回答⑧🌰🌰🌰🌰🌰 🌰🌰🌰

🌰🌰🌰🌰🌰 🌰🌰🌰


 少し考えたあとで、僕はこう答えた。


「人前でコスプレしたり、歌ったりしなくてもいいんなら、会うよ」



  ◇ ◇ ◇



「みんなぁー!! ノッてるかーいッ!!」


「「ノッてるよー!! つやっつやの🌰栗ぃーー!!」」


「合言葉はぁー? く・り・か・の」


「「ゴォーーーッ!!」」


「聴いてください! 『ゴールデン・マロン・ハーモニー』ッ!!」


~♬ ♬ ♬~



  ◇ ◇ ◇



 二子ちゃんが指摘したとおり、僕はこういうのが苦手だ。

 彼女の「友達」と僕とでは、根本的にノリが合わないであろうことは容易に想像できた。


 十枚ものCDを買って、めでたく当選した『ミラクルスイーツ♡栗かのこ』のコンサートイベント。


 僕がグッズ販売の列などに並んでるすきに、彼女はあっという間に男女数名ずつの「同志」を見つけ、意気投合してしまった。コンサート自体は二人で存分に楽しんだけど、みんなでアフター行こう、なんて流れになって……


 情けないことに、僕は「体内ダム決壊」を理由に二子ちゃんを置いて逃げ出してしまったのだ。よっぽど楽しかったらしく、あとで彼女からとがめられたりはしなかったけど。


 だから「同志」たちとじっくり顔を合わせるのは、僕は今日が初めてなのだ。


 今まで彼女から何度も聞かされたからわかる。僕と彼らとでは、ノリが合わない、と。



  ◇ ◇ ◇



「みんなノリッノリだねー!! かのこ感激ぃー!!」


「「アンコールッ!! アルコールッ!!」」


「「マロンリキュール!! 栗焼酎ッ!!」」


「おおっ、用意がいいね! かのこ、いっただっきまーす!」


「「かのちゃん、いい飲みっぷりぃー!!」」



  ◇ ◇ ◇



 大事なことなので、もう一度言う。僕と彼らとでは、ノリが


「いやー、二子ちゃんの彼氏さんいい飲みっぷりーー!」


「歌もうまいし、かのコスサイコー!」


「めちゃめちゃノリいいよね! もっと早く会いたかったよー!」


 ……違う、断じて違う。こんなノリは、僕のキャラでは


「えへへー、関川くんがノリッノリでみんなと仲良くしてくれて嬉しい!」


「任せろー! もう一杯いこかー!」


 二子ちゃんの笑顔の前では、僕のノリなんて海苔弁当の海苔も同然。

 魚フライ・ちくわ・かつおぶし。何とだって仲良くして見せよう。


「それにかのコスめちゃくちゃ可愛いぃ~! もうあたし、思い残すことないれす~」


「二子ちゃん、そろそろお酒やめようか」


「みんな聞いて~! コスチュームお題のときね~、それはそれは可愛らしい女装関川くん作品が次から次へとアップされたの~! 『関川♡女装アンソロジー』が発行されるくらいに! あたしたちもコスプレはがんばったんだけど、女装がなかったのが心残りだったんだよね~」


 二子ちゃん、発言が次元を超えてます。


 それに、あのときはできる限り目立たずにCDを買うのが目的だったからね(十分目立ってたというツッコミはなしで)。



  ◇ ◇ ◇



「それでは新曲ぅ~! 『きんとん☆かのこ🌰エクスプレス』いっくよぉ~!!」


「「まろ~~ん!!🌰🌰」」


 最後にもう一度言おう。僕と彼らとでは、根本的にノリが違いすぎる。


 ――でもそれは、昨日までの話。


 僕は今日、未知なる次元の扉を開けて、新しい自分を発見したのだった。


 二子ちゃん。きみといれば、次々に知らなかった世界が開けていく気がするよ。



🌰🌰🌰🌰🌰 🌰🌰🌰



『「同志」メンバーの中には、あなたのお名前も入っています。そう、これを読んだあなたも栄えある「かのラブ戦士」! まろ~~ん!!🌰』


<終>

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る