第二十話 アルスと邂逅

 その後のリディの容態は安定していた。

 体力の減退もなく、すぐに歩けるようになっていた。

 ただ、数メートル歩くだけで大量の汗を流して息切れていた。


「まるで病気の後みたい。ベッドで安静にしなくていいだけマシだって、ミフィリアは言ってたけれど」

「肩で息しているぞ。休憩したらどうだ」

「だめよ。少しでも歩いてなきゃ、身体が本当になまってしまう。……弱くなるのは怖い」


 リディはアルスのメイドである前に剣士だ。

 弱くなることの恐怖というものが、やはりあるのだろう。

 だけれども、だからこそとジェランは言った。


「リディ、今回は後方支援して通信で俺たちをサポートしてくれないか」

「本当は、今すぐその減らず口を叩き割りたいけれど、……そんな元気もないのよね。こんなときに償いも出来ないなんて」

「もう償いならできてるよ。普通なら死ぬはずだった魔獣ロードとの切断から、帰ってきたじゃないか。あれ以上の罰はないだろ」

「確かに、内心はいつ死ぬか分からなかったし、蘇生したとしてもすぐ死ぬような恐怖だったけど」

「君の案内は必要だ。アルスお嬢様を救う鍵なのだから」

「分かったわ。でも気をつけてね」


 ジェランは頷いた。

 リディから話してもらった情報の中には、ロメリア家長女アビゲイラのこともあった。

 彼女は魔獣王の幹部の一人で、恐怖により人を支配することに快楽をえる性格なのだと。

 あのときリディを狙撃しようとしたのは、アビゲイラに違いない。


 弾丸を防いだシズカによれば、弾道は恐ろしいほど正確で引き際も見事だったと。手練れであっても見逃さない自信があるという、彼女にここまで言わしめるのだから相当だ。

 数日は経ったので、みんなの体力も回復した。

 これで準備はすべて整った。

 転移の石碑に、ジェラン・ミフィリア・マユ・シズカが集まった。

 転移先の近くに、あの始まりの場所がある。

 おそらくここから先は、チュートリアルじゃなくてラスボス戦になるかもしれない。

 目的は、アルスを救い出すことだ。

 アビゲイラとは、あくまで古代魔法を解くためのターゲットだ。

 

