第10話 星に願いを、貴方に戯れも。 ※微エロ注意


「…デート?」


「うん!久しぶりにどう?」


 スナイプスに襲われてからしばらく外出も控えて身を隠していたが、しばらくデートが出来てないからと、また急な誘いを受けた。


古代中国の後宮を舞台にしたドラマをぼっーと眺めていた横からの誘いに、あまり乗り気じゃなかった。


「デートって、言われても…」


「いいじゃん。久しぶりに行こうよ!!」


「昼間にあちこち連れ回されるのは疲れる」


「屋内なら、何処でもいいってこと?」


「何故デートを承諾した前提で喋るんだお前は」


 この男、自分の都合の悪い話はとことん無視か。行くなんて一言も言ってない。むしろ断ってる。

なのに、もう既にプランは考えてあると自分の食事していた皿を洗い終えて私の隣に座ってきた。


「僕とデートするのやだ?」


「そういう訳じゃない。最近は冬も終わって温かくなってきただろう。日差しが強いし……」


「だからさ、屋内で過ごせるとこって言うのを、考えたんだ」


相変わらずニコニコと笑顔で威圧しながら、ハイッと一枚のチケットを見せてきた。映画でも観に行くのかと思ったが、ちょっと違った。


「プラネタリウムか…ストーリーオブギリシャ?」


「星座って、ギリシャ神話に因んでるでしょ?」


「…ほとんどゼウスの不倫話なのに、この演目にしたのか?」


「ち、違う話だってあるよきっと!!ほら!後半はちゃんと星空だから!!」


確かに因んでると言えば因んでるが、 星座には、ゼウスの不倫話が結構大半だと知っている者からすれば、付き合ってる者同士で観るのは縁起でもない。


「お前、星好きなのにそこは考えてなかったのか」


「神話は神話じゃん!!神様のやることと僕らのやることは違うでしょ?そんな深く勘繰らなくても」


「…別に。言ってみただけだし」


興が削がれたとばかりにしょぼんとする。だ、だって、そう思うだろう。もし不倫話を垂れ流されたら、空気が不味くなる。


「それに…前に行ったときは一般シートだったから、今回はカップルシートで君と見たかったんだもん」


「お前の目的星じゃなくてそっちだろ!」


 またいかがわしいことを企んでいるな!!自分の横にあったクッションを投げつけると、恥じることも悪びれもせず、えへへと無邪気に笑っている。


「付き合い始め初期とは違うシチュを味わいたいなって~」


「家でもベタついて来るのに、出掛けた先でもやられたら真面目に鬱陶しい…」


「そんなこと言われても、もうチケット取っちゃったから、決まりだもんね!!」


「一人でいけ!!」



………と、言って頑なに断り続けたが、こういうときの聖也は頑として譲らず、結局、デートに付き合うことになった。


この時、私は知らなかった。デートのメインが、プラネタリウムでは全くなかったことに。






__次の日、仕事が休みの聖也に連れてこられて、前にも来たことのあるプラネタリウムに行き、カップルシートとか言う、二人で寝そべるタイプのシートに座って星座や星空を、ただ眺める。


 演目は50分程度だ。女性のナレーションの声に導かれながら見るプロジェクターから映し出される星は、本物でもないのに綺麗で、とても、見るのが久しぶりに感じる。

 

 何処でも見れていた星は、電気を使うようになってからめっきり見えなくなり、東京にきてからは全く見ていない。日本においた屋敷からは見えたが、そのときは物珍しさは感じていなかった。


古代ギリシャをテーマにしてるからか、近年では見なくなった星の輝きも再現されていて、当たり前に見ていたものが、今は貴重に思えた。



 寒くないよう膝掛けを貸してもらい、二人で足元にかけて観ていると、始終ずっと私の手を握っていた聖也の息が耳元に囁いたのに気づき、星から彼の方に目を移した。


「あれだけ文句言ってたけど…気にいった?」


「…久しぶりに、こんな満天の星空を見た気がする」


「こっちじゃ全く見えないもんね。君、ずっと目を輝かせてた」


目が輝いてただって?…嘘。…そんなに魅入ってた?

