第42話
給仕室を後にした俺はそのまま宿で一旦ログアウトし少し遅めの昼食を取る。
三十分ほど休憩ののち再びログインし舞い戻ってきた。
今日はまだガッツさんの防具も仕上がっていないだろうし鋼合金で剣の作成と行きたいところだが、剣士と盗賊のレベルも上げておきたい。
剣の作成かレベル上げか、いや待てよそう言えばクッキーと目玉焼き丼でクエックの卵を使い果たしてしまったんだった。
今日はレベル上げを兼ねた素材採集でもやりますかね。
強くならなきゃいけないとはいえ、ただ我武者羅にレベルを上げるのも生き急いでいる気がしてちっとも楽しくない。
ゲームというのは楽しむものであって時間に追われてプレイするものではないのだ。
準備のため適当な露店で必要なものを購入しいざ街の外へレッツゴー。
そこから敢えて特筆すべき出来事などは起こらず、出会ったモンスターを後ろから奇襲したり、敵の気配を察知しながらマップを歩いてみたりすることで盗賊のレベルを15にまで上げることができた。
素材アイテム自体もかなり手に入り、特にハーブステーキに使用するオラクタリアピッグの肉はステーキ換算で500枚以上確保できた。
もちろんこれでも全くと言っていいほど足りないのだがね、まったく。
西の丘にも赴き相変わらず香草ハーブ以外は未鑑定の野草と表示される野草を積みまくり100本以上を確保する。
香草ハーブもステーキを作るのに使用するためできるだけ探しまくり20本ほど集まった。
職業レベルが上がったお陰で基礎体力が向上しているためなのだろう、思ったほど時間が掛からず作業をこなせるようになっていることに感動する。
さて、今回のメイン的な目標であるクエックの卵の入手だが早速ベルデの森へと直行する。
森の入り口手前まで来た俺はあることを思い出しメニュー画面を開く。何かと言えば装備の変更だ。
新しくアップデートが実装されたことで以前使えなかったシルバー系の装備が軒並み使用可能となったのだ。
もっともアップデート以前でも使えたのだが他のプレイヤーの目もあったため公の場で身に着けることができなかった。
メニュ画面から装備の一覧を選択し、シルバー系装備をクリックし変更していく。
さあご覧あれこれが今の俺の装備だ。
【装備品】
シルバーソード
布の服
シルバープレート
シルバーベルト
革のズボン
シルバーレギンス
フード付きの外套
まあこんな感じでお強くなりました。
服とズボンがアップグレードしていないが、とりあえず今持っている装備の中で最強のものを装備した。
ちなみに剣は最近作った【秀逸なシルバーソード】ではなく最初にあのへぼナビゲーターから貰ったものを使うことにした。
早いとここの縁起の悪い剣を使い潰してやろうという魂胆で装備したので多少乱暴に扱っても問題はないだろう。
ってかあのナビゲーターと思ってこれから振り回すことにしよう。はい、決定。
防御力が底上げされたため多少の攻撃ならダメージを軽減してくれるようになるだろう。
攻撃力の高い武器も大事だが、自分の身を守ってくれる装備もまた必要不可欠なものだと改めて実感させられるものだ。
それに新しい装備って新しい靴を買ってもらった時のようになんかわくわくしてくる。早く使ってみたいものだ。
装備を新調し森に入るとすぐにベルデウルフの群れやベルデゴブリンの群れなどが襲ってきたため適当に戯れてノックアウト、撃破する。
やはり性能の高い装備だけあってものの数秒でモンスターたちが天に召されていった。
そのまま突き進み前回の記憶を頼りにベルデビッグボアと戦った巨木の空洞を駆け足で目指す。
モンスターと戦いつつ森を進むこと十分、目的の巨木の根元まで到着した。
前回同様大きく口を開けた巨木の入り口に入ると螺旋状のスロープが現れる。
時間を短縮するため疲労が蓄積しない程度に駆け足で行動するよう心掛けているためすぐに最下層へと到着する。
「おーい、いるかー?」
「クゥウェエエエエエエ!!」
「なっなんだこの声……ってうお!?」
地の底から轟くような声がしたと思ったら突如として俺の視界は何かもふもふしたものに遮られた。
どうやら柔らかい何かが俺の顔に纏わりついているようなので両手で挟み込み引き剥がす、すると。
「クエッ、クエッ、クエッ!」
「おお、お前か。ってかデカくなったなお前」
「クエッ!」
俺がそう言うと“キリッ”という効果音が似合うニヒルな顔を作ってドヤ顔を披露する。
お察しの通り俺に纏わりついていたもふもふの正体は額に剣で斬られたような斬撃のような模様のあるクエックだった。
あれからまだ五日ほどしか経過していないのに二倍くらいの大きさにまで成長していた。