「シズカ、向こうの様子は?」

「問題ないわ。警備は厳重だけれど、ターゲットはふたりとも動いていない」

「古代魔法を解く手かがりは?」

「アビゲイラで間違いない」

「そうか。ミフィリア、マユ。準備は出来ているか」

「「もちろん」」


 ジェランは手を掲げて、石碑を起動した。

 一瞬で転送した先は、陰鬱な森の中だった。

 リディに通信してここからはナビをしてもらう。

 シズカは周りを見て訝しんでいた。


「森の様子が変わっている?」

『覚えているのか!?』

「これくらい出来なきゃ、暗殺者なんて務まらないよ。でもどうしてだ」

『ここの群生すべてが、魔獣の影響下にあるの』

「森林よこれ? 魔獣王は神か何かなの』

『そう思わせるのが、奴らの手よ。ほとんど恐怖支配だけど。それでここは奴らの実験場――』


 リディは通信越しでぶっきらぼうに言うと、黙ってしまった。

 どうしたのかと聞こうと問いかけてみたが、なんでもないと返されてしまった。

 ジェランたちは周りに警戒しながら、森の奥を進むことにした。

 ここは規則性の変化があり、関係者たちにはそれが知られているそうだ。

 だが何も知らない者がここを通れば、迷うか二度と同じところにたどり着けないかのどちらかだ。

 幸い、数日を掛けてゆっくりと木々が入れ替わるらしい。

 シズカにとってはすっかり変わった道だったが、ジェランたちは初めて歩くのでそこまでは違和感がなかった。

 それでもリディがいなかったら、シズカが単独で動いてしまっていたかもしれない。


「ねえあの木、うごめいてこっち見ている気がする」

『心配しないでミフィリア。全部ハッタリよ。もしも木に攻撃能力があるなら、とっくに蜂の巣にされている』

「う、うん」


 森を抜けると、ロメリア家の別邸が見えてきた。

 人が住んでいるとはとても思えない、シダやツルが壁にびっしり張り付いていて、ここからでもヒビが走っている箇所が見えた。

 みんなは、すでに緊張でかなり疲労していた。

 かえって何かが起こってくれたほうが、多少なりとも発散できたかもしれない。

 特殊訓練を受けたジェランとミフィリアはともかく、マユとシズカが心配だった。

 マユに話しかけると、肩から息をしているように見えた。


「無理をしていないか? 今なら魔法の結界内で休憩ができるぞ」

「大丈夫。でも」

「でも?」

「肩がこってきて」


 無理もない、とマユの爆乳を見て同情した。

 声をかけながら背中を触ってみると、ヴァンプレス越しからでも分かるくらい背中が張っていた。

 マユに軽めに上半身をほぐす方法を教えた。

 座ってゲームをやるときよくやっていた、腰を固定して肩を左右にひねるストレッチだ。繰り返せば、上半身の筋肉がほぐれて楽になる。

 ジェランはマユのお尻を両側で固定して、マユにそれをやらせた。

 すると驚いた顔をした。


「あら。楽になったわ」

「腰の筋肉から背中にかけて、かなり張っていたからね」

「医療にも詳しいんですね」

「おいおい、ミフィリアの前でやめてくれよ。ただの民間療法だよ」

「ありがとう。さて、どうやって潜入しましょう」


 最終的に現地で様子を見てから決める手はずにしていた。

 みんなの視線がジェランに集まる。

 邸宅を見つめつつ、決めた答えは二手に分かれる作戦だ。

 理由はふたつ。

 一つは、取り逃がさないようにすること。戦略的撤退をされては、またアルスが救えない。

 もう一つの理由は、シズカの高い戦闘力がいてくれることだ。

 暗殺を生業にしているものの、正面での戦いも相当のものだ。

 そして魔法攻撃と素早い近接戦闘のコンビネーションは、俄仕込みであってもかなり頼ものしい戦力になる。

 その事を話すと、みんなは納得してくれたようだ。

 でもシズカは少し不満な顔をしていた。


「いいけどさ、なんでこんなおっぱいオバケと一緒なのよ。なに? からっかってるの?」

「そんなわけないよ。この作戦はおまえたちがいなきゃ無理だよ。どちらかでもいなかったら、バカ正直に突っ込むしかなかった」

「でも……」

「俺は、シズカが女らしいと思うよ。一番色気があるし、なにより腰のラインがとってもかわいい」

「なっ……、ば、ばかぁ。急に褒めるなぁ」


 顔を真っ赤にして手で覆ってしまった。

 その様はまるで初々しい乙女のようで、ここにいる全員の胸がキュンとときめいた。


「きゃああん、かわいい! なんて顔するのよ!」

「ああ、母性本能がこんなにくすぐられるなんて。わたしこそ不意打ちだわ」


 マユがシズカを抱きして、胸の深い谷間に埋めてしまった。


