13 どこにいっちゃったんだ?
♥
あーん、私のバカバカバカバカバカー!!
せっかく楽しみにしてた放課後デートだったのになんで自分から拗ねて放棄してんのよー!
……でも、あれは泉君も悪いと思う。はっきり断るっていったのに、香月さんの前でデレデレしてるからいけないの!
やっぱり、私みたいな根暗女より香月さんみたいな明るい女子の方がいいのかなぁ。
はぁ。でも一応連絡しとこうかなぁ。でもでもやっぱり気まずいなぁ。
だいたい逃げ出しておいてどうやって連絡したら……って泉君からライム来てる!?
♠
一応ライムで謝ってはみたけど、こんなんでよかったのかな?
うーん、すぐ既読にはなったけど返事はないし。やっぱり怒ってるのかな……
……ていうかなんで氷南さんって怒ってるんだ?
いや、別にそこに腹が立つわけではないけどむしろ怒らせる理由がわからないというか。
うーん、もしかして嫉妬?いやいや、そんなプラス思考には到底なれない。
多分、これから氷南さんとクレープ食べにいくというのに他の女子とデートの約束みたいな話をしてたからナンパ者だと思われたに違いない。
うわぁ、めっちゃ最悪じゃん俺……
と、とりあえず返事こないし風呂でも入ってこようかな。
♥
あーもう泉君優しすぎ!
なんであんな冷たい態度とった私に対して『さっきはごめんね。明日埋め合わせさせてほしい』なんて言ってくれるんだろ。超良い人!
……もしかして泉君って私に気がある? ……ってさっき散々やり散らかしておいてその発想はさすがにひどいか。
うーん、やっぱり泉君が優しいからこんな私に合わせてくれてるだけだよなぁ。
普通に考えてこんな女めんどくさいよなぁ。
あー、自分で自分が嫌になるー!もう死にたい、じゃなくて今朝からやり直したいー。
「円、ご飯できてるから早く降りてきなさい」
あうう、お母さんに怒られた。
……そうだ、恥を忍んでここは親に相談するというのはどうだろうか?
♥
「知らない、なにそれ高校生になってそんなことで悩んでるの?」
悩める私に早速辛辣な回答をくれたのは、私の母の涼子。
昔はイケイケだったようで、恋愛事情とかも詳しそうな母だと思ったけど、まさかここまで実の娘の悩みを一刀両断するとは。
「だって、今日クレープ買いに行く予定だったのに他の女子と話してるとかダメでしょ!」
「クラスメイトと話すだけでいちいちキレるような女子の方がダメでしょが。その男の子も相当迷惑してるんじゃない?」
「ううっ、やっぱり?」
「なんで男子と買い物の一つもまともにいけないかねぇ。それでもあんた私の子?」
そこまで言わなくても、とは言いたくても言えない。そもそも相談してるのは私だし、母の意見は最もすぎてぐうの音も出ない。
だから余計に辛い。
「だって、泉君優しいから不安なんだもん」
「あんたの情緒の方が不安だよ。で、ちゃんと謝ったの?」
「……向こうから連絡くれたけど、返事してない」
「じゃあ相談する前にさっさと連絡しろ。バカかあんたは」
ううっ、お願いだからそれ以上言わないでください私が悪かったです……
結局母に泣かされそうになりながら食事を終えて、さっさと部屋に戻るとまた携帯の画面とにらめっこ。
うーん、なんと返したらいいのやら。その辺を享受してよお母さーん。
♠
……まだ返事きてないのか。
これはさすがにやばい?いや、もともと返事が早いわけではないけどやっぱりあんなことがあった後だから気になる。
このまま、彼女から連絡が来ないなんて最悪の事態まで考えてしまう。しかしこれ以上の催促もできないし、全く安易に連絡が取れるというのも考えものである。
女々しいようだが、ジッと携帯の画面を見つめたままベッドでゴロゴロしているが、今日は不安で眠れそうもない。
……このまま悩んでいても仕方がない。
よし、もう一回だけ彼女にメッセージを送ってみよう。
返事は期待しない。とりあえず伝えたいことを簡潔に、だ。
♥
はわわっ、また泉君から連絡が……
ええと、明日の朝話したいことがあります? ……えっ、これってもしかして愛のきょきゅはきゅ(告白)!?