 小さく囁いてきた声にすぐ答えなかったが、指を撫でるように聖也の指が動いて、密かに私をからかっては、体の向きを天から私に向けて、軽く触れるキスを頭や頬にしてくる。


 カップルシートは、私達の席も含めて3つあって、お互い、席の中が見えないように設置されているが、だからと言って全く見えない訳じゃない。家と違って普通に周りに人がいるし。



「ちょっと………やめて、人に見られたらどうする?」


「これぐらい大丈夫だよ。やっぱ、君がいると流星群がより鮮明に見えるね」


 もはやプラネタリウムに来たのに星一切見てないじゃないかと目線で訴えたが、家にいるときみたいに髪を触っては柔らかなキスを繰り返し、くすぐったいと文句を言ってもただ微笑み返された。


 前に来た時は普通のシートで、こんな風にベタベタと寄り添ってはいなかったが、あいつは途中から私の方ばかり見てた。


 その時は落ち着かないからやめてほしいとは思いつつ、気づかないふりをしてたけど。

今はあいつの髪が顔に触れるほど近くて、遠慮のない接し方をしてきてる。


「君の屋敷からも、こんな星空がよく見えたよね…」


「それでも、もう何年もここまでの星空は見てない。…というか、聖也は、それを見に来たんだったな?」


「うん、東京や神奈川で星の観察するのって難しくってさ。ワンチャン郊外に行けば見れるだろうけど、都心よりだとよく見えないしね。調べてたら、シェリルの山が一番、冬のダイヤモンドを見るのに適してるって聞いて」


「冬のダイヤモンド?」


「ほら、さっき言ってたやつ。おおいぬ、オリオン、おうし、ぎょしゃ、ふたご、こいぬの6つの一等星を結んでくと、六角形になるの」


 それを結んでくとダイヤモンドのようになる形になるから、冬のダイヤモンドか。星座の位置を把握するためのガイドにもなってるらしいが、聖也ははっきりと一等星を見たかったらしくて、冬で大雪だったのにも関わらず、山に登ったらしい。


バカな奴。星なんかの為に…というか、冬の山に入ること自体が危険な事だとすら、惚けて分からなかったんだろう。


「そういえば、シェリルって何座なの?」


「…何座?」


「今考えたらさ、誕生日知らないんだけど」


 唐突に星を眺めてると思い出したらしく、今さら誕生日がいつかなんて聞いてきたが、ぶっちゃけ、私も聖也の誕生日を知らないことを思い出した。


「…私もお前の誕生日知らない」


「あれー?言ってなかった?僕は12月8日のいて座だよ。君は?」


「…恐らく、2月頃。日付までは分からない。水瓶座かうお座じゃないか?」


「なんで?誕生日でしょ?」


「長く生きてると、だんだん誕生日はどうでもよくなる。…けど、2月の時期にはプレゼントを必ず貰ってた。私の生まれた日は寒くて、よく星が見えたとも、話してたし、多分そう」



 吸血鬼にとって、とても寒い日に生まれる赤子は縁起がいいらしい。

 寒ければ寒いほど、氷のように冷たい心を持った強くて気高い吸血鬼が生まれると、大昔の迷信だ。

加えて星がよく見えれば、夜の王女ヘカテの魔力の恩恵も受けるという吉兆の中、私は生まれたのだ。


本当に、根拠も何もない迷信だったが。



 もし母が生きてたら、今のこの状況をどう思うだろう?

…純血吸血鬼であるのに人間にほだされた娘を、幻滅するだろうか。


「それじゃ、2月8日の水瓶座ってことでどう?」


「何故?」


「僕と同じ日にとりあえずしてもいいでしょ?もう過ぎちゃったけど、次は誕生日プレゼントあげたいし」


「2月って分かってるんだから別に日まで決めなくても…」


「そうしたいの。ダメ?」


「別に、ダメじゃないけど…」


そんなに誕生日が重要だろうか?