「やめろ! こら、いろいろ当たってる、当たってるってば! 大きくするな!」

「あ、そんなに動いたら」

「やめなさい!」ミフィリアが二人を引き剥がした。


 とにかく色々あったが、二組に分かれることになった。

 ミフィリアがマユに念を押した。


「いい? シズカに変なことしないでよ。救出作戦中なんですからね」

「大丈夫よ」

「じゃあ、とっととその大きくなっているモノ、小さくしなさいよ」

「生理現象だから、一発抜かないとム・リ」

「ジェランもなにか言ってやってよ」


 ジェランはため息をついて、マユに言った。


「刺激しなければ自然と治まるだろ。なんなら、作戦から外れるか?」

「ごめんなさい。じゃあ、作戦が成功したご褒美にとっておくね」


 それを聞いたシズカの顔が引きつっていた。

 このままでは本当に先に進まないので、とにかく二手に分かれることにした。

 ジェランとミフィリアは表側から、マユとシズカは裏側からだ。

 屋敷の構造をリディとシズカから聞いた限り、この方法がベストだろうと思った。


 護衛たちがいるだろうと思っていたら、何事もなく玄関に入ることができた。

 邸宅といっても、ほとんどが大広間であり部屋の数が少ない。

 そしてこの建物の最大の特徴である、ステンドグラスの間に入った。

 足音がやけに響く。音の反響がかなりいい。

 そしてムチのしなる音が突然響いて、ジェランたちを襲ってきた。

 すぐさまジェランは後ろへ退避する。

 これはゲームの時と全く同じ攻撃だ。

 ミフィリアに振り返って無事を確認したその時、彼女の身体にシダが巻き付いて奥へ引っ張られてしまった。

 ジェランがすぐさま聖剣を抜くと、凛とした冷たい声がそれを制した。


「動くな! 動けばこの女を絞め殺す」

「アルスお嬢様、どこです? どこにいるのですか」

「聖剣を捨てろ」

「お嬢様」

「捨てろ!」


 ジェランは天井に吊るし上げられ、もがき苦しむミフィリアをみた。

 ミフィリアは構わないでと、首を振っていた。

 アルスは姿を見せない。

 これではすぐさま間合いを詰めて、一撃をいれることもでない。

 リコネスを覗いてみるも、どこにもいない。

 ということは、遠隔にいることになる。

 お手上げだと、聖剣を捨てた。


「ミフィリアを開放してくれ」

「誰がそんな事をするか。お前を殺すまでの人質だ。裏切り者め」

「何を言っているんだ。俺は、お嬢様を裏切ったことなんて一度も」

「そこの女と寝ただろ! 他の女とも! 私に手を出しておきながら、なんと節操のない。この浮気者! 不埒な男は死刑だ。それが世の常識だ」


 言っていることが飛躍しすぎている。

 確かに、ジェランの前世の世界なら、至極真っ当な筋の通った話だ。

 だがこの世界は一夫多妻が認められているはずだ。

 そもそも第一正妻はアルスにすると、心に決めている。


「お嬢様、俺はあなたを最初の正妻にすると誓っています」

「ぬけぬけと! 他の女とも浮気を続けるつもりなのか」

「みんなも、そのことに納得しています」

「許さない」


 リコネスに反応が現れたと同時に、ムチの攻撃が走ってきた。

 ものすごい速さだが、魔法と合わせれば交わしきれないことはない。

 姿を表したアルスは、胸元からヘソまで大きく開けた赤のドレスを身にまとっていた。

 アルスの趣味とは思えないが、同時にこれはゲームの彼女の姿でもあった。

 ジェランは嫌な予感がちらつく頭を振り払った。

 やまぬムチの斬撃だが、やはりムチの軌道はゲームと変わらない。

 一見派手に見えるが、見切ってしまえばノーダメージで戦える。

 問題はアルスを殺せないということだ。

 これはもうゲームじゃない。


 現実だ。

 仮にアルスを殺して蘇生させるという手もあるが、それは最後の手段だ。

 彼女が過去に一度も蘇生していない保証はどこにもない。一度でも受けていれば、確率は大きく下がってしまう。

 聖剣があれば、魔法で気絶させることもできたが、今はそれも出来ない。

 ヴァンプレスを装着したままであることが、唯一マシなことだった。

 ジェランは間合いを詰め、正拳突きを打ち込んだ。


 だが浅く、簡単にかわされてしまう。

 立て続けにパンチやキックを繰り出した。

 アルスを傷つけることにはなるが、せめて気を失わせないと手の打ちようがない。

 ムチが上へ振りかぶられた。

 これはフェイクで、真下から波打つように放たれるはずだ。

 真横へかわすと、ムチがそこに飛んできた。

 その衝撃は全身を駆け巡り、身体がしびれてしまう。

 

