第78話 読心術無効化
「正体は怪獣かよ」
ナギは『飛行(フライ)』の魔法で、空に浮遊しながらバアルを見た。セドナ、エヴァンゼリン、アンリエッタ、クラウディアも『飛行』で浮遊しながらバアルと対峙する。
既に全員の体力・魔力は限界近くまで消耗していた。
ナギは神剣〈斬華〉を握りしめた。
「メニュー画面!」
『なんでしょうか?』
「今のバアルは、読心術を使えるのか?」
『バアルは、ナギ様の無形(むぎょう)で、パニックになり、発狂状態になっています。今のバアルは読心術を使えません』
「バアルは、今、読心術を使っていない!」
ナギがエヴァンゼリン達に叫んだ。
「……勝機あり」
アンリエッタが呟いた。同時に、バアルめがけて魔法を無詠唱で放つ。
『風の女神(アウレリア)の睦言(グロス)』
数千の風の刃がアンリエッタの魔力で発現し、バアルの巨躯を切り刻んだ。
「ガぁぁあああああああああああ!」
バアルが絶叫して50メートルを超える巨体を揺るがす。
「シィっ!!」
ナギが電撃化して、バアルに数十の斬撃を打ち込む。バアルの肉体を構成する数十の蛇、黒い羽が切り刻まれて宙空に飛ぶ。
クラウディアの聖槍、エヴァンゼリンの聖剣の斬撃。それらがバアルの肉体を切り刻み、抉り取る。
バアルは苦痛にのたうち、『流星(メテオラ)撃(ビアルビス)滅陣』の魔法を解除した。
魔法を唱えるだけの集中力を維持できなくなったのだ。
バアルは本体を現したことで、その戦力を圧倒的に向上させた。
だが、同時に心を読む力を失った。バアルの読心術には冷静さと集中力が必要だった。
ナギの『無形』を恐れ、発狂状態になったことがバアルの失敗だった。
バアルはのたうち回った。苦痛に喘ぎ、鮮血を吹き出しながら暴れ回る。そして、無造作に周囲に魔力弾と魔法を撃ち放つ。
手傷をおっても、罪劫王バアルは尚、強かった。
バアルの魔力の衝撃波が地面を抉り、無造作に放つ、魔力弾、電撃、火炎の魔法が、ナギ達をかすめる。
(手負いの獣と同じだ。手強い!)
ナギはバアルの放つ魔力弾を寸前でかわした。
(命中したら即死するレベルの威力。さすが罪劫王だけある)
「ナギ!」
エヴァンゼリンが叫んだ。
「バアルは君が仕留めろ! 僕らは結界を張ってバアルを逃がさぬようにする!」
エヴァンゼリンの指令にナギは頷いた。
エヴァンゼリン、アンリエッタ、クラウディア、セドナはバアルを虜感で、魔力で結界を張った。
バアルを逃がさぬように、同時にバアルの魔力を押さえ込んで動きを封じる。
「ガアぁああああああああああ!」
バアルが地獄のような咆吼を発した。鼓膜が破けそうな音量。
対峙するナギ達の身体が痺れる。
ナギは、空中に浮遊したまま〈斬華〉を晴眼に構えた。
「決着をつけよう。罪劫王バアル」
ナギとバアルが、同時に動いた。
ナギが雷と化した。軍神オーディンの雷撃を纏ったナギは〈斬華〉とともに、バアルに吶喊した。
数秒で、数千の斬撃をバアルに浴びせる。
バアルの肉体から、200を超える悪魔と魔獣が切り刻まれて消滅する。
バアルが絶叫を上げて巨体を震わせる。
エヴァンゼリンが聖剣でバアルを切り裂き、クラウディアが聖槍でバアルの肉体を抉り取る。
大魔道士アンリエッタが、無詠唱で『黒(マーブロー)き抉れる棺(モース)』を発動させる。
轟音が弾けた。
超重力で敵を圧殺する重力魔法『黒(マーブロー)き抉れる棺(モース)』が、バアルの巨躯の半分を抉り取って消滅させた。
「ギャアアアアアアアアアアアア!」
バアルが悲鳴を上げた。バアルを構成する悪魔と魔獣が消失する。
「ナギ! 今!」
アンリエッタが叫んだ。
その時、既にナギは動いてた。
神剣〈斬華〉が、閃光とかす。
津軽真刀流奥義:《|雷業(らいごう)》。
袈裟斬り、逆袈裟、振り下ろし。三つの斬撃が同時にバアルの巨躯を切り裂く。
即座にナギは神剣〈斬華〉をふるった。
《軍神(オーディアンズ・)の使徒(マギス)》によって、〈斬華〉は神の電撃を付与されていた。
神剣〈斬華〉から巨大な白い斬撃が飛んで、バアルを切り刻む。
20以上に分断されたバアルの巨躯が、電撃で灼かれる。
バアルの巨躯は白い稲妻で灼かれた後全身が黒い霧とかして蒸発し、みるみるうちに縮小していった。
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