第115話
「これで麺ができたな、どれどれ」
そう言いながら、ジューゴは出来たばかりのうどんを鑑定する。
【手打ちうどん】
小麦粉の状態から作られた手打ちのうどん。
力強く捏ねられているためコシが強く、噛み応え抜群だ。……鍋はどこだ? すぐに茹でて食べよう!!
製作者:不明 レア度:☆☆☆
「いつも思うが、この最後の感想みたいなのは誰が言ってんだ?」
「クエ?」
いつも鑑定すると、最後に必ず注釈のような感想が記載されている事に、怪訝な表情を浮かべるジューゴだったが、これに関して非表示設定ができそうにもないので対処のしようがなかった。
とりあえず完成した麺を眺めると、ジューゴは腕を組んで思案に耽る。
うどんを使った料理で思いつくのは、きつねうどん、カレーうどん、ぶっかけうどん、サラダうどん、味噌煮込みうどん、釜揚げ、釜玉、その種類は多種多様に存在する。
だが現状所持している食材や調味料を考えると作ることができる料理は限られてくる。
ジューゴは収納空間に保管している食材と相談しながら、とある一つの料理が頭に浮かんできた。
「焼きうどんだな」
焼きうどん、キャベツや玉ねぎ、ピーマンなどの野菜と肉が入った料理で、使う調味料も塩と胡椒と醤油と実にシンプルな料理だ。
幸いな事に焼きうどんで使えそうな野菜も持っているし、三つの調味料も持っていたので、さっそく調理することにした。
まず鍋に湯を沸かし、頃合いの所でうどんを投入する。
八分ほど茹でたものを、一度湯から上げておき、次にフライパンに火を掛ける。
焼きうどんに合いそうな肉と水で洗った野菜を、適度な大きさに切り分け熱したフライパンで炒めていく。
塩胡椒で味を調え肉と野菜に火が通ったら、先ほど茹でたうどんをフライパンに入れ具材と絡める。
十分に混ぜ合わさったところで、上から醤油を適量垂らしながらしばらく炒めていけば完成である。
【焼きうどん】
茹でた手打ちうどんに肉と野菜を加え、醤油で炒めたもの。
コシのあるうどんと肉と野菜が絶妙にマッチした一品。……個人的にはご飯と一緒に食べたいですね。
製作者:不明 レア度:☆☆☆
完成度的には星三つなのでもう少し改良の余地はありそうだとジューゴは判断するが、とりあえず試作品程度の調理のため、さっそく試食することにした。
「では、いただくとしよう」
「クエ!」
クーコと一人前の焼きうどんを半分こして、さっそく試食してみた。
口の中に入れると、野菜と肉の旨味がうどんに絡まり三位一体のハーモニーを奏でている。
醤油の風味と味もアクセントとして丁度良く、端的に言えば美味である。
「美味い! これでまだレア度星三つとか、星五つは一体どんだけ美味いんだ?」
「クエ」
クーコと共に星五つの焼きうどんの味を想像しながら、新たな料理に舌鼓を打つ一人と一羽だった。
それから、クーコが焼きうどんのお代わりを要求したため、さらに十人前の焼きうどんを作ることになってしまったのは余談である。
クーコが焼きうどん十人前を平らげ、膨れたお腹をポンポンと相撲取りのように叩いていると、何やら視線を感じたためその方向にジューゴが顔を向けた。
「あんたら、なにやってんだ?」
そこにいたのは、親方を筆頭に工房で働くNPCの従業員たちだった。
話を聞いてみると、なにやらいい匂いが給仕室から漂ってきたため、作業の手を止め現場に急行したら、クーコが大量の焼きうどんを頬張る姿が目に飛び込んできたらしい。
美味しそうに食べるクーコの姿と、醤油のいい香りのダブルパンチにより、仕事で腹が減っていた従業員にとっては文字通り垂涎の料理だった。
「兄ちゃん、頼む!」
「はぁー、いいか、一人前500ウェンな」
『うぉぉぉおおおおおお!!』
親方の短い一言で全てを理解したジューゴは、一人前500ウェンという高額を要求することで料理を提供した。
どうやら親方たちNPCの他にプレイヤーも何人か混じっていたようで、ジューゴはプレイヤーたちの牽制の意味も込めての500ウェンだったが、お腹を空かせた獣と化した者たちからすれば安い出費だった。
仕方なくさらに三十人前を追加で作ることになったが、そこは【時間短縮】を使ってものの数分で人数分用意することに成功し、ちょっとした小遣いを稼ぐことができた。
その後親方とフレンド登録を交わし、彼らがいなくなった後でフリーマーケット用にさらに五十人前の焼きうどんを作って出品しておいた。
価格は先ほど親方たちに提供した500ウェンという高額だったが、出品した瞬間に全てソールドアウトしてしまったらしい。
調理に使った給仕室を片付けた後、焼きうどんを提供した人たちからお礼を言われながら、ジューゴは工房を後にした。
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