第69話
次に確認する項目は手に入れた蘇生アイテムと称号だ。
チョビマツから説明があったが、改めて蘇生アイテム【不死鳥の心臓】を確認してみた。
【不死鳥の心臓】
不死鳥から入手できると言われている伝説級アイテム、詳細は不明。
……あれ? おかしいな、説明が載ってねえぞ。
いろいろとあれこれ考えてみたが、可能性として今思いつくのは三つだ。
一つ、チョビマツが嘘を言った可能性。
二つ、チョビマツは本当のことを言っているが、詳細情報として明記されていない可能性。
三つ、現在は使用不可能のため詳細情報が見れない可能性。
いずれの可能性にしろ、詳細な情報が不確かな状態でアイテムを使用するのは愚かな行為だ。
とりあえず、鑑定士のレベルは低いが鑑定を掛けてみるか……。
【不死鳥の心臓】
なんかめっちゃすごいアイテム、詳しいことはわからん。
「なんでやねん!」
突然フランクな詳細が表示されたため、思わず立ち上がり座っていたベッドに持っていたアイテムを叩きつけてしまった。
幸いな事に柔らかいベッドだったためアイテムは無事だったが、……めっちゃすごいアイテムってなんだよっ。
それが知りてぇから鑑定掛けてんだよ、こっちは……ちゃんと仕事しろ!
そんな俺の願いが届いたのか、それともレア度の高いアイテムに鑑定を掛けたためなのかは分からないが、鑑定士のレベルが2に上がった。
これは多分後者の方だろう……。
「とりあえず、詳細が分かるまでこのアイテムは使えないな。チョビマツの言葉を疑うわけじゃないが、万が一あいつの言っていたことが間違っていたら洒落にならんからな」
時には大胆な行動を取る事も必要だが、基本的に俺は石橋を叩いて渡るタイプの人間なのだ。
他人の言葉を鵜呑みにするほど愚かな人間でもないが、かと言って誰彼構わず疑うような人間不信でもない。
とある漫画のキャラクターが言っていた言葉がある。
“100%やれると確信した時だけ実行し、それ以外は待て”という言葉だ。今のこの状況にぴったりの言葉だと俺は思った。
不死鳥の心臓の確認はこれで一旦棚上げし、次は記念品として与えられた首飾りを見ていく事にする。
収納空間に不死鳥の心臓を戻し、記念品の首飾りを取り出し詳細を見てみたところ、こっちはチョビマツの説明した通り何の効果もない見た目だけの装飾品のようだ。
五センチほどの大きさの緑色に輝く綺麗な石で装飾品としてはよくありそうな作りだった。
たまに気分転換で装着するのも悪くないと思う程度のものなので、早々に収納空間にポイした。
「次は称号だな。まずは【武闘会の覇者】を見てみるか」
メニュー画面から称号を確認できる項目を選択し、詳細を確認してみた。
【武闘会の覇者】
フリーダムアドベンチャー・オンライン初となるイベント【冒険者たちの武闘会】で評価ポイント10000以上を獲得した者に送られる称号。
……だそうだ。予想はしていたが、何の変哲もないただの称号らしい。
チョビマツもそう説明していたため、大して期待はしていなかったのでこんなものだろうと結論付ける。
問題はもう一つの称号だ。
どういった経緯でそうなったのかは分からないが、【勇ましき者】が進化し【勇猛なる者】とメッセージでは出ていた。
……進化とはこれ如何に? そんな要素があるなどとはどこにも書かれていなかったが、果たしてどうなったのか。
【勇猛なる者】
幾つもの試練に耐え抜き、英雄としての力に目覚めた者に与えられる称号。
獲得条件:不明 発動効果:全パラメーターが常時20%上昇する。
……ktkr、キタコレ、やってきましたチートな称号。
進化したことから元の効果よりも優れた効果をもたらすことは想像できたが、全パラメーター二割増しは凶悪ですよ、奥さん?