聖也は嬉しそうにえへへと笑って一人で喜んでる。何が、そんなに嬉しいのだろう。



 話に付き合ってやってる間に、プロジェクターから光が消え、シアターの電気がうっすらと点灯して、作品は終わってしまった。


 50分なんてあっという間だ。室内デートもこれでおしまいか、短いプランだったなと思ってシートから体を起こすと、気伸びして起きた聖也が、「さてと」なんて一言言って私に言った。


「下のショッピングモールでなんか見る?」


「ちょうど新しい靴が欲しいと思っていた所だけど」


「それじゃ、見たら休憩しに行こう」


「…休憩?」


「ほら行こう、好きなの買ってあげるからね!」


「…安月給なのにお金あるのか」


「気にしなくていいよそんなの!」



聖也の財布のヒモが気になりつつも、繋いだままの手を引っ張られて、シアターを後にした。




______



 買いたかった靴や、ついでに服も買ってもらった後、施設を出て荷物を持った聖也に手を引かれるがまま何処かへ連れていかれる。

 今日は少し曇っているし、季節もそこまで日差しはあまり強くないが、太陽が出てる時間帯を歩くのは気疲れしてしまう。


 熱がこもるニカーブを着た私を連れて歩く聖也に、時折通行人の視線が行くのに気づく。


 日本人には馴染みのない黒いシーツに覆われたような格好の私と歩いてれば、気になるのも分かるが、この注目があるからこそ…あまり昼間の一緒の外出はしたくない。



私が吸血鬼じゃなければ、こんな格好しないで普通に一緒に歩けるけど、それが出来ないから。


「…ここでいっか。ごめんね歩かせて。入ろ」


「うん」


 行く先も教えてくれず、しばらく二人で歩いて着いたのは、あまり人気がない、さっきまでいたところよりも閑静な場所にあった建物。


 中に入るとまるで綺麗めなマンションのロビーだったが、聖也が近くにあった部屋の写真が壁に飾られている場所でボタンを選び、パネルを選択している。


 何をしてるんだと思ってただ黙って見てたら、操作した後に近くのフロントで「フリータイム」がどうだとか言ってたが、鍵を貰って再び私の手を引き、エレベーターに乗って連れていかれた場所は__ホテルの部屋の一室。



「……休憩………?ホテルで?」


「あー久々に来た~。おっ、マッサージチェアがある!ねシェリル、喉渇いた?吸血する?それとも飲み物頼む?」



…………ん?

待て、どういうことだ。


 

 どうして私は、旅行しに来たわけでもないのにホテルにいるんだ?そこそこ綺麗だし、ベッドは広いしテレビはあるし広いしマッサージチェアがあるし、シャワールームもあるし、見た目は完全に高級ホテルだが、休憩するためだけに高級ホテルを使うほど、眞藤聖也の財力に余裕はない。


飲み物や食事をしたいのであれば、何故わざわざホテルに入る必要があったのだ?



「…我が下僕よ。私達は、住む場所が電車を跨げばすぐ近くにあるというのに、何故ホテルに入ったのだ?」


「え?………………え???ちょっと待って、意味分かってなかったの?」



荷物を置いてマッサージチェアに座った聖也が、メニューを持って私の方を向ききょとんとした後、困ったように苦笑いをした。


なんだその苦笑いは。



「意味分かるも何も、デートの途中に休憩を挟むのにわざわざホテルを使う必要性ないだろう。…………何故そんな笑いを堪えてる、馬鹿にしてるのか」


「ちょっとちょっと待て!そこから!?君…君…」


ブハッ!!と噴き出して笑い始めた聖也を冷たい目で見下ろしながら、ニカーブのフードを取り、口の中の牙を見せつけた。



「何を笑ってる!!?質問してるというのに!!」


「ご、ごめ……ブフッ……な、なんだよ…黙ってついてきてくれるから、分かってるんだと思ってた…!」


「説明しろ。そこまでツボにハマるような面白い事かどうかを」



 クククッとまだ笑いが漏れてる聖也にイラつきながら、辛抱して返答を待つと、「そっかそっか、シェリルはデートでこういうとこ来なかったんだね」と言い、ようやくこの室内デートに関しての真実と場所と目的が、一気に明かされた。



「ここ、ラブホテルだよ。デートとかでさ、休憩しにいこうって言うときのって……そういう意味」


「………………………は?」




……………………………………………………………………………は?………………………………ハァッッッ!?



