幕間 「動き出す最前線攻略組」



 ここは始まりの街から数えて二つ目の街その名は【ドゥーエチッタ】、その街のとある宿の食堂に一組の冒険者パーティーがいた。

 彼らのパーティー名は【ウロヴォロス】、かつて数多のMMORPGの高難度クエストを最速で攻略したというさまざまな伝説を持つ最前線攻略組の一角である。



「このフリーダムアドベンチャー・オンラインが配信されてもうそろそろ一週間だな。それでまだ二つ目の街にしか到達できんとはやはり連続ログイン制限がネックになるか」


「仕方ないわよ、ゲームのやり過ぎで過労死なんてカッコ悪い死に方なんて誰も望んでないだろうし、何より一気に攻略するよりも少しずつやっていった方が楽しいでしょ?」


「……そんなものか?」


「ハヤト、お前は焦り過ぎだ。もっとゲームを楽しんだらどうだ?」


「そうだよ~、じゃないとまたやることなくなっちゃうよ~」


「……」



 テーブルの椅子に座り会話をする人物は四人、金髪碧眼を持つハヤトというリーダー格の男。

 魔法のドレスに身を包んだ妖艶と魅惑が服を着ているかのような女魔法使い。

 重鎧に身を包んだ前衛職丸出しの男にファンシーな出で立ちの女の四人だ。

 会話の内容はこのゲームのシステムに関する愚痴のようなものが多く目立っていたがそんな彼らの会話を遮る出来事が起こる。



「大変っす大変っす、ハヤトリーダーこれ見てくださいっす!」


「何だ、チェリス騒々しいぞ。また女にでも振られたか?」


「違うっす、確かに女には振られたけど……ってそんなことはどうでもいいっすこれ見てくださいっっ!!」


「これは?」



 そこに現れたのは五人目のメンバーであるチェリスという男だ。

 チェリスが差し出したのは一本の鉄の剣だった。

 それがただの鉄の剣であれば他のメンバーの興味を引くことはなかっただろう。

 だがその鉄の剣の性能は通常であれば考えられないほどの性能を持っていた。



「なっなんだこの剣は、攻撃力24だと!?」


「おいチェリスどっから奪ってきた、ちゃんと持ち主に返して来いよ?」


「それだけじゃないよハヤト~。この剣耐久値も通常の鉄の剣の倍くらいあるし~」


「どうやって奪ってきたのかしらー?」



 それぞれに反応を示すが総じて言えるのはチェリスが正規のルートでこの剣を手に入れていないと勘ぐっていることだ。

 そのことに心外という表情を顔に張り付けながらチェリスはこの剣を手に入れた経緯を話す。



「なんで俺が誰かから奪ってきた前提で話が進んでるんすか!! ちゃんと装備屋で売られてたものを買ってきたっすよ~」


「こんな剣が売られていただと? 詳しく話せ」



 実はこのチェリスという男は死に戻りを経験したときたまたま始まりの街に用があったため宿に泊まっていた。

 その状態で最前線攻略中のこのドゥーエチッタのバトルフィールドで死んでしまった。

 それにより始まりの街に強制送還されてしまいパーティーと分断されていたのだ。

 パーティーが一人欠けた状態での攻略は困難を極めるとして彼が戻ってくるまでこのドゥーエチッタで足止めを食らっていたのだ。



「実は始まりの街のとある装備屋で売られてたんすけど、性能は見た通りのものなんすよ」


「馬鹿な! 通常鉄の剣の攻撃力は18、だがこの剣の攻撃力は24もありやがる。しかもベルチェの鑑定によれば耐久値も通常の倍もある。そんな代物をNPCが作れるわけないじゃないか!」


「作ったのはNPCじゃなくてプレイヤーなんすよ、多分っすけど」


「それこそあり得るのかしら? 配信されて日が浅いにもかかわらずこれほどの武器を作り出す生産職のプレイヤーがいるなんて」


「ジューゴ・フォレスト……何者だ?」


「わかんないっす。ただプレイヤーであることは間違いないと思うっすけど……」



 そうチェリスが答えると急に静寂がその場を支配する。

 そして、しばらく続いた沈黙を打ち破ったのはリーダーのハヤトだった。



「アキラ、ジューゴ・フォレストが何者なのか探ってきてくれ。使えそうならこちら側に引き込む」


「全くハヤトは強引なんだから、そのジューゴ・フォレストっていう人にも都合があるでしょうに」


「とにかく奴が只者でないことは確かだ。勧誘できなくても正体が知りたい」


「はぁーわかったわよ。行けばいいんでしょ行けば」


「ってアキラさんがいなくなったら攻略はどうするんすか?」


「わたしたちで進めていくしかないでしょ~、それはそれで楽しいと思うけど~?」


「うむ、アキラがいなくなるのは正直痛いがハヤトが決めたのなら俺はそれに従うまでだ」



 話が落ち着いたところでアキラと呼ばれた女魔法使いは椅子から立ち上がると、そのまま宿の出入り口まで歩いていこうとする。



「アキラ、頼んだぞ」


「はいはい、了解」



 そう短く答えるとアキラは宿を後にした。

 その後残ったウロヴォロスのメンバーはアキラの抜けた穴を埋めるべく今後の攻略について話し合った。

 いよいよジューゴ・フォレストの名が最前線攻略組のプレイヤーに知られることとなった。 今後彼はどうなってしまうのか?










 【作者のあとがき】



 はいはいどうもです。 こばやん2号です。

 第三章もつつがなく終わり感無量の気持ちでございます。

 ここだけの話この章に出てくる【鍛冶】の表現方法にとても苦労しました。

 二章の料理はなんとなく想像できますが実際鍛冶作業なんて見た事ないですからね。

 


 あと最後に出てきたジューゴに悪態を付くプレイヤーがいましたよね。

 他のキャラクターは俺の想像で書いたフィクションのキャラなんですが、実はあのキャラだけ実際俺が出会った現実の人物がモデルになってるんですよね。

 つまり奴だけフィクションではなくノンフィクションだったりします。



 最近なろうの方で読者の方からちょくちょく感想をいただいたりするのですが、結構突っ込まれたくないところを突っ込んでくるので、返答に困ったりしてます。

 まあそれでも感想を書いてくれることはありがたいのですがね。



 アルファポリスはアルファポリスで感想が書かれないのでそれはそれで困ったりしてますが……。

 まあとにかく無事に三章が終わりいよいよジューゴ・フォレストの名が広く知られていくことになります。

 今回の幕間で最前線攻略組も動き出したようなので果たして第四章でジューゴ君はまったりのほほんプレイを維持できるのかそこに注目して次回作をご期待ください。

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