思わず変なノリになってしまったが、それほどこの効果は破格のものだと俺は考えている。
今回のイベントで俺は自分の実力がどの程度なのか知ることができた。
ただでさえ、他のプレイヤーよりも頭一つ抜きん出た存在なのにもかかわらず、こんな称号まで手に入れてしまったら益々以って他のプレイヤーの注目を集めてしまう。
やはりもう始まりの街に留まらず、次のドゥーエチッタかその次の街に拠点を移すべきなのだろう。
世話になった人たちに挨拶をしないといけないな。
「とりあえずこんなところかな……」
手に入れた新要素を一通り確認した俺は、フード付き外套を身に纏い深めにフードを被ると部屋を後にした。
宿屋の店主に今まで世話になった礼を言い宿の外へと出た。
時刻は朝の時間帯が始まって三十分程が経過したくらいだ。
イベントの影響なのが、行き交う人々の量がいつもよりも多く動き辛い。
そのまま歩いていると、すれ違いざまにぶつかってきた男がいた。
“おっとごめんよ”という月並みなセリフを言いながら人ごみへと消えていった。
……なにか掏られたんじゃないかって? その心配はない。
このFAOでは収納空間というアイテム収納庫が存在しており、実際にアイテムを所持しているプレイヤーは極端に少ない。
精々が装備している武器や防具などで、お金や貴重なアイテムは基本的に収納空間にしまっているため盗難にあう事はほとんどない。
それ故に先ほどぶつかってきた男が何かを掏っていった可能性は皆無なのだ。
だがどうやら男の目的はそれだったようで、すれ違った数秒後に男から舌打ちするのが聞こえてきた。
そのまま雑多な人ごみをかき分けながら歩いていると、どこからか妙な視線を感じる。
しかもその数は一つではなく、複数だ。
(これは、プレイヤーだろうな。NPCが俺にこんな視線を向けてくる理由はないだろうし。……厄介だな)
ここまでこのゲームをプレイしてきて、いろんな人間と交流してきたからこそこの手のタイプの人間の目的は大体見当がつく。
可能性としてはパーティーの勧誘や腕試し目的のPvP、あとは個人的な注文や珍しいものだと弟子入りなどが挙げられる。
どの場合を取っても、面倒臭い事この上ないものだ。
こういった手合いは相手にするとこじれる可能性が高いため、逃げる体勢を整えつつ目的地である工房に向かう。
だが、俺の予想と反して今回の相手は勝手が違っていた。
確かにこちらを意識しているのは確実なのだが、ある一定の距離を保ったまま近づいてこようとしないのだ。
(PKでも狙ってんのか? いやFAOにはPKの概念が無いしな……第一俺だと知って戦いを挑んでくるほど無鉄砲な感じでもない)
今回のイベント戦で生産職主体だと噂されていたジューゴ・フォレストが、戦闘もこなせる実力派だと知れ渡る事となった。
あの最前線でトップクラスの実力を持つと言われたレイラやハヤトですら勝てなかった相手よりも遥かに強力なモンスターに苦戦したとはいえ結果的には勝利している。
実力としては間違いなくトップに躍り出たジューゴに戦いを挑もうとする奴はよほどの戦闘狂か、ただの馬鹿である。
だからこそ、相手の目的がはっきりしない今のこの状況がジューゴにとってたまらなく不安を煽っていた。
(これが、ストーカー被害を受けている女の人の気持ちってやつなのか? 確かにいい気分じゃねえな)
誰かに見られているという行為が、ここまで不快なものだったとは知らなかった。
だが現状直接的な行動に出てこない以上こちらとしても手を出すのは憚られる。
殴り合いの喧嘩と同じ理論で言うと、先に殴った方が悪いという考え方だ。
今回もそれと同じ理論で、明らかにこちらの行動を監視されているものの、なんの実害も出ておらずただ不快だということだけだ。
仮にここで俺が実力行使に出れば責任の是非は俺に非があるのは明らかで、運営からペナルティが課せられるだろう。
だからと言って、接触し問い詰めたところでとぼけられた場合、こちらとしてはそれ以上の手出しができないという状況になってしまう。
(接触してもダメ、だからと言ってこのままっていうのも気持ち悪しなぁー)
向けられる視線に不快感を感じながらも次の街に向かうため、世話になった人たちに別れの挨拶だけでも済ませておこうと思い、俺は工房までやってきた。
※今回の活動によるステータスの変化
【プレイヤー名】ジューゴ・フォレスト
【取得職業】
【剣士レベル37】
パラメーター上昇率 体力+228、力+160、物理防御+148、俊敏性+87、命中+68
【鍛冶職人レベル35】
パラメーター上昇率 体力+217、魔力+85、力+138、命中+52、賢さ+60、精神力+111、運+8
【料理人レベル33】
パラメーター上昇率 体力+165、魔力+107、力+72、命中+60、精神力+66
【盗賊レベル31】
パラメーター上昇率 体力+145、魔力+68、物理防御+85、俊敏性+142、命中+107、賢さ+67
【魔導師レベル2】
パラメーター上昇率 体力+2、魔力+8、命中+2、賢さ+7、精神力+5
【鑑定士レベル2】
パラメーター上昇率 体力+3、魔力+3、物理防御+3、命中+3、賢さ+3、精神力+3
【各パラメーター】 【補正後(20%)】
HP (体力) 843 → 848 → 1018
MP (魔力) 330 → 341 → 409
STR (力) 380 → 456(+82)
VIT (物理防御) 245 → 248(+125) → 298(+125)
AGI (俊敏性) 238 → 286(+75)
DEX (命中) 295 → 300(+48) → 360(+48)
INT (賢さ) 137 → 147 → 176
MND (精神力) 187 → 195 → 234
LUK (運) 28 → 34
スキル:時間短縮、鍛冶の心得、十文字斬り、身体能力向上、縮地、気配感知、隠密、盗賊の心得、地竜斬、天空斬
称号:勇ましき者→勇猛なる者、武闘会の覇者
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