ラブホ……テル…!?


 さすがにラブホテルが何なのかは分かる。けれど、知ってた安ホテルのような内装や外観のイメージから凄く遠ざかっていたし、全然気がつかなかったバカな自分に腹が立つ。


室内デートって、こういう意味か!!



「こ、このっ、変態が!!私をたばかったな!?」


「騙してないって!君が意味に気づいてなかっただけでしょ?」


 そもそもホテルに連れてこられた時点で察するじゃないかとマッサージチェアから立ち上がって私に触れようとするのを避けるが、それに手慣れてしまった聖也がごねる私を捕まえるのに時間かからなかった。


「私に楯突くつもりか!?そもそも家があるのにわざわざここでする必要ある!?」


「たまには家以外の君も見たかったから、かな?そんなに怒らないでよ。ビックリさせちゃったのは、悪かったけど」


 両腕を掴まれ、そのまま引き寄せられたかと思えば、マッサージチェアに座った聖也の膝の上で抱き締められる。


「そっか、来たことないんだ。じゃあ、初体験だね?」


「そんな言い方するな!!は、初…じゃ…別に……」


「むしろ家より快適かもよ?アメニティも色々あるし。僕の部屋より広いから、色んなコト、出来ちゃうね」


「色んなこっ……!?」


 着たままのニカーブを外し、下に来てた花柄のレトロワンピースの上から体を触られ、肩に顔を埋めて匂いをスンスン嗅がれるくすぐったさに、怒りより恥ずかしい気持ちの方が勝ってくる。


…本当に、するのか?家じゃない場所で??


 人の匂いを嗅いでる聖也の顔をちらっと見たが、なんか満足そうな顔をして目が合い、フィッと素っ気なく逸らす。


「前にプラネタリウムに行った時に来たかったけど…君は僕に必要以上に触れられるのが嫌だったみたいだから、我慢してた」


「あ…あの時から…?」


 付き合ってまだ1ヶ月か2ヶ月ぐらいだったと思う。聖也に誘われて行ったあの時はまだ、手は触れさせても体は許さないと警戒していた時期だった。口には出さなくとも伝わっていたということか。


「君とは1ヶ月に1回はデートしてたけど、その度に……いつも夜は大変だったんだよ?君に殺されてもいいから、無理矢理襲ってエッチしたかったけど、何とか抑えてたんだから」