……ないない、それはない。絶対にそれはないけど話ってなんだろう?
もしかして、一緒に通学するのはもうやめないか、とか?
あわわ、どうしよう。やっぱり見捨てられちゃったのかな?それとも香月さんと仲良くなったから私が邪魔なのかな……
明日の朝、私が電車に乗った時に既に香月さんが隣にいて、「ごめん、僕たち付き合ったんだ」とか言われるパターンなのかな!?
ど、どうしよう……このままじゃ泉君が盗られちゃう。いや、もともと私のものじゃないけど、でもやだよー!
何かいい方法は……そうだ、家まで迎えに行けばいいんだ!
よし、そうと決まれば明日はもう一つ早起きだし、寝ちゃお!
♠
結局朝になっても返事はこなかった。
なんか、最近いい感じだと思ったんだけどやっぱり俺の思い違いだったようだ。
やっぱりツンデレラ姫の異名は伊達じゃない。所詮俺なんて痴漢から助けてくれた恩人程度にしか見られてなかったんだろう。
それに彼女を追いかけて部活まで決めるとか、まぁまぁキモいよな。
はぁ。もう学校行くの嫌だな……でも、電車に乗れば彼女に会える、はず。
「おっはよ」
駅のホームで憂鬱になりながら電車を待っていると、香月さんが後ろから声をかけてきた。
……どうにか離れないと。
「おはよ。いつもこの時間なの?」
「うん、まぁそうね。今日も氷南さんと待ち合わせ―?」
「わかってるなら離れてよ。香月さんのせいで彼女怒っちゃったんだから」
「おやおや嫉妬?仲いいんだね」
「そんなんじゃないよ、ほんと」
香月さんって昨日まで全然話したことなかったのに、急に絡んでくるようになったなぁ。でも、やっぱり苦手だ。
逃げるように電車に乗り、いつもの席に座ろうとするとうっかり彼女がまた隣に座ろうとするので慌ててカバンを置いた。
「え、もしかして席取ってるの?」
「わかってるんなら隣座らないでよ」
「ふーん。やっぱりあの子と付き合ってるの—?」
香月さんは嬉しそうな顔で俺に尋ねてくる。
可愛い顔だが、正直こういう人を小ばかにした態度はあまり好きじゃない。
だから少し怒った様子を見せながら強めに答える。
「違う。ただ彼女が電車怖いから隣にいてあげてるだけだよ」
「けなげー。でも、向こうは泉君の好意にきちんと応えてくれてるの?」
「そ、それは……」
「やっぱりー。相手にされてないんじゃーん。それじゃ泉君が損だよ」
もうすぐ次の駅に着く。しかしそんな時だというのに香月さんは俺を離してくれない。
でも、彼女の言いたいことはわかっても別にだからどうという話でもない。
俺は損得で彼女と一緒に電車に乗ってるわけじゃなくて、俺がそうしたいからしているまでだ。
それに、氷南さんが頼ってくれてるだけで俺は嬉しい、嬉しいはずなんだ。
「もういいかな。そろそろ氷南さんが来るから」
「来たら離れるって。でも、彼女とずっとそんなままなのも嫌じゃない?例えば他に付き合える子がいたらそっちいくでしょ?」
「ないよ。好きじゃない子と付き合ったりできないし」
「へー。でも相手が自分を好きじゃないとそもそも付き合えないんだよ?」
一体彼女は俺に何を言いたいのだと、少しイライラしながら貧乏ゆすりをしていると次の駅に電車が止まる。
そして扉が開いてぽつぽつと乗車してくる人の中に、氷南さんの姿はなかった。
「あ、あれ?」
「今日はいないね、氷南さん」
「……もしかして次の電車なのかも。俺、降りて待つよ」
「遅刻するって。それにもしかしたら泉君と一緒に登校するの飽きたんじゃない?」
「そ、そんな……」
多分昨日までなら、そんなことを言われても不安にこそなれどここまで落ち込みはしなかっただろう。
ただ、昨日からずっと連絡が来ていないこととかを踏まえると、もしかしたら香月さんの言っていることが事実なのかもしれないと、俺の弱い心はどんどんと真っ暗になっていく。
氷南さん……どこ行っちゃったんだよ。
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