「なんで!?」

「いつまでも、かわしきれると思うなよ」

「そういうことか」


 自分でさっき言ったくせにもう忘れていた。

 これは現実だ。相手だって学習する。

 だとすると厄介な相手だ。

 しかもムチに高圧電流が走って、光るムチになっていた。

 これはゲームにない。

 電流を流し続ける、つまり常に魔力を消耗するはずだ。

 だから短い時間しか持たないはず。

 そう思っていたが、もう三十はムチを回避しているが一向に電流が収まらない。


「なんで電流が流れ続けているんだ。バッテリー?」

「わけのわからないことを! これは私の無尽蔵の魔力がなせる技よ」

「無尽蔵? そうか。たしかお嬢様のステータスは」


 なぜか魔力量の最大値を超えた数値が出ていた。

 聖剣に触れば今の残量を知ることができる。しかし近づけない。

 早く決着をつけないと、このままではミフィリアがもたない。

 

「ジェラン」

「ミフィリア、大丈夫か」

「わたしはなんとか平気よ。でも、マユとシズカがアビゲイラと戦ってて、こっちに来れないって」

「アビゲイラがこっちに来ているのか」


 幹部クラスだと聞いていたが、まさか直々にお出ましだとは。

 向こうも後がないということか。

 連絡をしてくれた余裕があるということは、苦戦はしているが大丈夫だということだろう。

 マユたちには、アビゲイラがアルスを操る魔法具を持っている可能性を伝えてある。

 でも向こうばかり当てにしていては駄目だ。

 ジェランは意を決した。


「アルス!」

「何よ急に」

「俺のことでこんなに怒っているということは、初めてのときのことを覚えているんだよな」

「当たり前じゃないの! 私を傷物にしておいて、他の女と!」

「《アクセルターン》」


 電流のムチを超加速でかわしていく。

 ジェモナスヴァンプレスに備わった魔法ではない、性能スペックの力だ。

 持続性はなく一瞬だが、そのかわり魔法以上の瞬発力を得られる。

 唯一の切り札を切った。

 最初で最後のチャンスに賭ける!

 ジェランはアルスに突進すると、頭を引き寄せて唇を奪った。

 もちろん舌を絡ませて、最初のときの夜のように抱擁した。

 ジェランが軽くまぶたを開けると、アルスは左目だけ涙を流していた。

 行けると確信したジェランは、熱い夜を思い出すように愛撫を続けた。


「地下洞窟のときの約束、ここで果たそう」

「なにを言って……、ん!? んん!?」


 それを複雑な心境で見ていたであろうミフィリアが、またマユたちの連絡を教えてくれた。


「ジェラン、魔法具を破壊できたって! シズカが無茶しちゃったみたい」

「ぐあああああああああああああああああああ!?」


 ミフィリアが言い終わると同時に、アルスが頭を抱えて苦しみ始めた。

 すぐミフィリアを下ろして、アルスを診るように頼んだ。

 横に寝かせるように指示され、それから言うとおりに首下に枕になるようなものを入れて気道を確保した。

 まだ苦しみもがいているアルスに、ジェランはいてもたってもいられなかった。

 それをミフィリアは一喝する。


「落ち着きなさい。こっちが集中できないでしょ」

「でも」

「今まで自分の心を支配していたものが、いきなり剥がされたの。分厚い皮膚が剥がれたようなものよ。どこまで心を持っていかれたかわからない」

「おい! アルスは元に戻るんじゃなかったのかよ」

「わたしを責めてもしかたないでしょ! 今はアルス嬢を助けることが先よ」


「ごめん。じゃあ、なにか方法は?」

「剥がれてしまった分を埋めるしかないわ」

「埋める?」

「このまま麻酔魔法で眠らせてもいい。けれど、後遺症がどうなるのか、わたしにだって予想できない。今考えられる応急処置は、今すぐに傷口を埋めてしまうこと」

「心の傷口ってことか」


 ジェランが思いつく方法は、たったひとつしかない。

 でもそんなエロゲ展開でアルスが回復するのか?