「やめて、知りたくもないっ!」


「シェラミア」


 急に略称じゃない私の名前を呼ばれ、私を抱き締める腕の力が強くなった。いつも弱い心臓の鼓動が強く波打ち、後ろの聖也の方に振り向いた。


「我慢するの結構大変だったんだからね。同じ場所に好きな子が一緒に住んでるのに、なんも出来ないし。そのくせ、君は足も胸も晒した部屋着で自由自適にうろうろしてるし」


「…私のせいだとでも?」


「僕は男だよ?かなり苦しんだんだから」


ムッと不満げな顔で抗議してくる。男だと言いつつ、男らしくもない。


「君はいいよね。別に僕の事、好きでもなんともなかっただろうし」


「そう思うか?」


「そうじゃないの?」


「…私は、自室のゴミ箱をやたらティッシュまみれにしてる奴をからかうのが趣味なんだ」


「あーそういう事、言っちゃっていいの?そこまで分かってて放置して楽しんでたんだ?酷いね、君は」


嘘に決まってるだろ。お前の部屋のゴミ箱以外は。


「でもそういうとこが逆に燃える。実践ではもっと………無茶苦茶にしたいって」


 私を猫でも扱うように顔を髪を愛でて、冷たい肌にスリスリ顔を埋めてきて、聖也の付けた男物の香水の匂いが香り、私のプレゼントした腕時計が目に入った。


 気づかなかった。今日、つけてきてたのか。


「それ…付けてきたのか?」


「気づいた?家からずっと付けてきてたのに、全然気づかないからちょっとショック」


 似合う?と聞いてきたから、「別に」と返すと、笑って私の顔を自分に向かせ唇を奪う。クチュッと口内で厭らしく舌がぶつかり合う音に、臆病だった気持ちも高まる。


「いつもそう素直なら、もっと可愛いのになぁ…」


「んんっ…あっ…」


 主導権を握るタイミングも失い、激しくも優しく触れ合っていたキスはそこそこにして、そのまま体を持ち上げた聖也は、すぐそこにあったベッドに私を押し倒した。



「何ヵ月ぶりのデートなんだから、サービスしてくれる?」


「もはやデートじゃないでしょこれ…んっ!何処触ってっ…」



 質のいいマットレスに体が簡単に沈んでいく。

私の上に被さった聖也の目は私だけを見ていて着ている上半身の服をサッと脱ぎ去り、腕時計をした手で私のワンピースにも手をかけた。



「待って、シャワーを…」


「後で」


 こういう時だけは器用なもので手早く脱がされて下着姿にされる。逃がさないと言わんばかりに両手を拘束されて、電気も消していない室内で体を露わにされ、一気に辱しめを受けている悔しさが沸き上がった。



「初めてだから、色々教えてあげる」


 まるでこの場所を使い慣れてるみたいに言ったのが余計に悔しさと屈辱を煽る。

 一体以前誰と一緒に来たのかなんて、しょうもない嫉妬まで出てきてしまうが、それもこの男の狙いだと分かってぐっと手が出そうなのを堪える。



「ね、今、嫉妬した?」


「するわけないっ…。ただただ、屈辱だ……」


「ははっ…バレバレ。ごめん、意地悪した。でも、ちょっとアブノーマルな事にも、挑戦してみたくない?」


「異常なのはお前だっ…」


 嬉しそうに私を上から眺めている下僕のやらしい顔を睨み付けるが、全く逆効果だ。むしろ興奮させてる。


こんなの…振りほどけるはずなのに、振りほどけない。何か期待してるって事を認めたくないのにっ…んっ。



「折角だから色々研究させて、ね?」


 あれほど家で交わってるのにも関わらず、熱は全く冷める様子も見せない。首筋から下に、胸の谷間から突起したところまで舌でゆっくり愛でられて、顔を背けても勝手に脳にまで届く快楽に声が出る。


 口に手で蓋しようとしても、片手で頭の上に押さえつけられた両手は使えない。好きなように蹂躙されたまま。


「まずは……あれを使おうか」


「あぅ…あれ…?」


内股から太ももまでの辺りを撫でていた聖也の手が、吸い付いていた唇の代わりに胸を愛でて、私達のいるベッドの横に顔を向ける。


何を企んでるのかと私も続いてそちらを見る。


「っ!?」


__気がつかなかったが、ベッド脇の壁に配置された鏡に、見たくない姿がそのまま写し出されてた。自分の下僕の人間に乗られ、恥辱されて、嫌な顔をする所か、淫らな表情になってる自分の顔と姿が。



あ、悪趣味すぎるっ!



「い、いやっ…聖也、何を考えてる」


「新しい事」


単純にそう答えた鏡越しの彼の顔は、まさに、犬の皮を被った悪魔。

どうかしてる、何も、知らなさそうな顔、私よりも経験が浅い小僧の癖に。


「挑戦してみたら、結構ハマるかもよ?」


「い、いやだっ!はなっ…」


「だ~め。さっき僕のこと、甘く見た罰」


いつかはマンネリ化して、飽きが来るはずなのに日に日に過激なのが増していて、絶対に知られたくないような恥ずかしい事をされても、体は素直に、喜んでた。



「せ、聖也!ほんと、やっ!!恥ずかしい…!」


「一緒に恥ずかしい事しよう、シェラミア」



 この後どうなったかだって?…話したくない。

 言えることと言えば、綺麗にメイキングされていたベッドはぐちゃぐちゃになり、部屋を汚してはマッサージチェアまで壊して怒られるはめになった。




……それで察してほしい。

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