もっともこの世界の一日は現実世界での6時間に相当するので、現実世界での五日はこの世界での二十日ということになるためこれくらい成長しても不思議はないか。
そんなことを考えていると突如クエックが翼を器用に動かしてアピールしてくる。
「クエクエッ」
「なんだ? 何を伝えたい」
「クエッ!」
どうやら俺がやって来た空洞唯一の出入り口を翼を使ってしきりに指差している。
おそらく俺が以前に約束した「大きくなったら一緒に冒険しようぜ」という社交辞令的な約束をしたのだが、推察するに「デカくなったから連れていけ」という意味だということは何となくだが読み取れた。
「デカくなったから自分も付いて行くということか?」
「クエ! クエ!」
「まあとりあえずその話はお前の親と相談してからだな」
というわけで大きな鳥の巣のようになっている場所にいる三羽のクエックの元に向かって歩いていく。
そこには親鳥クエックと他の子どもクエックがおりこっちに気付くと嬉しそうにはしゃいで歩み寄ってきた。
簡単な挨拶をすると早速額に傷のような模様のあるクエックを外に連れて行っていいのか聞いてみると。
「クエッ、クエッ」
「そうかやはりまだ早いようだな……。だってよ」
「クエェェェェ……」
どうやら独り立ちするにはまだ早いようで親鳥クエックは首を左右に振り否定の意思を見せる。
それを見た額に模様のあるクエックは頬を膨らませながら不満の声を漏らしていた。
「ところで話は変わるが、またクエックの卵を分けてもらえないだろうか?」
「クエッ、クーーエーーーー」
俺がそう頼むと了解したとばかりに仲間を呼ぶ叫び声を上げる。
すると瞬く間に数十羽のクエックが集まり、卵を爆産し始めた。
しばらく子どもクエック達と遊びながら親鳥クエック達が卵を産み終わるのを待っているとようやく産み終わったようで俺を呼ぶ声が掛かった。
「おおー、こんなに大量に……。こんなに貰ってホントにいいのか?」
「クエッ!」
そこには少なく見積もっても150個以上の卵が産み落とされておりまるで養鶏場の様相を呈していた。
クエック達がいいというのでまとめて収納空間へと入れていく。
結局今回貰ったクエックの卵は全部で230個ほどになりホントにこれだけもらってもいいのだろうかと不安になってくる。
「ありがとう。これだけあればしばらくはもつだろう。また足りなくなったら頼むな」
「クエックエクエクエ!」
そう言うと俺はそのまま帰ろうとしたが、次の瞬間クエック達が口を大きく開けながら「クエーーー」と声を上げた。
こうなるとは思っていたのである程度食材は持ってきてはいるが果たしてこいつらの胃袋を満たせるのだろうか……。
結果的にはギリギリだったが何とかクエック達には満足してもらえたようで何よりだった。
次はもっと大量に買い込んでくる必要があるかもしれない。
その後クエック達に別れ挨拶をした後、資材の補充のため街へと帰還することにした。
帰り道は【隠密】を使用して誰にも見つからないように行動することで盗賊のレベルを上げながら街へと戻る。
盗賊のレベルも順調に上がり現在はレベル18にまで上がっていた。次は停滞している剣士のレベルをさらに上げるために遠征でもしようかな。
※今回の活動によるステータスの変化
【プレイヤー名】ジューゴ・フォレスト
【取得職業】
【剣士レベル24】
パラメーター上昇率 体力+150、力+99、物理防御+97、俊敏性+48、命中+40
【鍛冶職人レベル25】
パラメーター上昇率 体力+155、魔力+48、力+92、命中+25、賢さ+26、精神力+64、運+6
【料理人レベル29】
パラメーター上昇率 体力+149、魔力+91、力+64、命中+52、精神力+54
【盗賊レベル18】
パラメーター上昇率 体力+88、魔力+38、物理防御+46、俊敏性+90、命中+65、賢さ+37
【各パラメーター】 【補正後(10%)】
HP (体力) 588 → 630 → 693
MP (魔力) 220 → 247 → 272
STR (力) 259 → 265(+30) → 292(+30)
VIT (物理防御) 137 → 155(+56) → 171(+56)
AGI (俊敏性) 123 → 147(+15) → 162(+15)
DEX (命中) 167 → 190(+16) → 209(+16)
INT (賢さ) 63 → 73 → 80
MND (精神力) 122 → 128 → 141
LUK (運) 26 → 29
スキル:時間短縮、鍛冶の心得、十文字斬り、身体能力向上、縮地、気配感知、隠密、盗賊の心得
称号:勇ましき者
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