 それをミフィリアに話してみると、天を仰いで絶望したようにうつ向いた。


「やっぱり、そんな最低な方法しかないんでしょうね。わたしもそれしか浮かばない」

「時間はない。どこか落ち着ける場所はないか」


 リディに案内してもらって、ベッドのある部屋に入った。

 アルスを脱がせると、ジェランも一糸まとわぬ姿になった。

 ミフィリアには、マユとシズカを診てもらうことにした。

 アルスの精神的ダメージを癒やすには、抱いてあげるしかない。

 初めての時よりも熱く、強く、そして激しく。

 呼吸を妨げないように頬にキスをすると、胸へ愛撫を進める。

 すると、アルスが肩を掴んで爪を思いっきり立ててきた。


 こうしているときも、熊のような低音の叫びを上げて苦しんでいるのだ。

 ジェランは肩からアルスの力んだ手をはずすと、秘部に向かって口を開いた。

 そこからはただ一心不乱に腰を動かした。

 五度くらい果てたとき、アルスの様子が変わった。

 喘ぎ声が漏れ始めてきたのだ。

 まだジェランのは固くそそり返っている。

 そして、愛の言葉を止めることなくささやき続けた。

 二時間くらい経った後、ミフィリアたちに連絡を入れた。


「駄目だ」

「え?」

「容態はかなり安定してきたんだけど、苦悶の顔のままなんだ。何かが足りないと思う」

「ジェランで無理ならどうしようもないでしょ」

「いや、みんな。アルスを抱いてくれないか」

「はぁ!? 意味分かんないわよ。なんで女なのに抱かなきゃならないの」


「アルスと会えなかった間、俺はみんなとも愛を囁いてきた。彼女が知らなかった愛を、アルスに教えてほしいんだ」

「愛の補完をしろってこと?」

「それだ、言いたかったのはそれだよ」

「わたしは嫌よ。アルス嬢のこと嫌いなの知ってるでしょ」

「もちろん、無理にとは言わないよ。マユはどうだ?」


 マユはしばらく考えた末に、ジェランのもとにやってきた。

 ヴァンプレスを解いて、全裸になると大きな胸と男性部分がぶら下がった。


「やっぱり、勃たないか」

「ええ。わたし、女性にはあまり欲情しなくて」

「シズカには夢中だったのに?」

「あの娘は背が小さいですし、胸も小さくて男の子みたいだったから」

「分かった。俺がマユのを勃たせるよ」

「え、でも。ジェランなら、触ってくれるだけで……その……感じるから」


 マユの言ったとおり、竿に触れただけでバネのように付き上がった。

 それをアルスに入れようとすると、たちまち萎えてしまう。


「あらあら。やっぱりジェラン以外では勃たないかも」

「大丈夫だ」


 ジェランはアルスの頭とは反対に被さると、口を大きく開けた。

 マユは戸惑うも、アルスのためと意を決して入れてきた。

 そこからようやく行為に及ぶことが出来た。

 本気で腰を振られたジェランは、目から涙がでてしまったがその甲斐はあったようだ。

 アルスの声がようやく歓びに変わり、顔も苦悶が晴れていく。


「よかったー。アルスの容態が安定してきた。けど……」

「どうしたの?」

「これって、マユに寝取られた展開なんじゃ」

「大丈夫よ。初めて女の子に入れたけれど、やっぱり入れられる方がいいわ。ねぇ、今夜はわたしにも埋め合わせしてね?」

「今夜は流石にもう……。でも、精のつくものごちそうしてくれたら行けるよ」

「分かったわ。わたし、腕によりをかけるわね」

「手料理できるの?」

「ええ。普段は自炊だから」


 ミフィリアとシズカにも連絡した後、ようやく回復に向かうことが医学的に保証されたのだった。

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