小さい悲鳴を上げ、中に入っていた物を盛大に落としてしまった。


バサバサバサッ!と凄い音と共に、私の足下一面、それは広がる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る