第31話
さあさあ、やってまいりました。 鉱山ほりほりのお時間です。
とまあちょっとおちゃらけた感じで言ってみたものの俺にはやらねばならぬ依頼があるのだ。
さっさと鉱石を手に入れるとしよう。
現在俺たち一行は鉱山で出会ったロックフェルスという見た目が完全にば〇だん岩なモンスターと、鉱山の採掘作業を生業とする作業員の責任者である棟梁と共にロックフェルスが掘り当てた空洞に向かっていた。
目的は言うまでもないが、鉱石の採掘だ。
この鉱山に棲みついたモンスターの調査に対する対価として必要分の鉄鉱石を持って帰ることを棟梁から許可をもらって掘りに行くところなのだ。
勝手に俺たちが調査したこととはいえ棟梁の立場としては問題が解決した事に変わりはないため、特別に報酬を支払うという運びになった。
「それにしてもあちこち掘り散らかしてますね」
「そりゃあ十数年も掘りまくってればこれくらいの規模にはならぁな」
「せやけど、これでもまだ掘れる場所はぎょうさん残っとるんやで?」
「どんだけの規模なのかまるっきり見当もつかないわね」
「そうだな、鉱山と聞いていたが改めて見るととてつもない大きさだったわけだ」
俺、棟梁、ロックフェルス、アカネ、カエデの順にそれぞれが意見を言いながら目的の場所に進んで行く。
数分後、先ほどロックフェルスが掘り当てた空洞まで戻ってきたが、その光景を改めて見るととても神秘的なものであった。
キラキラと光り輝く鉱石たちはまるでクリスマスツリーに飾り付けられた装飾品のように坑道を引き立てている。
棟梁もその光景に感嘆の声を漏らし、感動に浸っている様だった。
「これだけの鉱石を見るのも数年ぶりだな。この光景を見るたびに年甲斐もなく、わくわくしちまうぜ」
「じゃあ棟梁、約束通り鉄鉱石を貰っていくけどいいよな?」
「ああ構わねえぜ、何だったら他の鉱石も好きなだけ持ってけ!」
ではお言葉に甘えるとしようか。
ようやく鉱石を採掘することができる、そう思いながら俺は棟梁から借りたツルハシを片手に鉱石採掘を開始した。
ちなみにだがカエデさんとアカネの二人も俺の鉱石採掘を手伝ってくれることになり二人が掘った鉱石は全て俺にあげるとの事だった。
少しは持っていってもいいと言ったが、こちらがお願いして同行させてもらっているのだからせめてこれくらいはということだったので遠慮なく二人の申し出を快諾した。
「さあーいっちょ頑張って掘るとしようかな!!」
そう言ってアカネはツルハシを壁にカンカンと突き立てながら勢いよく掘り進んでいた。
アカネとは対照的にカエデさんは地面に転がっている鉱石を拾い集めて回っている。
二人の仕事ぶりを確認後俺も採掘に乗り出すことにした。
「とりあえずここら辺から掘ってみるか」
適当に選んだ壁に向かって俺はツルハシを突き立てた。
カンカンという音を立てながら石が崩れていき所々に鉱石が顔を出す。
一定のリズムで掘り進んでいくと一際大きな音でカンという音が鳴り響いた。
どうやら固い層にぶつかったらしくそれ以上の掘削は困難だったため場所を移すことにする。
その後も順調に掘削作業は続きかなりの量の鉄鉱石と銅鉱石を手に入れることができた。
ここでRPGならばミスリルなどのレアな鉱石を期待するところだが、ロックフェルスの情報ではこの鉱山からミスリルが生成されることはないらしい。
「というかミスリルってあるのか?」
「あるで、せやけどこの鉱山からは出えへんやろな」
「そうか、残念だが仕方ない」
それから全員で鉱石を掘り出し、必要以上の鉱石を手にする事が出来たため街に戻ることにした。
「棟梁、今回はいろいろお世話になりました。また鉱石が必要になったらここに戻ってきますので、その時はよろしくです」
「こっちこそモンスターの一件を解決してもらったばかりか、まだ鉱山が死んでねえと教えてもらえたんだ。次来るときはもっと賑やかになってると思うからいつでも来るといい」
いろいろあったが何とか丸く収まってよかったと思いつつ目的を果たした俺は鉱山を後にした。
帰りの道中も何匹かモンスターが出現したがアカネが一人で倒してしまうというアカネ無双が発動してしまい結局俺の職業レベルは上がらなかった。
まあ戦ってる時の彼女の胸が物凄く躍動していたので一応男である俺も少しは眼福になった……かな?
とにかくいろいろあったもののようやく街に戻ってこれた俺たちのパーティーはこれにて解散することとなったのだが……。
「じゃあ、俺は工房に戻って依頼を片付けるとするよ」
「あっ……」
「うん? なんだおっぱいオバケ何かやり残したことでもあんのか?」
「おっぱいオバケ言うな。別にやり残したことはないが」
「そうかじゃあこれで解散だな」
「……」
俺の言葉に明らかに落胆の色を見せるアカネに見かねたカエデが提案をする。
「ジューゴ君、やっぱり私たちのパーティーに――」
「すまないがそれは無理だ」
「どうしてもダメかい?」
「悪いな」
「無理に誘うつもりもないし、こればっかりは仕方ないさ。だが、気が変わったらいつでも言ってくれ」
その後カエデさんは「ギルドに今回の一件を報告してくる」と言ってギルドに向かって行った。
アカネと言えば相変わらず俯いたままだったのが気になるが、次会うときは元気になっていて欲しいものだな。
鉱石を手に入れるという目的を果たしたがこのまま作業に戻るには時間が経過しているためここで一旦区切りを付け俺はいつもの宿屋でログアウトしようと宿に向かった。
「あの……じゅ、ジューゴさん」
「ん? ああ、君か」
宿屋に向かおうとしたところ、顔見知りの女の子に声を掛けられた。
艶のある金髪に栗色の目を持つ中学生くらいの女の子で名をミーコという。
年不相応なけしからん膨らみがブルりと揺れて見る人が見ればその気になるのだろうが、残念中学生は俺の守備範囲じゃない。
そんなことを考えているとミーコが問いかけてくる。
「さっきの人たちはその、ジューゴさんのパーティー仲間なんでしょうか?」
「いいや、今回たまたま組んだだけだよ。俺は基本ソロでプレイしたいと思ってるしね」
「そ、そうですかっ」
どことなく声色が嬉しそうな感じだったがそこには触れず少し雑談をして別れた。
彼女もまたソロや野良パーティーでプレイしているらしくどこか決まったパーティーに所属できればなと愚痴っていたため俺はカエデたちを紹介してみた。
ギルドにカエデたちが向かったことをミーコに伝えると「わかりました。 行ってみますね」と答えたので気が合えば彼女の悩みも解決するだろう。
とこの時の俺はそう思っていたのだが、その考えが甘いものだったと痛感するのはもうしばらく経ってからの事だった。
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