第41話
工房の給仕室へと到着した俺は早速準備に取り掛かることにした。
今回の主役となる食材、それは【小麦粉】だ。
米を手に入れた時からずっと使わずに今まで取ってきたがようやくその時が来たのだ。
使用する材料は小麦粉、砂糖、そしてクエックの卵の3つだ。
ちなみにクエックの卵の大きさはニワトリの卵よりも二回りほど大きくまるでダチョウの卵のようだ。
まずボウルのような器に小麦粉と砂糖を一対一の割合で混ぜ合わせていきそこに卵を投入し生地を作成する。
熱したフライパンに油をひき一口サイズほどの大きさになるように生地を垂らしていく。
火加減を弱火に調節し、生地を焦がさないよう少しずつ加熱していき、フライパンと接している面が固まったらひっくり返す。
その作業を数度ほど繰り返し二十分ほどじっくりと時間を掛けて調理していき両面がこんがりと焼ければ完成だ。
【クエックの卵のクッキー】
クエックの卵を使用した実にシンプルなクッキー。
シンプルであるが故に味も素朴で小腹を満たすのにちょうどいい。
製作者:非公開 レア度:2.5等級(星二つ半)
早速味見してみたが問題はなく普通に美味しかった。
その後何度か試行錯誤して作ってみたが今ある材料で2.5等級以上のレア度を出すことは難しく途中から【時間短縮】を使って量産する作業に切り替えた。
その結果200個ほどのクッキーができたので150個ほどフリーマーケットに出品しておいた。ちなみに値段は1個50ウェンだ。
調理法がシンプルで簡単なためこれくらいの値段設定が妥当だと判断したが次の料理が出来上がる頃に全て売り切れてしまったのは余談だ。
「次は卵料理だな」
次にクエックの卵自体を使用した料理に取り掛かろうと思う。
卵料理と言ってもいろいろあり目玉焼き、スクランブルエッグ、プレーンオムレツなど種類が豊富だ。
だし巻き卵も作りたいところだがそのためには昆布とかつお節で取った一番だしとみりんが必要になってくるな、早くお目にかかりたいものだ。
今回最初にクッキーを作ったから腹持ちのいい卵を使ったご飯ものでも作ってみるか。
そうだな、卵料理と言われて最初に出てくるのはやはり目玉焼きだ。
作り方もシンプルだし、焦がさないよう注意すれば誰でもそれなりのものができるお手軽料理、それが目玉焼き。
今回はこの目玉焼きをごはんをよそった丼に乗っけて【目玉焼き丼】を作ってみようと思う。
そうとなれば早速調理をしようじゃないか。
まず熱したフライパンに油を敷きそこにクエックの卵を一つ投入する。
しばらく弱火で加熱し底面が固まってきたらフライ返しを使ってフライパンにくっついている部分を剥がしていく。
その後じっくりと焦がさないように弱火で加熱すること数分、白身の部分が全て焼きあがる。
次に肝心の黄身の部分だが、俺個人としては卵の黄身部分は半熟派ではなく固まっていた方がいい派なのだが、今回は丼ということもあり半熟目玉焼きで行くことにする。
ここで目玉焼きの焼き方としては主に三種類存在する。
片面だけを焼く方法と両面を焼く方法、最後にフライパンに蓋をして蒸し焼きにする方法の三つだ。
片面焼きは英語でサニーサイドアップと呼ばれ、両面焼きはひっくり返すことからターンオーバーと呼ばれる。
ちなみに蒸し焼きは某有名グルメ漫画で紹介されていた方法で公式の焼き方はサニーサイドアップとターンオーバーのみだ。
目玉焼きの焼き方の知識を頭の中で思い描きながらさらに数分加熱していき、良きところで塩と胡椒を適量振りかける。
目玉焼きは基本的に香ばしい香りというものはあまりしないのだが、それでもできた目玉焼きはとても美味しそうだ。
【クエックの目玉焼き】
クエックの卵を一個使って作られた目玉焼き。
塩と胡椒で味付けられたシンプルなものだが余計な調理を加えていないので雑味がない。美味。
製作者:非公開 レア度:3等級(星三つ)
これで目玉焼きは完成したが、次は米を用意する。
丼にこれでもかと飯を入れその上に目玉焼きを乗せる。
いつぞやの露店で購入しておいた野菜類に玉ねぎがあったのでそれを適当な大きさに切り炒める。
焦げ目が付いたところで醤油と砂糖を加え甘じょっぱいタレを作り出来上がったら目玉焼きの上からかける。
【目玉焼き丼】
クエックの目玉焼きと米を組み合わせた日本人にはたまらない一品。
玉ねぎの食感と甘じょっぱいタレが絶妙なハーモニーを醸し出す。
製作者:非公開 レア度:4等級(星四つ)
おおー、出た出た。出ました星四つで……うん、やめておこう。
とにかく料理で初めてとなる4等級が出た。
これはかなり味にも期待が持てるのではないだろうか。では早速いただこう。
目玉焼きを箸で割って、米と一緒に口に運ぶ。
口の中に入れた瞬間卵のぷりぷりとした食感に米の粒の食感が折り重なり口の中でぶつかり合う。
だが喧嘩することなくその二つの食感が調和し見事なハーモニーを奏でている。
玉ねぎに使った甘じょっぱいタレがアクセントになって美味の一言に尽きる。
「マジでうめえ、これリアルに戻ったら作ろうかな」
そう思わず呟いてしまうほどにこの目玉焼き丼は大成功というべきものだった。
早速時間短縮を使って量産するがクエックの卵の在庫が少なく40個程度しか量産することができなかった。
とりあえず試験的な意味も込めて、30個をフリーマーケットに出品し値段も少々お高めの980ウェンに設定した。
当然だが一人につき購入できる数量は1個という制限を付けるのも忘れてはいない。
その後、俺の預かり知らぬところで目玉焼き丼は大好評となり掲示板やチャットで大いに盛り上がりを見せた。
だが30個という数量の少なさと使う食材がクエックの卵ということもあり、目玉焼き丼はセルバ百貨店の幻の料理としてプレイヤーの中で知れ渡っていくことになるのだった。
料理人のレベルも順調に上がり29にまで上がっていた。
30になった時に何か新たなスキルを覚えるのか少し楽しみではある。
とりあえず今日の料理はここまでにして一旦ログアウトをするため給仕室を後にするのだった。
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